こんにちは、レッド中尉です。編集とかライターをやっております。これからこの場をお借りして、アキバ系のネタをいろいろ書いていこうと思っているであります。よろしくお願いいたします。




ところで俗に言う「アキバ系」は、アニメ・漫画・アイドル・ゲームといったサブカル系の趣味、またはその趣味を持つ人のことを指します。アキバ系の趣味は、長い間「ダサイ」「暗い」「キモイ」と言われ続け、負のイメージで取り上げられることが多かったのですが、近年状況は徐々に変わりつつあります。特に企業関連の参入は目覚ましく、今ではアニメ・漫画とのタイアップやコラボ等で、アキバ系に無縁だった企業の名前を見ることも珍しくなくなりました。不況でモノが売れない時代、キャラクターグッズやマニア向けアイテムにバンバンお金を落としてくれるアキバ系の消費者は、まさに企業にとって上客なのでしょう。



生まれながらのナチュラルボーンなアキバ系から見ると、この状況は素直に喜べません。なぜなら、所詮は「金づる」として見られているだけのような気がして、なんだかスッキリしないのです。確かに様々な企業が参入することで、結果的に良い作品やグッズが生まれることはあります。それは間違いなく喜ばしいことですが、本来アキバ系の趣味は「たとえ理解されなくても、好きなことは好きでいたい!」という信念を持つ同胞たちが集まり、育んできた文化です。本当は興味がないのに、美味しいところだけを取っていこうとする輩(やから)には、正直関わってほしくありません。実際、金の臭いを嗅ぎつけて「なんとなく」アキバ系のジャンルに参入したと見られるモノは、ことごとく失敗しています。



アキバ系の世界は、あまりにも深く、混沌としています。万人が理解できる世界ではないでしょう。ですが、少しでも興味があって本質を理解しようとする姿勢があれば、いつでもウェルカムなのがアキバ系のよいところ。同じ趣味を持つ者同士ならば、きっと理解し合えるはずなのであります。本稿では特に、アキバ系の本音の部分に迫っていくつもりです。妄想炸裂の不可解な部分もあるかもしれませんが、それはアキバ系のソウルのほとばしりだと理解してやってください。



前置き終了。では本編へ参りましょうか。



TVアニメは、関東地区において1週間に約100本ほど放映されているようです(アニメ専門誌調べ)。ところが1週間は24時間×7日=168時間しかありません。30分番組を100本観た場合、単純計算で3000分=50時間。睡眠を1日8時間と考えたら8時間×7日=56時間。労働時間を1日9時間として5日間で45時間。これらを合計すると、アニメ鑑賞+睡眠+労働=151時間。この時点で1週間の残り時間は17時間です。1日あたり約2.4時間(約144分)しか残りません。仕事と睡眠以外の時間のほとんどをアニメにあてなければ到底視聴しきるのは無利。土日祝日返上で自宅に引きこもり、TV画面の前に座り続けなければ消化できません。

毎日アニメを録画している自宅のHDDレコーダーのライブラリ(一部)。同サムネイルはこんな感じ。ヒマさえあれば観ていますが全然追いつきません。このリポDは、先日秋葉原エンタまつりで引いたくじ引き<5等>×5連コンボのお土産。これはドラッグの力を借りてでも、たまったアニメを消化せよという天からの啓示なのかっ!(余計なお世話でありますな、ぷんすか)




これはハッキリ言って、時間の無駄。そこまでして観る価値は100%ないと断言できます。乱暴な言い方になりますが、現在のTVアニメの大半は粗大ゴミ同然のクオリティと考えて問題ありません。



こんなことを書くと「そうは言っても現場は大変なんだ」という声が聞こえてきそうですが、私も仕事柄、アニメ制作の現場が崩壊寸前の状態であることは知っています。長時間労働・低賃金の劣悪な労働環境は、海外のアニメファンにも広く知れ渡っている不名誉な事実。政府は早急に改善のための具体案を出し、日本のコンテンツ産業を支える動画戦士たちを救済すべきでありましょう。とは言え、結局視聴者の興味は作品が面白いのか、つまらないのか、ただそれだけなのであります。



じゃあ、今何が面白いのか? という質問については、アニメは嗜好品であり、好みが影響するものなので一概には言えません。とりあえず『ネギま!?(TV東京)』は観て損はないと思いますが、あとは自分で探してみてください。面白い作品ならばネット上で必ず話題になるので、探すのは難しくありませんし(投げっぱなし解答)。



面白い作品と言えば、2006年上半期No.1の評価を受けた『涼宮ハルヒの憂鬱』は全国ネットではなく、地方U局を中心にこっそり放映された作品でした。ところが、そのクオリティの高さは瞬く間に評判となり、人気は全国区へと発展。やがて、主題歌がオリコン最高5位に入ったり、主役声優(平野綾)が音楽番組『HEY!HEY!HEY!』に出演してダウンタウンとの共演を果たすなど、マスコミも注目せざるを得ない優良コンテンツに成長していきました。今やビジネスマンが集う経済系セミナーでも取り上げられる、超勝ち組アニメの代名詞となっています。

涼宮ハルヒの劇中歌集シングルCD。『God knows...』はハードロックな名曲。涼宮ハルヒ関連の同人誌。もの凄い勢いで売れた「ちゅるやさん」本だにょろーん。




私も初回の電波っぷり(※注1)が話題になったのをきっかけに、ほぼリアルタイムで見ていましたが、当時はここまで盛り上がるというのは想像できませんでした。確かに平均以上には面白かったのですが、中だるみと思える回もあったので、手放しで絶賛というほどではなかったです。

