今年はパソコン復活の年。各社のアンケートでも夏のボーナスで購入したいものにパソコンが復活している。



パソコン購入の際に気になるのは性能・スペックだ。カタログ片手に頭を悩ます人も多いだろう。

一昔前までは、パソコンの性能はプロセッサ(CPU)の性能と相場は決まっていたものだが、今やCPUだけではパソコンの性能を語れなくなっているから厄介だ。現代のパソコンでは、グラフィックスを専用に処理する半導体チップ「GPU」がCPUと同等もしくはCPU以上に重視される時代だからだ。



この「GPU」だが、スペック表を見ても「NVIDIA GeForce GTX 260」「AMD Radeon HD 4870」など型番のオンパレード、よくわからないという人も多い。そもそもGPUとは何なのか。



そこで今回は、パソコンの性能の決め手となる新要素「GPU」の仕組みとそれを支える技術を見てみよう。

これさえ見れば、最新パソコンも恐くない。





■GPUの歴史とそれを支える技術

GPUはどのようにして生まれたのだろうか。またどういう仕組みで動くのだろうか。GPUの歴史とそれを支える技術を簡単にまとめてみた。



●GPUってなに?

GPUとは、Graphics Processing Unit(画像処理装置)の略称で画像を専門に処理するチップ(グラフィックチップ)だ。



そもそも「GPU」という名称は、高性能なGPUを開発・製造している半導体メーカーのNVIDIA Corporation(nVIDIA)が提唱した呼称。今日では、nVIDIA以外の半導体メーカーが製造したグラフィックチップでも普通に「GPU」と呼ばれている。



CPUは主に数値演算と機器制御を行うのに対し、GPUは画像データの処理のみを行っている。パソコンのマザーボードにはあらかじめ画像処理を担うチップが備わっているが、セカンドライフに代表される高度な3次元ゲームをハイエンドなグラフィックスで楽しむ場合には、高速はグラフィック描画能力があると有利だ。また、通常のパソコンでも高性能なGPUを搭載したビデオカードを追加することで、グラフィックスの処理速度を劇的に高められる。





●GPUの歴史

パソコン向けのGPUの歴史は1970年代までさかのぼる。画面に図形を描画する場合、CPUがすべて処理していたのでは時間がかかってしまう。そこでグラフィックスを専門に処理する専用コントローラー(グラフィックスコントローラー)が考案された。当時のグラフィックスコントローラーは矩形や多角形などの描画を支援するチップで、CPUの負荷を少しでも減らすことが主な目的で、今日のGPUとは大きくかけ離れていた。



1981年、NECは直線や円弧、多角形の描画とその塗り潰し機能を備えたグラフィックディスプレイプロセッサ「μPD7220」を発表。μPD7220は同社のパソコンであるPC-9801シリーズに搭載され、約10年間に渡り国内のパソコン市場をほぼ独占することになる。



1990年代に入ると、Silicon Graphics社が自社のグラフィックワークステーション向けのグラフィックライブラリ「IRIS GL」を開発。のちにOpenGLに発展し、グラフィックライブラリとそのAPIに対応したハードウェアアクセラレーターという図式ができ上がった。その後、ハードウェアアクセラレーターは急速に進化を遂げ、今日のGPUへと進化する。





●GPUとそれを支える技術

画像処理を目的として登場したGPUだが、今日ではCPUと同様に演算処理も可能な半導体チップとなっている。

一例をあげると、nVIDIAのGPU「GeForce 8800」では、画像処理のための数値演算ユニットや共有メモリー、一次キャッシュなどが内蔵され、CPUから画像処理の命令が届くとGPUを含めたビデオカードが物理演算から描画まで、ほぼすべての処理を実行できるのだ。ひと言で言いあらわせば、ビデオカードが別のパソコンのように動作するという訳だ。



GeForce 8800の内部構造 - ウィキペディア





●複数のGPUで性能アップ - SLI vs CrossFire

現在GPUを提供するメーカーとしては、nVIDIAとAMD(旧ATI)の大手2社が市場を独占している状態だ。nVIDIAは「SLI」、AMDは「CrossFire」と呼んでいる独自の技術がある。



・SLI

SLIは複数の同じGPUを並列処理させることでグラフィックスの処理能力を向上させる技術のことだ。2個のGPUを利用するSLIの場合には、ひとつのGPUを搭載したビデオカードを2枚挿す方法と、あらかじめ2つのGPUを搭載したビデオカードを1枚挿す方法がある。通常は同一メーカーで同一型番のビデオカードを揃える必要がある。



2つのGPUを利用すると、GPUを単独で利用する場合に比べて2倍近パフォーマンスを期待できる。その結果、ミッドクラスのビデオカードでSLIを使用した場合にはハイエンドクラスのビデオカードよりも高いパフォーマンスが得られることもあり、安価に高速なグラフィックス処理を求めるユーザーにも人気がある。



ゲームにおけるパフォーマンスの違い - nVIDIA



・CrossFire

CrossFireはATI Technologiesが開発したマルチGPU技術だ。SLIのように同一メーカーで同一型番という制約はないが、GPUを搭載したひとつのビデオカードがマスター、それ以外のビデオカードがスレーブという扱いとなる。



SLIやCrossFireのようなマルチGPU技術は、規格に対応したマザーボードであれば既存のビデオカードをそのまま活かしてグラフィックスの処理能力を向上できるメリットがある。ただしハイエンドなビデオカードの中には消費電力が高いカードがあり、そのようなカードを複数使用する場合にはパソコン本体にもワット数が高い電源ユニットが必要になる場合もある。





●GPUがCPUを超える時代へ

前述のように一部のGPUはSLIやCrossFireのように並列処理が可能だ。この特性を活かしてパスワードを高速に解析する研究まで行われている。記事によると、Windows Vistaのログインパスワードを解析する場合、一般的なデュアルコアのパソコンで解析に約2ヶ月かかるところが150ドルほどの市販のGPUを利用するだけで3~5日間ほどで解析できるという。



市販GPUを使ってパスワードを高速クラック - Engadget Japanese



またPhotoshopに代表される画像処理ソフトはグラフィックスの加工にCPUを酷使するため、リアルタイムに画像処理を行うとほかの処理が遅くなる可能性が高い。そういう場合にGPU対応の画像処理ソフトを使用することでCPUへの負荷は大幅に減り、ほかの処理も圧迫されずに済む。



世界初のGPUを使ってサクサク動く画像編集ソフト「Pixelmator」 - GIGAZINE





参考:

Graphics Processing Unit | Scalable Link Interface(SLI) | CrossFire (ATI) - ウィキペディア

GPUって何だ? パソコンをもっと高速・高精細に -デュアルGPU- - TDK

「GPUコンピューティング」の可能性――高速汎用計算に挑む - COMPUTERWORLD.jp

Pixelmator

AMD

nVIDIA





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