2007年5月、アキバ系のネタがNHKで短期間に連続投下されました。ヲタ芸の生き様紹介、ハルヒののど自慢、腐女子な中学生日記という内容は、そのどれもが新しいNHKの夜明け(?)を感じさせるものばかりでした。今回はそのトピック&エッセンスを記録していきたいと思います。



■『一期一会キミにききたい!』(NHK教育)

サブタイトル:「趣味を生きがいにする話 @東京."ヲタ芸"ライフ」

放送日時:2007年5月12日(土)22時25分~22時50分



この番組は悩める「イチゴくん」が、様々な現場で頑張っている「イチエくん」に出会うことで、悩みを解決する糸口を見つけるというもの。オープニング曲がサンボマスターだったり、ナレーションが原田泰造だったりするせいか、妙に男臭い感じがします(こういう感じは嫌いじゃありませんが……)。



今回のイチゴくんは20歳の大学生。ラジオを聞くことが趣味で、将来はラジオ局への就職を希望しています。彼は充実した人生を送るためには、自分が好きなことを仕事にするべきだという考えの持ち主。趣味と仕事を分けて考え、仕事のストレスを趣味で発散するというのは間違いだと思っています。



対するイチエくんは23歳。高校の文化祭をきっかけに仲間と踊る快感を知り、やがて松浦亜弥のライブで"ヲタ芸"と出会い、ハマってしまいます。その後、大学に入学したものの、自分には勉強よりも大切なもの(ヲタ芸)があると感じ、2年で大学を辞めてフリーター生活へと突入。週末のライブに行くために、平日にバイトをする生活を送るようになります。現在はIT系企業でサーバーの運用&保守等を担当する会社員。彼女もいます。



最初イチゴくんは「自分の好きな分野が分かっているんなら、その分野に関係する仕事にどうして就かなかったんですかって聞いてみたいです」とコメント。一方のイチエくんは、趣味に生きる楽しさを伝えたいと思って"イチエくん"役を引き受けた模様。そして番組はイチエくんが情熱を燃やす"ヲタ芸"にスポットを当てていきます。



両者の出会いは、東京・六本木での待ち合わせからスタート。合流後、一緒にライブ会場へ向かいます。歩きながら2人の間で以下のような会話が交わされました。

「ヲタ芸って見たことは?」

「TVでなんか、ちょっとだけ見た時あって…」

「あー(納得)。で、どう思った?」

「これは偏見かも知れないけど……。気持ち悪いなって…」

「ハハハハハ」

「…っていうのが直感」

「あー、やっぱ最初はそう思うなあ(ニコニコ)」



やがてライブ会場に到着して、ヲタ芸仲間達と合流。会場に入るとメイドさんがお出迎えをしてくれました。こういう場所が初めてのイチゴくんは、思いっきりとまどい気味。カメラに向かい「完全アウェーですね」とポツリ。アキバ系空間がホームとして扱われるケースは普段あまり見られないだけに、そのコメントは実に新鮮に感じられました。



イチエくんは、真っ赤なヲタ芸用ユニフォームに着替えて準備万端。いよいよ地下アイドルのライブがスタートです。メイドさん×2名構成の地下アイドルが披露するのは、アニソンの名曲の数々。いきなり「スクランブル(※1)」が始まると、ヲタ芸師の面々は絶叫しながら大盛り上がり。さらに「DANZEN! ふたりはプリキュア(※2)」「ハッピー☆マテリアル(※3)」と、今見ている放送局がNHKだとは思えない曲が次々に流れ、視聴者的にも大興奮!(アキバ系限定)



その光景を前にして、"非ヲタ"のイチゴくんはドン引きです。カメラの前で「ここであれだけ発散しているってことは、仕事場とか別のところで絶対何か我慢してると思うんです。じゃなきゃ、あんなにはしゃがないっすよ。絶対何かうっぷんとかたまってると思うんですよ」とコメントしたりします。



