電子書籍は次世代の本として期待されて久しいサービスです。電子書籍は既存の書籍のデジタル化や携帯小説のようにデジタルからはじまり紙の書籍化されるものまで身近で話題の多い分野ですが、まだ普及しているとは言えないサービスです。



電子書籍では、書籍のデジタル化にともなうコストや著作権の問題もありますが、電子書籍を閲覧する電子書籍リーダーにも問題があります。パナソニックやソニーからメモリーカード対応の薄型電子書籍リーダーも発売されていますが、大きなヒットには至っていません。



ところが海の向こうのアメリカで電子書籍の概念を変えるほどのインパクトを持った製品が現れました。それが“キンドル(Kindle)”と呼ばれる電子書籍リーダーです。



今回は、そんなキンドルについてみてみましょう。



■通販のアマゾンが出した“キンドル”

インターネット通販大手のAmazon.comは、2007年11月19日に米国で電子書籍リーダー「キンドル」を399ドル(約4万4000円)で発売しました。



キンドルが今までの電子書籍リーダーとは異なるのは通信機能を持っていることです。単体で通信機能をもっているためパソコンを必要とせず、直接アマゾンから電子書籍を入手することができます。



使用可能時間も、「ネットに接続しなければほぼ1週間」で、約200タイトルの書籍を保存できます。

重さは約300グラム、米国の携帯電話で利用されているEVDOと呼ばれる高速データ通信を使用しているため、コンピューターや無線LAN接続の手間も必要ありません。また接続料金もかかりません。



ハードウェアの基本仕様は以下の通りです。

・ディスプレイ:600x800 ピクセル、4段階グレースケール

・サイズ: 19.1cm × 13.5cm × 1.8cm、 292グラム

・内部メモリー: 180Mバイト

・外部記憶: SDメモリカード

・充電池寿命: EVDO通信常時ONで2日、EVDO通信常時OFFで1週間

・サポートするファイルタイプ: AZW (キンドル独自形式)、TXT、MOBI、PRC (.MOBIおよび.PRCはフランスで開発されたMobipocket形式の電子書籍ファイル )

・電子辞書: The New Oxford American Dictionary

・ウエブブラウザ: Basic Web (JavaScriptとSSLをサポートし、Flashには非対応)

・通信方式: Sprint EV-DO 3G network



アマゾン・コムの創業者でもあるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)CEOは「開発に3年かかった。キンドルのデザインで最大のポイントは、手のひらサイズで邪魔にならないというところだ」とし、「実物の本を越えるものを製作したかった。キンドルはワイヤレスなので場所を問わず、思いついたら60秒で使用できる」と述べています。

また、書籍などの電子データが割安なのも特徴の一つとなっています。



キンドルサービスの特徴

1.書籍(新書)は同社サイトで購入するより6~7割安い。(9.99ドル)

2.世界初の本格的「電子新聞・雑誌」サービス

 米新聞主要8紙・海外3紙、米雑誌主要8誌を取り扱い、宅配よりも約6割安く、毎朝自動ダウンロード配信される。

3.通信費はアマゾンが負担するため無料。携帯電話会社との契約も不要。



なお、USBケーブルでパソコンと接続してファイルの読み込みも可能ですが、HTMLやPDFやDocなどのフォーマットを直接読むことはできないため、アマゾンサイトでの変換が必要となります。



■書籍流通の革命!- iPodの成功を電子書籍でも

キンドルとアマゾンは、iPodにおけるアップルの戦略に同じです。iPodが音楽配信とセットで市場を開拓し、シェアを獲得しましたが、キンドルもまた、デジタル書籍市場を開拓して、市場のシェア獲得をしようという狙いです。



iPodは、デジタル音楽配信により既存の市場モデルを改革したことが、現在の大きな成功となっていますが、キンドルもその戦略を踏襲し、電子書籍の作成から販売までをダウンサイジングしています。読者にとっては、書店に出向く手間を省き、格安でいつどこでも購入ができる利便性を享受できるというわけです。



また、アマゾンでは本の中身検索に対応、一部のページを立ち読みできるサービスまでも展開しています。このサービスはスキャンデータを利用することから新たにデータを作る必要とコストがかからないメリットがあります。



出版社は何部売れるか? といった収支を検討する必要もなく、1つでも売れれば売上を得ることができるだけでなく、販売や通信料の課金などもアマゾンが代行するため、書籍作成に注力できるといくわけです。



読者にとっては、アマゾンのアカウントを利用できるため、既存ユーザーであれば面倒な新規申し込みなどの手間もいらずに利用できるなど参加しやすさも特徴です。



■キンドルが変える個人出版! 簡単に自費出版ができる

キンドルサービスは決して商業出版に対してのみ恩恵があるわけではなく、自費出版(個人出版)に対しても恩恵を与えてます。



一般の消費者の著作物でも、Microsoft Word形式でアマゾンにアップロードして価格を設定するだけで、アマゾンでの販売が開始されるのです。1つ売れるごとに価格の35%の印税が作者の銀行口座に振り込まれるという仕組みになっています。



つまりアマゾンは、「オンライン書店」から「オンライン出版社」へのビジネス拡大も目指しているのです。

このアマゾンの個人出版モデルに似たものには日本の「ケータイ小説」などがあります。キンドルの個人出版モデルや日本のケータイ小説は、いわば出版ビジネスのダウンサイジング。今後の出版ビジネスの変革を予感させるともいわれています。



■こちらもオススメ!気になるトレンド用語

超小型パソコン時代到来! Origami端末(UMPC)って何?

大阪名物「くいだおれ」閉店 くいだおれの歴史と今後

Eee PCって安いだけじゃない!ユーザー好みの使い勝手や改造も人気?

報道の勲章 ピュリツァー賞ってどんな賞なの?

ニコニコ動画に迫る急成長の「優酷網(Youku)」って何

気になるトレンド用語 バックナンバー