例年通り5月のゴールデンウィークを明けてから、auやソフトバンクの2007年夏モデルも発表されました。また、各社の2007年3月度の決算発表も行われ、MNP以降の各社の明暗が鮮明になりました。



2007年4月のMNP利用動向では、ついにソフトバンクも転出より転入のほうが多くなるなど、"au一人勝ち"状態から"ドコモ一人負け"状態になりつつあります。今回は、そんな各社の夏モデルを見比べながら、ドコモの反撃があるのか見ていきたいと思います。



■スタイルで勢いづくauとソフトバンク、サービスとプロモーションで対抗するドコモ

NTTドコモが4月23日に「FOMA 904iシリーズ」を発表したのに続いて、auおよびソフトバンクが同じ5月22日にそれぞれ2007年夏モデルを発表しました。auはMNPの勢いそのままに一気に"15機種"を、ソフトバンクも1月のホワイトプラン導入以降に徐々に上向いている状況を背景に"12機種"を発表しました。



auは、防水やWALKMAN/EXILIMといったコラボモデルを筆頭に15機種中7機種がワンセグ搭載となっていますし、ソフトバンクもWindows Mobile 6搭載のスマートフォンやよりハイスペックになったAQUOSケータイなど充実したラインアップになっています。



それに対して、NTTドコモは903iのセカンドモデルとなる903iSシリーズを飛ばして、"904iシリーズ"を発表。機種数が5機種と、auやソフトバンクと比べると少なくなっています。もちろん、今後、下位モデルとなる"70xiシリーズ"も投入されるでしょうから、一概にauやソフトバンクの2007年夏モデルと機種数を比較できないとは思いますが、少なくとも、ハイエンドモデルだけを見比べたとしても、ワンセグ搭載率やHSDPA対応率などといった部分で、NTTドコモのラインアップはやや寂しいものとなっています。



その分、今回のドコモは新サービスである「2in1」や「うた・ホーダイ」をはじめとした、サービスを重視した内容となっています。また、auが"ウォークマン・ケータイ"や"EXILIMケータイ"というように、ハードメーカーとコラボレーションしているのが目立つのに比べ、NTTドコモでは「楽オク出品アプリ」では楽天と、「iアプリバンク」では銀行とアプリケーションでコラボレーションしたとも考えられます。



ただ、こういったコンテンツでの他事業者との連携は、これまではGoogleやGreeなどと連携してきたauの"十八番"といった感じも否めません。もちろん、こうしたサービスでの連携は重要で、コンテンツの幅や使いやすさというのは市場を左右する重要なファクターではあるのですが、少しインパクトにかけるという印象です。



楽オク出品アプリiアプリバンク



もうひとつ、NTTドコモの夏モデルで特徴的なのは、「DoCoMo 2.0」と銘打った大々的なプロモーション(宣伝)でしょう。以前にauのテレビCMに出演していた妻夫木聡をはじめ、浅野忠信、長瀬智也、土屋アンナ、蒼井優、吹石一恵、瑛太、北川景子の8人のタレントを起用し、ストーリー仕立てでテレビCMが放映されます。



こうしてみて見ると、発表会ではサービスなどに自信があり、大きくステップアップするラインアップであるため903iSを飛ばしたというようなことをいっていましたが、むしろ自信がないようにも見えて仕方がありません。大掛かりな宣伝も、それをフォローするかのように見えてしまいます。そもそも、DoCoMo 2.0の決め文句である「そろそろ反撃してもいいですか?」も「反撃します」ではなくて疑問調なところも弱々しく感じますし、本当に反撃しようとしているのでしょうか。



MNP利用者数推移

■新サービス「2in1」で契約者数を回復させたいドコモの思惑

苦言が多くなりました今回のNTTドコモですが、新サービスとなる「2in1」はなかなか面白いものとなっています。2in1は、1つの電話機で2つの電話番号とメールアドレスを別々に使い分けられるサービスです。対応機種となるSH904iとN904iが発売された5月25日(金)からサービスが開始されており、オプション料金は月額945円(税込)となっています。