(※注1)TV放映の第1話は、学生がフィルムで撮ったチープな特撮映画をアニメで忠実に表現するという、かつてない試みがアキバ系の心を鷲掴み。ちなみにテーマ曲として使用された『恋のミクル伝説』は、萌え系電波ソングのスタンダードとしてアニソン界の歴史に深く刻まれることとなった迷曲。



ただ、丁寧な作画は目を見張るものがあったので、そこは素直に感心しながら観ていました。制作を担当した「京都アニメーション」の名前は、この作品で完全にブランド化したと言えます。



ちなみに涼宮ハルヒの原作小説は角川スニーカー文庫から発行されていますが、角川といえばもうひとつ、夏のアニメ映画として公開された『時をかける少女』にも触れておきましょう。



筒井康隆原作の同小説(角川文庫刊)は過去に何度も映像化され、特に1983年に公開された原田知世(主演)・大林宣彦(監督)の劇場映画は、日本映画史上に輝く名作としてあまりにも有名です。それだけに、アニメ映画の制作発表直後は、ネット上で批判的な意見を多く見かけました。「今さらなんで時かけ?」「これはひどいリメイク商売ですね」「角川映画全盛世代の古参ヲタ層狙いかよ」等々。



私はキャラクターデザインが貞本義行(エヴァンゲリオンなどで有名)だったので、一応チェックしておこうかというユルい感じでした。そして公開初日、ほぼ予備知識ゼロの状態でテアトル新宿(聖地となった映画館)に向かったのです。そこで観たアニメ版時かけは、実にいい映画でありました。先日も音響施設が都内最高レベルの渋谷Q-AX(シネマ1)のレイトショーで通算4回目の鑑賞をするなど、今では個人的にも思い入れの深い作品となっています。



この時かけは、口コミで評判が広まった異例のヒット作として、新聞や雑誌でも報道されました。映画賞もすでに「シッチェス国際映画祭(スペイン)アニメーション部門最優秀長編作品賞」「アニメーション神戸賞(作品賞:劇場部門)」を受賞していますが、今のところこの受賞に関する話題は一般マスコミからはほぼスルーされています。もう少し話題になっても……と、観た人間としてはつい思ってしまいますが、これからアニメファンの多いアメリカやフランスあたりで公開されれば、新たな盛り上がりがあるかも知れません。今後の展開に期待したいところです。

『時をかける少女 NOTEBOOK』カラー資料や細田守(監督)×筒井康隆(原作)対談などが掲載されたファン必須アイテム。品薄で市場では入手し辛くなっております。こちらは絵コンテ集。肉筆で描かれた演出支持の数々に監督の想いを感じることができます。当然ですが、NOTEBOOK・絵コンテ集ともにネタバレ満載なので映画未見の人は注意が必要。渋谷Q-AXの入り口付近の写真。当日、時かけはレイトショーで1日1回だけの上映でしたが、宣伝ポスターはかなり目立つところに設置されてました。映画館サイドの愛を感じます。




TVアニメの話に戻りますが、放映本数が多すぎることによる悪影響は、作画崩壊というカタチで表れることがよくあります。最近特に強烈だった作画崩壊と言えば、TVアニメ『夜明け前より瑠璃色な』の話題は外せません。これも『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じく地方U局を中心に放映されていますが、第3話の作画が相当ヤバイことになってました。詳しく書くのは控えますが、料理対決の場面で描写されたキャベツ(?)の作画は、ガチで近所の小学生レベル。ちょっと手書きで書いてみますね。

ガンダムのハロに似ている気がする。ゴルフボールの断面解説図に見えなくもないような。




上の絵はそれなりに忠実に描けたんじゃないかと。あ、ウソじゃないですよ。気になる人はネットで調べてみてください。「夜明け前」「キャベツ」ですぐ見つかると思います。日本のアニメ産業が抱える暗部の一端を垣間見ることができますよ。



 ちょっとフォローしておきますが、作画に目をつむれば作品自体は結構面白いです。私もストーリーや登場キャラが気に入ってるので毎週観ていますしね。それだけに、あの作画崩壊事件は衝撃的で……。DVDには修正した映像が収録されますよう、心の底からお願い申し上げます>関係者の皆様。



長年アニメを観ていると、どんな作品でも楽しめる特殊スキル(※注2)が身につくことがあります。このスキルを持った人々は、このキャベツ事件も祭りとして楽しめてしまったのですが、本来はあってはならないこと。原作(ゲーム)ファンの落胆ぶりを考えると、歓迎できることではありません。

(※注2)狂った作画や演出、超脚本(トンデモ脚本)といったダメな部分を愛し、楽しんでしまえる能力のこと。これができるようになるとアキバ系としては有段者レベル(別に嬉しいことではない)。



といったわけで、アニメは希望が持てるジャンルではありますが、いろいろと問題が山積みなのも事実です。現在、アニメ関連で「儲ける!」的な考えの企業や個人投資家の方々は、もう一度慎重になるべきでしょう(下手すると痛い目に会いますよ)。個人的にTVアニメは、週30本くらいあれば十分。その中から質の高い作品が複数出てくるようになれば、と思ってしまう今日このごろなのであります。



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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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