2009年2月15日に開催が予定されていた国内最大級のフィギュアイベント「ワンダーフェスティバル2009[冬]」の延期が正式に決定されました。
・ワンダーフェスティバル次回開催について - ワンダーフェスティバル実行委員長
ワンフェスといえば、8月の「ワンダーフェスティバル2008夏」で起こったエスカレーター事故が記憶に新しいと思います。この事故の原因究明のため冬のイベントスケジュールの目処が立たないことが延期の原因になっているようです。
ところで、最近では女性の来場者も増えて人気急上昇のワンダーフェスティバル。コミックマーケット(以下コミケ)とごっちゃになってませんか?
今回は、コミケとは似て非なるもの、ワンダーフェスティバル(以下、ワンフェス)についてみていきます。
■ワンフェスを作ったのはあのアニメ会社!
ワンフェスは、1984年12月にゼネラルプロダクツという会社が開催したSFや特撮、アニメの関連グッズ販売イベントが前身と言われています。
ゼネラルプロダクツは岡田斗司夫氏が開業したことで知られている、「ふしぎの海のナディア」や「新世紀エヴァンゲリオン」、最近では「天元突破グレンラガン」などのアニメを手がけている制作会社でガイナックスの母体となった会社でもあります。
ゼネラルプロダクツがフィギュア事業から撤退することをうけ、1992年夏のワンフェスから主催は海洋堂に引き継がれました。海洋堂といえば、チョコエッグのおまけフィギュアで知られることになったフィギュア業界でも人気の模型会社です。
ゼネラルプロダクツの主催を返上する「リセット宣言」により、2001年冬のワンフェスは休止されましたが、それからは休止もなく開催され現在に至っています。
■「ガレージキット」って普通のフィギアと違うの?
長年ワンフェスに参加している人たちの中には、ワンフェスは「フィギュアの祭典」ではない、と主張する人もいます。
厳密に言えば、ワンフェスは「ガレキの祭典」だと言うのです。
ガレキとは、ガレージキットの略で、大手メーカーによる大量生産型の模型に対し、アマチュアやセミプロが採算をあまり考えずに手間をかけた少数生産で作った模型のことを指します。
大手メーカーによる大量生産品とは異なり、細部のディテールに凝ったり、レアなキャラクターを製品化したり、少数生産のメリットをいかした限定生産が魅力の模型です。
もともと技術や予算の制限から少数生産だったガレージキットも、近年では製作技術の向上や素材の改良によって、1000個単位といった大量生産される製品や、大手メーカーがガレージキットのような形でマイナーなアイテムの生産に参入することも増えており境目は次第にあいまいになりつつあります。
■気になるワンフェスの著作権の問題
ここで疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。
個人が制作するガレージキットには、アニメやゲーム、漫画のキャラクターの製品も多く、その著作権はどうなっているの? ということです。
小規模な仲間うちで流通していた時代であればともかく、今や大規模になったイベントで売買量も増えていますので、著作権問題は気になるところですね。
実は、ガレージキットのような製品では、「当日版権システム」という対策を用いられているのです。
この聞き慣れない「当日版権システム」は、「ファン活動」という名目で、主催者を通じてイベント限定での著作権を許可してもらうシステムなのです。イベント当日限定ですので、会場外や別の日での販売行為は認められていません。そのためワンフェスには、会場でしか手に入らない限定ガレージキットが多数出品されることになり、それがかえってマニアにとっての魅力ともなっているのです。
■巨大市場に成長したワンフェスの問題
直接の延期原因は、今夏エスカレーター事故ですが、それ以外のも巨大イベントに成長したワンフェスに問題は生まれているようです。
●エスカレーター事故の影響
エスカレーター事故報道では、いわゆる「オタク」と呼ばれる来場者のエスカレーター乗降マナーを疑問視する声が大きく取り上げられていますが、現場に居合わせたオタクのカリスマとして知られる岡田斗司夫氏は、来場者の乗降マナーは守られていたとブログで主張しています。
