海外で自分が普段使っている携帯電話を利用することも最近ではあたりまえのことになりつつある。しかし海外で利用する国際ローミング料金は割高だ。海外の電話料金を安くしたいのであれば海外用携帯電話を購入する方法もあるが、購入への敷居はまだまだ高い。



そのため海外では用件を手短に済ますなどして通話代を最小限に押さえているという人も多い。

ところが、海外は日本と違い携帯電話料金や国際電話料金が格安な国も多い。たとえば香港では日本への国際電話は10円前後で利用できる電話会社が大半である。このように現地の電話を利用できれば、それを使って日本に通話することも考えたいものだ。



一方仕事で海外渡航した際はノートPCを利用して仕事のファイルを日本とやりとりするわけだが、サイズの大きいファイル添付のメール送受信を行う場合も多々あるだろう。そのような時に現地に有線/無線LAN環境がなければ携帯電話を接続してデータ通信を行う必要が出てくる。しかしデータ通信は音声通話とは異なり、工夫によりローミング料金を引き下げる術が無い。数十ページのPDFファイルをダウンロードするだけであっという間に数千円のデータ通信料金が課金されてしまう。もちろんその甲斐あって数千万円の取引に成功すれば通信料金など微々たる経費になるだろうが、ただの打ち合わせのたびに数千円~数万円の料金がかかるようではたまったものではない。



では海外渡航中のデータ通信料金を引き下げる方法はないのだろうか? 実は、あるのだ。



最近は世界各国の通信事業者がノートPCなどで利用できるUSB接続のHSDPAモデムとプリペイドタイプのSIMカードをセットにした商品を販売している。定額利用できるものも増えており、現地へ渡航したなら時間のあるときに街中に出て探してみるのもいいだろう。ちなみに日本のイー・モバイルが発売しているファーウエイ(Huawei)のUSBモデムは同じタイプが世界中で販売されている。同様の製品を見かけたら、販売店にプリペイドタイプのものがあるかどうか聞いてみるとよい。



今回は実例として、香港で販売されているUSBモデム+プリペイドSIMカードのセット商品を紹介しよう。パケット定額利用ができるほか、USBモデムにはSIMロックが無く香港以外でも活用できる便利な商品である。

海外でも日本と同様にUSBタイプのHSDPAモデムを扱う事業者は多く、旅行者向けにプリペイドタイプを用意しているところもある(イギリスのThree社)




■定額料金+再利用可能なモデムのセットはお買い得

香港のHutchisonが発売するUSBモデム セットは「3reedom」という商品名だ。3reedomとは同社のブランド名の「3」と「Freedom」を組み合わせた造語。取り扱いは市中の「3」の看板を掲げた直営店舗だ。香港国際空港に降り立ち時間に余裕があるなら、到着ロビーから出発ロビーへ上がれば同様に「3」のお店があるのでそこで買い求めるといいだろう。なお3reedomには契約タイプもあるので、「USBモデムを買いたい。プリペイドで」のように伝えるといいだろう。本記事トップにある商品写真を印刷しておき、それを店員さんに見せるとわかりやすいかもしれない。



3reedomの販売価格はHK$980(約1万4000円)。これにHSDPA対応のUSBモデムとHK$68(約950円)分のプリペイドSIMカードがセットになっている。日本でも8月から日本通信が発売開始した「b-mobile 3G hours」のイメージに近い。これを買えばモデムも通信料金もセットになっているというわけだ。

Hutchisonの店舗。ブランドの「3」のロゴが目印だ3G対応USBモデムとプリペイドSIMカード。モデムの柄は10種類あるがフィルム貼り付けなので気に入らなければはがせばよい




利用方法は簡単だ。まずはパッケージ内のUSBモデムを取り出し、同梱されているSIMカードのパッケージからSIMカードをはずしてモデムに取り付ける。あとはノートPCにモデムを接続すれば自動的にドライバや接続ソフトがインストールされるのだ。対応OSはWindows 2000/XP/Vista、Mac OS X。なおMacBook Airで使うときは、本体のUSBポートにモデムが直接はまりこまないので、あらかじめUSB延長ケーブルなどを用意しておいたほうがよい。



ドライバインストール時に利用する事業社名を確認されるので「3 HK」または「3 HongKong」を選択する。あとはノートPCにインストールされた「Mobile Partner」のアイコンをクリックして起動し、画面上の「Connect」を押すだけで手軽に利用できる。通信速度はHSDPA環境下で最大下り7.2Mbpsである。



さて気になる料金だが、HK$2(約28円)/MBと割安である。しかも1日の上限はHK$48/日、約670円。これだけで定額利用可能なのだ。たとえばNTTドコモの携帯を利用して香港でローミングした場合、料金は約1640円/MBとなるから費用の差は大きい。もっともNTTドコモは日額定額上限2000円/日が設定されているわけだが、ただしこれは現地でHutchison回線でローミングを利用した場合のみ適用されるため、間違って他社の回線で利用した場合は課金は青天井となってしまうので注意しよう。



さらに3reedomは月額上限もあり、HK$588/月(約8230円)で1ヶ月まるまる定額利用が可能になる。長期滞在する際などは大変便利だ。ちなみに料金の追加はリチャージバウチャーを購入して別途用意した「音声通話端末」で行うか、インターネット上からクレジットカードで行う。残高追加方法が若干容易ではないのが唯一の欠点かもしれない。



この3reedomはどれくらいの費用効果があるだろうか。

たとえば香港に4泊5日の出張に立ち寄ったとする。NTTドコモの回線で毎日フルに利用すると2000円x5=1万円のデータ通信料金がかかる。一方Hutchisonの3reedomならば初期費用が1万4000円、データ通信利用が初日分は付属のSIMカードの残高を利用するとして、5日間で必要な金額は約2400円。合計16400円となりこれだけなら日本の携帯電話でローミングしたほうが安いと考えるかもしれない。



しかし再度香港に4泊5日の出張で立ち寄ったとしよう。日本の携帯でローミングすれば再び1万円のデータ通信量がかかる。しかし3reedomならば2回目以降からの渡航時はすでにUSBモデムを持っているため純粋に現地の5日分の料金、HK$48x5=HK$240(約3360円)で済むのだ。年に2回でも渡航すれば元は取れてしまう計算だ。



さらにこの3reedomに付属のUSBモデムにはSIMロックが無い。たとえば他の国へ渡航したとき、このUSBモデムに現地のデータ通信可能なプリペイドSIMカードを組み合わせて現地の安価なパケット通信料金で利用することもできるのだ。香港の定額利用可能なUSBモデムを購入したと思ったら、実はそのモデムは他の国でも流用できてしまうお得な製品だったということになる。海外でのデータ定額がないSoftbankを海外で利用した場合は、3reedomを購入したほうが確実に安上がりになるだろう。



日本通信のような「プリペイドデータ通信」製品はこのように海外でも一般的な製品として販売されていることも多いのだ。海外渡航が多く、ノートPCを使ってのデータ通信利用頻度が高い場合などは渡航先の通信事業者に同様の製品があるかどうかを調べ、購入するといいだろう。



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山根康宏

著者サイト「山根康宏WEBサイト」