筆者は、出先で仕事をすることが多くあるので、ノートパソコンを持ち歩くことが多い。特に最近はモバイルタイプのノートパソコンが軽量化したことで、持ち運びに苦痛を感じなくなったから持ち歩くことが多くなった。また、無線LANに対応しているスポットが増えているのも持ち歩く機会が増えた理由のひとつだろう。



ただ、問題もある。いつも行くところなら、ある程度どの辺に無線LANスポットがあるかどうかは調べてあり、普段行かないところでも前もって調べておくこともできる。ただ、ちょっと地方に行くことになった場合、無線LANスポットがない場合があるのだ。そういったときは、携帯電話など通信端末を接続してインターネットをするわけなのだが、携帯電話だとパケット代が定額になっていないので、かなり高くなってしまうという問題がある。なので、常に持ち歩いているユーザーはカードタイプの通信端末を持ち歩くことが多いようなのである。



これまでは、ウィルコムの独断場であった(以前はドコモのPHSという手もあったが)カード型通信端末の市場にイーモバイルが参入した。しかも通信速度が速く、完全な定額制というところも強み。しかし、参入したばかりなので接続できない場所がまだまだ多い…という問題があるのだ。



そこで、2007年4月5日に発売になったウィルコムの「AX530IN」と、2007年4月13日に発売になったイーモバイルの「D01NX」の両端末をいろいろな場所に持ち出してテストしてみた。ちなみに同時に2006年2月に発売されたAX520Nも同時にテストしてみた。



まずは各端末のスペックや特長などを紹介しよう。


■イーモバイル「D01NX」

メーカーは株式会社ネットインデックス。対応OSはWindows 2000 Professional(ServicePack4以降)、Windows XP Professional/Home Edition ServicePack1以降、Windows Vista(32bit版)。

サイズは幅42.8×厚さ5.0×奥行60.0mm。Compact Flash TypeIIに準拠。PCカードアダプタを装着すればPC Card Standard TypeⅡ準拠となる。重さは23g、アダプタを装着すると46gだ。



通信速度は最新通信技術であるHSDPAを採用し、下り最大3.6Mbpsを実現。気になる料金に関してだが、まずは本体の価格。定価は28,980円だが、データプラン(いちねん)という一年間解約しない契約を結ぶと4,980円となる。さらに現在は開業記念ということで5月末までは同じ条件で契約すると、1円で購入できるのである。月々の基本使用料は5,980円。これのみ。定額でどれだけ使っても変わらないのである。



問題がサービスエリアだ。東京、大阪、名古屋地域から順次サービス開始、ということでそれ以外の地域では使えないことになる。大阪に住んでいる筆者が持ち歩いてみたところ、サービスエリア内でも使えない場所がかなり多いことがわかった。有名な地下街は大丈夫だが、地下鉄の駅になるとほぼ全滅。また、ビルの中に入るとダメということが多いようであった。

これがイーモバイルの「D01NX」だ。PCカードアダプタを装着すればこんな感じ。筆者の利用しているノートパソコンに挿すとこんな感じになる。



■ウィルコム「AX520N」

メーカーはNECインフロンティア株式会社。対応OSは、Windows Me/2000/XP/Vista、MacOS 9.0~9.2/10.1.5~10.4.8である。サイズは幅56.3×厚さ9.6×奥行き114.6mm。PC Card Standard TypeIIに準拠している。重さは45gである。



8つの通信チャンネルを束ねてパケット通信を行うことができる。高度化PHS規格「W-OAM」に対応しているので、W-OAM基地局エリアでは最大408Kbpsの通信速度が出る。W-OAM非対応時でも最大256Kbpsのスピードが出る。