夏のエスカレーター事故では、10数人のケガ人を出しただけでしたが、一歩間違えば大惨事に至る可能性もありました。今回の事故原因が、ワンフェス開催側の運用なのか、来場者のマナーなのか、エレベーター管理会社なのか、まだ公式に結論がだせないこともあり、事故再発への危険性から次回のワンフェスが延期されたという見解もあるようです。
限定品販売という魅力的なイベントであるがゆえに、出品者、来場者、運営者もヒートアップするのは避けられないことです。だからこそ、安全という問題がクローズアップされてきているようです。
●巨大産業化したことで新たに問われる著作権問題
ワンフェスは、これまで「当日版権システム」で著作権問題をクリアしてきましたが、今日のようにイベントが大きく成長すると、「当日版権システム」という例外的な対策にも問題も出てきているようです。主催者である海洋堂も、当日版権システムがきわめて特殊な制度であることを自覚していて、ガイドブック内でも『今一度真剣に考えたい、「当日版権」が有する意味』として紙面を割いています。
・「とりあえず海洋堂には、まんだらけの出入り禁止をお願いしたいです、ホントマジで。」by e-flick.netさん - アキバBlog
さらに、主催者側は禁止していますが当日だけ限定販売されるはずのフィギュアがネットオークションで高値で転売されることも多くあります。当日以外の再販や転売行為への主催者側の禁止指導も拘束力が弱いため、現状では抑制しきれないようです。
・当日版権ガレキの転売は違法か? - G_Robotism
こうした「当日版権システム」の綻びに対し、近年では「ライセンスニューウェーブ」という概念が生まれつつあり、当日版権システムに代わるシステムを模索する動きもでてきています。
●新たな時代へ突入するワンフェスとフィギュア市場
フィギュア市場は、大手メーカーのマニア市場への参入や中小メーカーの生産性向上、さらにはアマチュアの制作者の台頭もあり、個人の趣味とビジネスの境目があいまいになってきてるようです。マチュアでも利益を前提とした規模で作品を展開しているケースも増えてきています。
巨大化したワンフェスを、純粋にアマチュアのためのイベントというには、そろそろ無理があるのかもしれません。
今回のエスカレーター事故は、主催者の海洋堂にとっても、来場者にとっても、今後のワンフェスのあり方を考え直す機会となりそうです。
■こちらもオススメ!気になるトレンド用語
・火に油?「予告.in」をめぐる騒動
・急成長する「Facebook」は、mixiの牙城を崩せるか
・iPhone 3G効果で人気が急上昇の「BlackBerry」ってなんだ
・ニコニコ動画の命運も左右する? MAD動画
・学校が危ない!モンスター・ペアレントの脅威
・気になるトレンド用語 バックナンバー
・ワンダーフェスティバル次回開催について - ワンダーフェスティバル実行委員長
ワンフェスといえば、8月の「ワンダーフェスティバル2008夏」で起こったエスカレーター事故が記憶に新しいと思います。この事故の原因究明のため冬のイベントスケジュールの目処が立たないことが延期の原因になっているようです。
ところで、最近では女性の来場者も増えて人気急上昇のワンダーフェスティバル。コミックマーケット(以下コミケ)とごっちゃになってませんか?
今回は、コミケとは似て非なるもの、ワンダーフェスティバル(以下、ワンフェス)についてみていきます。
■ワンフェスを作ったのはあのアニメ会社!
ワンフェスは、1984年12月にゼネラルプロダクツという会社が開催したSFや特撮、アニメの関連グッズ販売イベントが前身と言われています。
ゼネラルプロダクツは岡田斗司夫氏が開業したことで知られている、「ふしぎの海のナディア」や「新世紀エヴァンゲリオン」、最近では「天元突破グレンラガン」などのアニメを手がけている制作会社でガイナックスの母体となった会社でもあります。
ゼネラルプロダクツがフィギュア事業から撤退することをうけ、1992年夏のワンフェスから主催は海洋堂に引き継がれました。海洋堂といえば、チョコエッグのおまけフィギュアで知られることになったフィギュア業界でも人気の模型会社です。
ゼネラルプロダクツの主催を返上する「リセット宣言」により、2001年冬のワンフェスは休止されましたが、それからは休止もなく開催され現在に至っています。
■「ガレージキット」って普通のフィギアと違うの?
