世界の工場「中国」は、携帯電話の生産でも今や世界一を誇っている。Nokia、Motorola、Samsungなど大手メーカーも中国各地に工場を持っており、世界中に製品を輸出している。その一方、中国の国内端末メーカーは最近元気がない。BirdとSagem、TCLとAlcatelのように。一時はヨーロッパの老舗メーカーと提携するなど世界市場への本格的進出を図ったものの、ここのところはお膝元の中国国内でも売れ行きが鈍っている。



中国でもシェアの上位はNokiaなど海外メーカーが握っており、そのあとを中国の大手メーカーが追いかける状態となっている。そうなるとそれ以下の中小メーカーは生き残りがさらに厳しくなってきており、名もなく消えていくメーカーも多数あるようだ。特に小規模のメーカーは生存をかけ様々な製品を発売しており、「こんなものまで」と思える面白い製品も多数登場している。



■レプリカ携帯で注目を浴びる

中国の中小メーカー数は正式には数えていないものの、100以上はあるだろう。特に小規模のメーカーは品質などに若干の難点はあるものの、低価格を武器に地方都市などでは一定の売り上げを保っているようだ。ブランド力がないだけに価格だけが唯一の競争力となる。また、デザインは大手メーカーをコピーするなど、問題のあるものが多数出回っているのも事実だ。「Nokiaっぽい」「Samsungっぽい」デザインで客の目を惹こうとしているわけだが、結果として見た目が同じような製品ばかりとなってしまい、どの中小メーカーも似たり寄ったりの製品ばかりを販売していた。



ところが、最近は他社にない独自の製品の開発に力を入れているところが増えている。相変わらず外国メーカーと同じような端末も増えているが、大手メーカーにはない面白いデザインの端末が多数登場しているのだ。その先鞭を切ったのは、2005年末に登場したMotorolaの通称「水壷」のレプリカ携帯だ。古い香港映画などによく出てきた大型トランシーバーのような大型サイズのMotorola携帯をそのデザインのまま復活させたもので、昨今の携帯電話の高機能化に対するアンチテーゼともいえるこの端末の登場は一部で大きな話題となった。



ディスプレイはモノクロで狭くカメラもない、しかも生産台数も多くない。このような端末を大手のメーカーが今の時代に製造することは不可能で、それを中国の名もないメーカーが作り上げたことは非常に面白いといえるだろう。実は、この端末は内部の基盤は大手メーカーの中古端末のものを利用しており、著作権上は問題のある製品であった。



しかしその後はOEMメーカーのユニットを利用した問題のない製品として海外輸出もされるようになり、カラーディスプレイ、カメラ、音楽再生対応など、いつの間にか機能も進化していったのだ。今ではサイズを小型化したミニチュアサイズのものも出てきており、普段利用してもおかしくない普通サイズの製品として少しずつ人気を得ている。メーカーに販売力がないため中国内でも通信キャリアや大きな家電店などでは販売されず、小型の携帯専門店などでしか見かけることができないが、これぞ中小、いや小規模メーカーならではの製品といえるだろう。



Motorolaのレトロ携帯のレプリカ端末。今の時代にこれを使うのも面白い最近ではカラー画面化や小型化が進み、その数も100種類以上を超えている

■さらにユニークな面白携帯たち

巨大なレプリカ携帯の一方で、小型化や薄型化に取り組んでいるメーカーもある。中でも手のひらサイズの超小型端末はいくつかのメーカーが発売している。サイズが小さいため数字キーはなく、すべてタッチパネル操作となるので、もちろん使い勝手はあまりよくない。また、機能もそれほど大したものは搭載していない。残念ながらデザインはどことなく見たことのあるもの=大手メーカーの意匠を取り入れており、問題があるといわざるを得ないが、このサイズできちんとした携帯電話として使えることは驚異だろう。



見た目がユニークな製品も多数登場している。最近話題になっているのはタバコ携帯だ。見た目は中国でメジャーなタバコ「中華」そのもの。ただしロゴは改変してあり著作権は問題ないという(メーカーの説明)。しかし背面にはカラーディスプレイと数字キーを備えておりこれでも携帯電話なのだ。本体を横から半分に分割するとSIMカードや電池を入れることができる。背面カバー側には実際にタバコが7本収納できるのも面白い。



この他にも自動車や人形の形状をしたものなど、面白いデザインの携帯が多数発売されているが、それらすべての実情を掴むのは非情に困難だ。これはほとんどの製品が1ロット生産されただけで販売終了してしまうためで、たとえ売れ行きがよくともメーカーに体力がないため追加生産できないところがほとんどだという。その反面、中小メーカー同士で形状のコピーなどが行われており、そこに独自の改変も加わるから、さらなるユニークな端末も日々登場している。



手のひらサイズの超小型携帯。音楽再生機能が独立しており、どうやらベースはMP3プレーヤーのようだ見た目がタバコそのままなタバコ携帯。ここまでユニークな携帯を出してくるのも中国の面白いところだ



■自由な競争から面白い製品が生まれる

これら中国小規模メーカーの製品を見て「所詮は見た目を変えただけ」「新しい技術に欠けている」「品質に問題がある」などと批判することは簡単だ。デザインなどに著作権上の問題のある製品もある。しかし各社が知恵を絞りながら面白い端末を出していくその姿勢は素直に評価できるのではないだろうか?



また、使いやすさや機能以前に「面白い」と思えるだけでも、製品価値があるのではないだろうか?



携帯電話はまだまだ機能の進化が進むだろうが、基本機能だけを使う利用者にとってはすでに成熟した製品でもある。機能ではなく見た目だけで選べる製品があってもいいはずだ。



日本では通信キャリアが端末の基本仕様を設計・開発し、メーカーがそれに基づいて生産、キャリアに一括納入している。そのため、常に最新機能と使いやすさを備え、そして確実に売れる端末のみが市場に投入されている。しかし、その結果として同じような端末ばかりが増えているように思えてしまう。 たとえばJTがキャンペーンとしてタバコ形状携帯をプレゼントする、といったことがあっても面白いと思えるのだ。中国製造、単機能ならば数千円で作ることも可能になるだろう。中国のこれら「大量に売れそうにない」「しかしユニーク」な製品コンセプトを持った端末、将来は海外でもあたりまえのものになるかもしれない。





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山根康宏

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