料金は、本体価格が14,800円(大阪市内にあるウィルコムストアで)。発売して1年以上が経つのだが、本体価格はほとんど変わっていない。月々の料金だが、契約できるコースは2つある。ひとつは完全につなぎ放題の定額制で「つなぎ放題[PRO]」で、月額料金が12,915円(年間契約すると12,001円)となるコース。もうひとつが25時間まで無料で、それ以降が60秒につき10.5円の「ネット25[PRO]」で、月額料金が7,245円(年間契約すると6,394円)となるコースである。



サービスエリアは広く、全国で人口カバー率99%とウィルコムは謳っている。ただしW-OAM対応エリアがどこというのは発表されていない(ウィルコムサービスセンターに電話して住所を言えば、そこがW-OAMに対応しているかどうかを教えてはくれる)。



実際に持ち歩いてみてもつながらないっていう場所はほとんどなく、あったとしてもその場所はどこのケータイもつながらないというような場所がほとんどであった。

これがウィルコムの「AX520N」だ。筆者の利用しているノートパソコンに挿すとこんな感じになる。

次のページでは、ウィルコムのカード型通信端末「AX530IN」を紹介したあと、実際の速度チェックにうつろう。

■ウィルコム「AX530IN」

メーカーは株式会社ネットインデックス。対応OSは、Windows 2000/XP/Vista、MacOS 10.2~10.2.8/10.3.4~10.4.8 である。サイズは幅54×厚さ10×奥行き127mm。PC Card Standard TypeIIに準拠している。重さは45gである。



この端末もAX520Nと同じで、8つの通信チャンネルを束ねてパケット通信を行うことが可能。「W-OAM typeG」に対応し、「W-OAM」対応エリアで利用すれば、通信速度は従来の1.6倍が可能で、最大で512Kbpsのスピードが出る。2007年度以降、通信利用の多い地域から基地局回線の光IP化を進めていくことにより、「W-OAM typeG」対応エリアで最大約800kbpsの高速データ通信が可能になる…と発表されている。



料金は、本体価格が26.800円(大阪市内にあるウィルコムストアで)。月々の料金は、AX520Nと同じで、つなぎ放題で月額料金12,915円(年間契約で12,001円)の「つなぎ放題[PRO]」と25時間まで無料で、それ以降が60秒につき10.5円で、月額料金7,245円(年間契約で6,394円)の「ネット25[PRO]」から選択することになる。



サービスエリアもAX520Nと同じである。


これがウィルコムの「AX530IN」だ。筆者の利用しているノートパソコンに挿すとこんな感じになる。




■それぞれの通信速度はどうだろう

どの端末もそのスピードが確約されているわけではなく、最大でどれだけ出るかという理論値だ。回線の混み具合や周辺環境によってかなり変わるのである。なので、いろいろな場所、シチュエーションでテストしてみた。



最初は事務所で4時間ごとに計ってみた。次に仕事で京都に行く用事があったので、京都をちょっと歩いていろいろな場所で計ってみた。テストは「BNRスピードテスト」というサイトを利用して各5回ずつ計ってみた。以下がその表である。



●筆者の事務所 大阪市内のマンション

筆者の事務所にて





AM08:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX681.919658.066672.42666.741660.167
AX530IN213.87237.395211.455213.879221.684
AX520N117.05110.528110.458116.507110.738





AM12:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX591.128612.221564.356598.224570.18
AX530IN128.561152.218103.543116.231113.255
AX520N98.12088.548102.98878.54788.501





PM16:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX621.288618.765544.238589.66601.415
AX530IN180.238168.366178.951160.991182.368
AX520N116.866124.788106.014112.966126.667





PM20:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX481.38596.118501.611552.967548.226
AX530IN185.904164.111152.233146.851166.299
AX520N123.522118.655122.245117.544110.685





PM24:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX563.289518.488499.216501.682592.934
AX530IN158.408201.235211.872206.518204.558
AX520N156.514118.964141.258132.114142.358





AM04:00計測
機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX641.401601.437610.978596.841610.459
AX530IN225.83234.336227.971200.568209.599
AX520N123.552118.655122.966147.245162.879