長年ワンフェスに参加している人たちの中には、ワンフェスは「フィギュアの祭典」ではない、と主張する人もいます。
厳密に言えば、ワンフェスは「ガレキの祭典」だと言うのです。
ガレキとは、ガレージキットの略で、大手メーカーによる大量生産型の模型に対し、アマチュアやセミプロが採算をあまり考えずに手間をかけた少数生産で作った模型のことを指します。
大手メーカーによる大量生産品とは異なり、細部のディテールに凝ったり、レアなキャラクターを製品化したり、少数生産のメリットをいかした限定生産が魅力の模型です。
もともと技術や予算の制限から少数生産だったガレージキットも、近年では製作技術の向上や素材の改良によって、1000個単位といった大量生産される製品や、大手メーカーがガレージキットのような形でマイナーなアイテムの生産に参入することも増えており境目は次第にあいまいになりつつあります。
■気になるワンフェスの著作権の問題
ここで疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。
個人が制作するガレージキットには、アニメやゲーム、漫画のキャラクターの製品も多く、その著作権はどうなっているの? ということです。
小規模な仲間うちで流通していた時代であればともかく、今や大規模になったイベントで売買量も増えていますので、著作権問題は気になるところですね。
実は、ガレージキットのような製品では、「当日版権システム」という対策を用いられているのです。
この聞き慣れない「当日版権システム」は、「ファン活動」という名目で、主催者を通じてイベント限定での著作権を許可してもらうシステムなのです。イベント当日限定ですので、会場外や別の日での販売行為は認められていません。そのためワンフェスには、会場でしか手に入らない限定ガレージキットが多数出品されることになり、それがかえってマニアにとっての魅力ともなっているのです。
■巨大市場に成長したワンフェスの問題
直接の延期原因は、今夏エスカレーター事故ですが、それ以外のも巨大イベントに成長したワンフェスに問題は生まれているようです。
●エスカレーター事故の影響
エスカレーター事故報道では、いわゆる「オタク」と呼ばれる来場者のエスカレーター乗降マナーを疑問視する声が大きく取り上げられていますが、現場に居合わせたオタクのカリスマとして知られる岡田斗司夫氏は、来場者の乗降マナーは守られていたとブログで主張しています。
夏のエスカレーター事故では、10数人のケガ人を出しただけでしたが、一歩間違えば大惨事に至る可能性もありました。今回の事故原因が、ワンフェス開催側の運用なのか、来場者のマナーなのか、エレベーター管理会社なのか、まだ公式に結論がだせないこともあり、事故再発への危険性から次回のワンフェスが延期されたという見解もあるようです。
限定品販売という魅力的なイベントであるがゆえに、出品者、来場者、運営者もヒートアップするのは避けられないことです。だからこそ、安全という問題がクローズアップされてきているようです。
●巨大産業化したことで新たに問われる著作権問題
ワンフェスは、これまで「当日版権システム」で著作権問題をクリアしてきましたが、今日のようにイベントが大きく成長すると、「当日版権システム」という例外的な対策にも問題も出てきているようです。主催者である海洋堂も、当日版権システムがきわめて特殊な制度であることを自覚していて、ガイドブック内でも『今一度真剣に考えたい、「当日版権」が有する意味』として紙面を割いています。
・「とりあえず海洋堂には、まんだらけの出入り禁止をお願いしたいです、ホントマジで。」by e-flick.netさん - アキバBlog
さらに、主催者側は禁止していますが当日だけ限定販売されるはずのフィギュアがネットオークションで高値で転売されることも多くあります。当日以外の再販や転売行為への主催者側の禁止指導も拘束力が弱いため、現状では抑制しきれないようです。
・当日版権ガレキの転売は違法か? - G_Robotism
こうした「当日版権システム」の綻びに対し、近年では「ライセンスニューウェーブ」という概念が生まれつつあり、当日版権システムに代わるシステムを模索する動きもでてきています。
●新たな時代へ突入するワンフェスとフィギュア市場
フィギュア市場は、大手メーカーのマニア市場への参入や中小メーカーの生産性向上、さらにはアマチュアの制作者の台頭もあり、個人の趣味とビジネスの境目があいまいになってきてるようです。マチュアでも利益を前提とした規模で作品を展開しているケースも増えてきています。
巨大化したワンフェスを、純粋にアマチュアのためのイベントというには、そろそろ無理があるのかもしれません。
今回のエスカレーター事故は、主催者の海洋堂にとっても、来場者にとっても、今後のワンフェスのあり方を考え直す機会となりそうです。
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