ライブ終了後、ヲタ芸仲間の人達と対談。ここでイチゴくんは「人生の大半を仕事に費やすわけじゃないですか。その時間を自分の好きなことに費やせたら、人生楽しいと思うんですよ」と発言。それを聞いたイチエくんのヲタ芸仲間は「単純に時間で比較しなくていいんじゃないかなあ。ヲタ芸は好きだけどそれで食っていけるかっていったら、そういうわけではないから。一概に好きだからこれで食っていこう=じゃあどういう仕事があるのって言われたら、それが結びつかないから、なかなかそこが難しいんだよね」と至極真っ当な意見を述べます。



(※1)「スクランブル」:TVアニメ『スクールランブル』のOPテーマ。アーティストは"堀江由衣 with UNSCANDAL"。



(※2)「DANZEN! ふたりはプリキュア」:TVアニメ『ふたりはプリキュア』のOPテーマ。アーティストは五條真由美 。



(※3)「ハッピー☆マテリアル」:TVアニメ『魔法先生ネギま!』のOPテーマ。通称ハピマテ。バージョン違いが多数存在することでも知られる。



番組後半、イチエくんは地下アイドルのライブの主催もしていることが明かされます。それを知ったイチゴくんは、ライブ運営を仕事にすればと問うのですが、イチエくんは「お金を取るようになったら、最初に思ってた(アイドルを)輝かせるためのステージを作りたい、お客の喜ぶ顔が見たいって気持ちがなくなっちゃうと思うんだよね。お金を稼ぐのに夢中になって」という考えを告白。その後イチゴくんは、ライブ運営の現場にも立ち会い、最終的には自分もヲタ芸を体験していました。



そして最後に「今まで人に認められるだとか、価値観がある・ないとか、そういうものばっかりこだわってたけど、単に自分が楽しいなって直感的に思えることをやり通す。ただそれだけのことでいいんだなって、そういう考えに変わった」とコメント。イチゴくんの中の価値観の変化が、今後の人生に活かされるように願うばかりです。

■『NHKのど自慢』(NHK総合)

放送日時:2007年5月13日(日)12時15分~13時



会場は群馬県・千代田町総合体育館。制服姿のハルヒコスプレの女子高生コンビ(2名)が、出待ちの席で手拍子を打っている時点ですさまじいカオス。12時43分11秒(実測)、いよいよハルヒの出番です。



(司会)「続いては、高校のバンド仲間のお二人」

ハルヒコンビ登場

(ハルヒ左)「16番、ハレ晴レユカイ」



そして生バンド演奏をバックにオンステージ開始! 2人は手を振り、腰を振り、身も心もハルヒになりきっての熱唱を展開。バックで手拍子する参加者の人達もしっかり応援してくれています。中には首を傾げたり、目を細めて「これなんなんだろう?」と確実に戸惑ってる人もいましたが、そのくらいは全然問題なし。みんないい人であります。



「カーン」不合格の鐘が鳴っても笑顔で終了。



(司会)「おそろいの、あの~、お洋服だったんですけど、これは学校の制服じゃないんですよね」

(左ハルヒ)「いえ、アニメの衣装です」

(司会)「この歌のアニメの衣装?」

(左ハルヒ)「はい」※満面の笑み

(司会)「着るとどんな感じ?」

(右ハルヒ)「えっ、すごいハルヒになれて嬉しいです」※満面の笑顔

(司会)「あ、主人公になれて」

(左右ハルヒ)「はい」※満面のすまいる



といったやりとりがステージ上で繰り広げられたのでした。



NHKのど自慢で「ハレ晴レユカイ」が披露されたのも驚きでしたが、観客の方々の還暦オーバー率が9割(内7割が女性)といった状況にも驚かされました。一瞬だけ映った観客席の一部を見た上での目測なので実際は違うのかも知れませんが、ご年配の方々が多かったのは事実かと。冷静に考えたら『NHKのど自慢』なんだから別に不思議ではないんですが、ハルヒ登場でいろいろ混乱してしまったようです。



ところが、そんな状況でも「ハレ晴レユカイ」は、暖かい拍手で迎えられていました。長く人生を生き抜いた諸先輩達の懐の深さには頭が下がります。自分たちの孫の世代が楽しそうに歌ってる姿を前にしては、無条件に応援してあげたくなるというのが人の道、といった感じなのでしょうか。