次のページでは、大阪から京都に場所を移動しながら、それぞれの端末で実際に計った通信速度を見ていただこう。

■5月9日、京都に行く

大阪から京都に場所を移動しながら、それぞれの端末で実際に計った通信速度を見ていただこう。




●阪急梅田駅 AM10:30計測

阪急梅田駅構内にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX671.685620.463588.283649.623611.899
AX530IN127.501118.486122.348106.723120.008
AX520N156.554135.78460.517155.174126.766





●阪急西院駅 AM11:30

阪急西院駅構内にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX642.785619.216544.871632.601580.06
AX530IN68.64489.34161.81627.95353.439
AX520N78.25493.14390.947110.94551.621





●阪急河原町駅 地下 PM0:30
阪急河原町駅地下切符販売機横にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX圏外圏外圏外圏外圏外
AX530IN134.212111.251105.124119.448120.008
AX520N104.384101.284114.824101.52278.154





●阪急河原町駅 地上 PM0:40

阪急河原町駅地上にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX679.505602.08602.089621.364657.532
AX530IN177.923184.1179.531159.068130.48
AX520N129.547127.152131.889126.59288.102





●先斗町 PM1:00

先斗町にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX586.514576.569565.303570.691514.764
AX530IN209.645224.202228.212179.561170.101
AX520N126.042118.771137.756133.855103.327





●八坂神社 PM2:00

八坂神社内にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX623.054617.977601.901611.235622.988
AX530IN38.28851.20559.83152.22141.564
AX520N58.21351.80150.23568.45539.822





●清水寺 PM3:00

清水の舞台にて



機種名1回目2回目3回目4回目5回目
D01NX圏外圏外圏外圏外圏外
AX530IN圏外圏外圏外圏外圏外
AX520N圏外圏外圏外圏外圏外





■Kijimoto's EYE:エリアの広いウィルコム、高速接続のイーモバイル



実際に使ってみてわかったのは、つながれば「D01NX」は安定して高速接続ができるっていうことだ。現在は、ユーザー数が少ないから安定した高速接続が可能なのだろう。ただし、何度も書くがつながらないところがかなり多い。有名地下街ならつながるが、地下街と地下街をつなぐ通路などはムリなことが多い感じだ。



また地下街は大丈夫でも、そこからちょっと下りる地下鉄の駅はほとんどがムリ。あと、ビルの中もけっこう弱い感じだ。となると出張などでホテルに泊まった場合、ロビーは大丈夫でも部屋はアウトっていう状況も少なくないだろう。



ウィルコムに関しては、さすがにエリアが広いだけあって、圏外になるケースはかなり少ないみたいだ。ただし、W-OAMの対応エリアが分からなさすぎる。あと、ユーザーが多いせいか、時間帯などに応じて接続スピードがかなり違うのも見受けられた。これはしかたがないことだろう。



結論としてはいつでもどこでも接続したいというユーザーは、料金がちょっと高めなのが気になるところだが、まだまだウィルコムを選択すべきであろう。いつもサービスエリアのど真ん中にいて、さらには地上にいることが多いというユーザーは、イーモバイルでもいけそうだ。両方持っておくっていうのがベストなのだが、使わなくてもふたつ合わせた基本料が1万円を超えてしまうのはちょっと厳しいというところだろう。





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D01NX

AX520N

AX530IN

イーモバイル

ウィルコム





編集部:木地本 昌弥

「パソコンですぐできる写真俳句」(毎日新聞社) 「その場で解決!ファイル操作とデータ管理」(技術評論社)など50冊以上の書籍を執筆。携帯電話やパソコン、IT関連から取扱説明書まで執筆ジャンルは幅広く、ITジャーナリスト・携帯電話評論家としてテレビやラジオ、講演もこなす。詳細は、著者のホームページ「我流珍述」プロフィールページまで。



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