例えば、これまで使っていた電話番号をメイン回線として残したまま、宅配便や会員登録の連絡用にサブ回線を追加したり、仕事用の電話機にサブ回線としてプライベート用の電話番号を追加できたりします。これまでも1台で3つの電話番号まで利用できる「マルチナンバー」を提供していましたが、2in1では新しくメールアドレスも2つ使えるようになっているのに加え、各電話番号やメールアドレスに対応した電話帳や設定などを使い分けることができるようになっています。



特に、メールアドレスは通信会社公式のものしか利用できないものもあったりするので、メインは親しい人との連絡用に、サブは変えてもいい"捨て(てもいい)アドレス"にといった利用方法もできるようになります。電話番号も特に一人暮らしの女性などは、連絡用に"捨て番号"が使えるのは重宝しそうです。特に、メールのマルチアカウントはようやく対応したかといったところです。



料金設定は、ダブルホルダーと呼ばれる、電話機を2台持ち歩いているユーザーを想定し、利用料金の安いソフトバンクのホワイトプランを参考にしたそうですが、こういった利用方法にしては、月額料金が高いように感じます。そもそもホワイトプランでは1~21時はソフトバンク宛てなら通話料が無料になるというように、なにかしらのサービス的優位性があるからこそ2台目を持っているわけで、単に2つの電話番号やメールアドレスを使えるだけの料金とはまったく別次元だと思われます。



ユーザー側から見れば、2in1はちょっと高い料金設定ではありますが、それなりに需要がありそうで、NTTドコモとしては思わず"反撃"と言ってしまうだけのサービスでもあるようです。この2in1では、オプションを追加すると1台で契約者数も2契約分となるのだそうです。つまり、ソフトバンクのホワイトプランのように1契約目から980円であるのに比べると敷居は高いものの、2in1に対応した機種を持っているユーザーなら2契約目を945円から追加できるようになるわけです。



さらに、この2in1での契約追加は、ホワイトプランの"お持ち帰り価格0円"よりも確実に端末代金がかからないのです。NTTドコモとしては、端末販売におけるインセンティブ(販売促進費)をかけずに契約を水増しできる絶好のサービスと言えるでしょう。これもケータイ事業の評価が一番に契約数(純増数)だというところによるものなのでしょう。



2in1設定画面



■やはり加入者増加には低い端末価格が重要なのか!?

ただ、やはり、NTTドコモが本格的に反撃するには、2in1だけでは力不足でしょう。最も大きい課題は電話機の販売価格です。決算発表時にもNTTドコモの中村社長が「NTTドコモは高いというイメージを持たれている」と言っていましたが、端末価格は実際に1~2万円ほど他社に比べて高いです。これはauは早くから部品やソフトウェアを共通化して開発費を抑えることに成功していることや、ソフトバンクが新スーパーボーナスを導入したことにより、顕著になっています。



ホワイトプランのように料金プランが安いことは乗り換えの動機にはなりますが、実際に乗り換える際には端末価格は重要なようです。特に、日本では維持費を含むトータルな価格よりも導入初期コストが重視される傾向にあることも影響しているでしょう。そのため、この電話機の価格にも手を入れていかないとNTTドコモの反撃ははじまらないのかもしれません。



NTTドコモも一時は「FOMAはつながらない」と揶揄されましたが、ネットワークも強化され、エリアも拡大してきました。これまでのmovaのような確実なエリアの広さと他社よりそれほど高くない料金プラン、最先端の高機能端末を揃えた充実のラインアップで高いシェアを保ってきたのとは違い、今後は市場をリードするような先端技術の導入や料金の低価格化を率先して行っていって欲しいものです。そうなってこそ本当の「DoCoMo 2.0」がはじまるんではないでしょうか。



各ケータイ会社の月別契約者数増減の推移各ケータイ会社の契約者数シェアの推移





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memn0ck(めむのっく)

ケータイ・モバイルライター。個人ニュースサイト「memn0ck(http://memn0ck.com/)」にて、日夜、携帯電話から無線LANサービスまでのモバイルデータ通信サービスについてのニュースを追っている。日常は白衣を着た理系野郎。1976年東京生まれ。著書に「W-ZERO3 [es] パワーナビゲーター」(技術評論社)などがある。



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