個人的にはバックのバンド演奏がいい味を出していたのが心に残りました。番組の性質上、どうしても懐メロや演歌が多くなる中、エッジの効いた「ハレ晴レユカイ」は、ベテランバンドメンにとって割と新鮮なものだったような気がします。特にドラムの方がノリノリで、不合格の鐘が鳴った瞬間「もっと演りたかった……」という表情を一瞬浮かべていました(泣)。もう少し長く演奏してもらいたかったです。

■『中学生日記』(NHK教育)

サブタイトル:「だって好きなんだもん! ~"腐女子"だって恋をする~」

放送日時:2007年5月19日(土)21時30分~21時59分



再放送が5月26日(土)10時45分~11時14分にあるので、未見の人は要チェックです。ストーリーのあらすじは、新聞委員の女子生徒(主人公)が新聞のイラストを描ける人材を捜していたところ、偶然同じクラスに隠れ腐女子を発見。やがて一緒に同人誌を作る約束をする間柄になりますが、やがて"非ヲタ"の男子を巻き込んで……、といった内容。なんだかんだ言っても「中学生日記」ぽい(?)ストーリーになっています。



最初の見所は、職員室での腐女子解説シークエンス。男性教師の大須先生が漫画を読んでいるところから始まります。



(大須)「なんじゃこりゃ!」

(御器所)「どうしたんですか、大須先生」※男性教師

(大須)「先生、見てくださいよこれ。生徒が持ってたんですけどね。これ何が描かれてると思います?」

(御器所)「ラブのシーンですか」



ここで男同士の愛の語らいシーンのページが画面に大写し(ドーン!)。



(大須)「それも男同士ですよ、男同士!」

(志賀)「ああ、BLですか」※女性教師

(御器所)「ビーエル?」

(志賀)「ボーイズ・ラブ。略してBLって言うんですよ、そういう漫画のこと」

(御器所)「志賀先生、詳しいですね~」

(志賀)「私も結構好きでしたよ、中学生くらいの時」

(大須)「ええ!? 志賀先生まで?」

(志賀)「うん」

(大須)「まったく腐ってんな~」

(志賀)「よく知ってますねー」

(大須)「え?」

(志賀)「最近ではボーイズ・ラブが好きな女の子のことを腐った女子って書いて"腐女子"って呼んだりするんですよ」

(御器所)「腐ったってなんか……、酷くないですか?」

(志賀)「いえいえ。彼女達は自ら腐女子を名乗ってるんです」※堂々と解説



志賀先生の解説ぶりを見る限り、絶対現役の腐女子です。NHKすごすぎです。その後、物語は女子生徒を中心に展開していきます。そして腐女子な友達の部屋で、"非ヲタ"の主人公がBLな漫画原稿を見てドン引きするシーンへ突入。それを見た腐女子がBLへの思いを熱く語ります。



「男と男の恋愛のどこがいけないの!? それこそ戦国時代から、いやー、ギリシャ時代からずーっとあったことじゃない! それにこれは漫画だよ。想像の世界。夢の世界。誰にも迷惑なんてかけてない」

「いや、でもやっぱ男と女の方がね、ときめくって言うか…」

「女は汚いでしょ。心が」

とバッサリ!! 



この時点で番組はまだ9分しか経ってないのですが、早くもクライマックス突入であります。



「それに比べて男子の世界は純粋だもの。美少年達が危うい一線を越える瞬間…。その瞬間の極みこそが最も美しいのよ!! それを何? みんな読みもしないうちにぃ~(恨み節)」



あのー、これって本当にNHKなんでしょうか……(大汗)。



番組は結構面白かったのですが、ドラマ内で使用された漫画やイラストの内容がいまひとつだったのが少し残念に思われました。予算等の問題もあるのでしょうが、ドラマの説得力に大きくかかわる部分だっただけに、そこは頑張って欲しかったですね。とりあえず今後もアキバ系のネタ投下を見逃さないよう、NHKの番組欄に注目していきたいと思う次第であります。





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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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