国内最大規模の対戦格闘ゲーム大会『闘劇』が、去る8/11(土)~8/13(月)に開催されました。今回種目に選ばれたのは『バーチャファイター5(以下VF5)』『鉄拳5DR』『ストリートファイターIII 3rd STRIKE(以下ストIII)』『アルカナハートFULL!』など計9タイトル。年に一度の最強決定戦が行われるディファ有明に、大勢の選手&観客が大集結。会場ではハイレベルな熱いバトルが繰り広げられていました。



2003年から始まった『闘劇』も今年で5回目。アーケードゲーム限定の大会ですが、格闘ゲーマーの間ではかなり認知されるようになりました。そんな『闘劇』が、今回初めての取り組みとして行ったのが、大会の模様をリアルタイムで配信するインターネットライブの実験でした。自宅でトッププレイヤー達の超絶美技を観戦しながら、この「ゲーム大会のライブ映像配信」というものに新たな可能性を感じてみたり。今回は、そんなライブ配信やゲームイベントについて考えてみたいと思います。



最近ではライブ映像の配信自体は珍しいことではありません。例えばスポーツの世界では、野球、サッカー、格闘技イベントなど、すでに様々なジャンルで活用されています。ゲームではセガが頑張っていて、『VF5』や『三国志大戦2』といった自社アーケードゲームの全国大会が配信されたりしています。



■PRIDEも脱帽?リアル格闘技を凌ぐイベントへ

『闘劇』で注目すべきなのは、「複数メーカー・複数タイトルの全国大会」がライブ配信されたという点です。バンダイナムコゲームズ、カプコン、SNKプレイモア、セガなど、複数メーカーのゲーム映像が同一の大会で見られるというのは、他にはない特徴です。プロレス&格闘技的に言えば、新日、全日、パンクラス、K-1、PRIDEらの興業が1日で3団体、3日で9団体も行われ、それがライブ配信されたみたいなものです(これは絶対無理)。



会場で購入した『闘劇』の公式ガイドブック。注目プレイヤーとして掲載された有名人が1回戦であっという間に消えていく光景は毎度おなじみ。



私は今回、生観戦とライブ配信の両方を体験しましたが、それぞれに長所・短所を感じました。生観戦は、開催場所に行くのが大変ですが、ライブの熱気を直接感じられるという点は最高です。ライブ配信での観戦は、現場の雰囲気は感じられませんが、自宅で気軽に観られるという良さがあります。特に今回のライブ配信はあくまで"実験"で無料ということもあり、金銭的な負担がなかったのは好印象でした。



全国レベルともなると、選手の技の攻防を観ているだけでも楽しめます。『闘劇』は有料イベントですが、これがディファ有明を満員にしているという事実は、すでに「ゲーム観戦」が興業として成り立ちつつあることを示しています(まだまだ赤字みたいですが)。熱い試合で盛り上がるその様は、プロレスや格闘技の雰囲気にも通じるものがあります。

■劇的なドラマも生まれた熱戦

生観戦で印象的だったのが、『VF5』で無冠の帝王と言われたトッププレイヤー「ちび太」が大将戦で大逆転を見せて、チームを優勝に導いた決勝戦でした。会場は全盛期のPRIDEのような大盛り上がりで、PRIDE GPの決勝戦と比較しても遜色なかったように思います。これは、格ゲー好きの濃い観客が集まっていたことと、「ちび太=大一番で勝てない」というイメージが、長年に渡って浸透していたという"タメ"が大きく影響していたからと思われますが、それにしてもフィニッシュ時の会場の大爆発はもの凄いものがありました。



プレイヤー自身にドラマがある場合以外は、純粋にゲーム内容に注目することになります。対戦時の攻防を真に理解するには、各タイトルのシステムを把握する必要がありますが、これは実際にゲームをやり込まないと身につきません。単に1人用プレイでクリアするだけではなく、対人戦で勝負を争うくらいにならないと理解は難しいのです。



一応試合中には実況&解説によるフォローが入るのですが、画面内の激しい動きに言葉を合わせるのは至難の業。実況・解説担当者の知識やコメント力も、人によってかなり開きがあったので、全体的には不満が残りました。観客が真に理解できるタイトルは限られていますので、今後は各タイトルの概要解説を映像で流すなどの配慮をしていただきたいものです。



その点『ストIII』は、攻防が見た目でわかりやすいゲームなので、やり込んでない自分でも相当に面白かったです(準決勝とかは神レベル)。この「観戦だけでも面白い」という部分は、新規プレイヤーを取り込むのにも重要なキーワード。ゲームメーカー各社の方々は、今後のソフト開発に活かしていただきたいと願う次第です。



大会3日目はライブ配信で観戦。全試合の模様を通して見ていたのですが、そこにはいろいろな工夫がされていました。試合の映像が流れるだけかと思いきや、出場選手や主催者側のインタビューなど、TVバラエティみたいな仕掛けもあって意外に面白かったです。インタビューを受ける選手達のノリのよさは、選手達が『闘劇』というお祭りを心底楽しんでいる証拠にも見えました。特に関西人選手の「スキあらば笑いを取りに行く」貪欲な姿勢には脱帽(ほとんど病気)。



選手にとっても、地方で応援している仲間が観ているというのは、心の支えになっていた模様です。ライブ配信は時々映像が途切れたりもしたのですが、後半ビットレートが下がってからは安定していたので、モニタの前できっと応援してくれていたことでしょう。



初日終了後の会場「ディファ有明」の外観。この日は朝10時の開会式から始まって、終わったのが20時過ぎ。夏でも外は真っ暗であります。



■広告モデルとしての可能性もアリ?

考えれば、あのライブ配信を観ていた人達は、ほぼ間違いなく全員が格ゲー好きだったはずです。ならばそんな視聴者の興味を引くCM等を流せば、スポンサーが広告費という名の運営資金を出してくれる可能性が高いと思うのですが、どうでしょうか。そういえば初日の会場では、スポンサー企業のバンダイナムコのゲームタイトル映像が、大型スクリーンでバンバン流れていました(いきなりアイドルマスターの映像が流れた時は、あまりの場違いっぷりに会場は微妙な空気に……。なんか悲しい)。あれをライブ配信に流用するだけで広告効果は何倍にも膨れあがるはずなのですが。



リアルなライブだけでは限界がある『闘劇』も、ライブ配信という手段を活用すれば、今まで見たこともない明るい未来が見えてくる予感がします。運営資金が多くなれば、それだけイベントでできることも増えるはずなので、支えてくれるファンのためにも大人の知恵を振り絞っていただきたいものであります。



余談になりますが、私の場合、観客として特に楽しめたタイトルは『VF5』と『鉄拳5DR』でした。絶妙な避けとか、マニアックな空中コンボとか、起き攻めのフェイントとか、熱い攻防が見えたのですが、知らない人には単に地味な行動にしか見えない場面も多かった気もしてます(特に『VF5』)。ちなみにプレイヤーの多い『鉄拳5DR』は、観客の盛り上がりが最初から全然違ってました。プレイヤー人口の違いがここまで如実に表れるものなのかと、驚いたり哀しくなったり(※1)。



(※1)プレイヤー人口の違い:最近の『VF5』の過疎っぷり(都内)は相当深刻。盛り上がっているのは一部のゲーセンだけで、私の知っている範囲ではセガ直営限定。これは『VF5』が1プレイに対して、課金30円+消費税をセガに納入しなければならず、プレイ料金を100円から下げられないことが大きな原因と言われている(仮に1プレイ50円にすると店の売り上げは20円以下……)。セガはもっとガンガレ。





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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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