携帯電話シェア世界第3位。堂々たる大メーカーにまで上り詰めたSamsung。日本でもソフトバンク向けに特徴ある端末を多数リリースしており、存在感あるメーカーになりつつある。先日開催された国際情報通信技術関連見本市「CeBIT 2007」では、Ultra Editionシリーズを強力に推進する同社のブランド戦略の一環を見ることができた。


■「その先の将来」を感じさせるSamsungの展示

今年のCeBITは携帯電話関連の展示が大幅に縮小されていたが、Samsungは他の展示会と変わらず他社を圧倒する最大規模の展示を行っている。ずらりと並ぶ同社の最新機種の展示は「なんでもあります」といった機種数だけを集めたものではなく、メーカーとしての方向性を明確にアピールしたものであった。すなわち来訪者は展示されている新機種を通して、今後の同社の端末戦略を垣間見ることができるのだ。



圧巻なのはずらりと並べられたスリム端末。厚み1cm前後の薄型端末を同社は"Ultra Edition"と命名し、シリーズ展開を行っている。現行機種と新機種をあわせ10機種以上の薄型端末が並ぶ様は圧巻で、Motorolaの"RAZR"が先鞭をつけたスリム携帯も、海外ではいまやSamsungの代名詞となっている。Ultra Editionシリーズも新製品は「II」とグレードアップされており、薄さの追求のみならずデザインや質感もこれまで以上に精練された新機種が展示されている。大型のモックアップや回転式のディスプレイなどの薄さを目立たせる展示方法もさすがで、薄さに強いSamsungならではである。来訪者のほとんどがそれらを眺めては同社の薄型技術力に感心していたようであった。



他にも女性向けファッション端末、ローエンドながらデザインに凝った端末、またデジタル放送対応端末やYahoo!/Google対応端末、スマートフォンなどバラエティーに富んだ展示が行われていた。Ultra Editionを中核にしつつも幅広いカテゴリの製品が目白押しとなっており、同社ブース内を全て回るだけであっという間に1、2時間は経ってしまう。そしてこれらの展示を見ていると、薄型端末はさらに薄く、ファッション携帯はさらにファッショナブルになり、デジタル放送の対応機種もより薄くファッショナブルになっていくのだろう、という「将来の製品像」が見えてくる。すなわちSamsung製品へ対しての期待感を持たずにはいられなくなるような、夢のある展示内容になっているわけだ。

写真:巨大なモックアップが端末の薄さをより際立てて実感させてくれる

写真:4種類の端末を回転させることで、どこからでも薄さがわかる展示がうまい



■メーカーの特色がより必要になる海外市場

さてSamsungのUltra Editionだが、他社も薄型端末をリリースしているとはいえ、ここまで薄型のラインナップを揃えているメーカーは無い。すなわちSamsungは、自社技術の限界に自らチャレンジしていると言えるだろう。同社では数年前は内蔵カメラの画素数の向上に力を入れていたが、その時もライバル他社の追い上げが無くとも毎月のように高画素数カメラ内蔵端末を発表しており、最終的には業界唯一の10メガピクセル=1,000万画素カメラを搭載した端末を発売した。このように他社を寄せつけない自社だけの端末を作り続けることで同社製品のクオリティーを押し上げ、結果として世界シェア3位の座を掴むことができたのだろう。



今後は、よりメーカー間の競争が熾烈となり、Samsungも3位の位置を確保しつづけていけるかどうかはわからない情勢だ。Ultra Editionのように確立されたブランドを持つことはユーザーの求心力を保つために有効だが、すでに他メーカーも同様なブランド戦略を展開している。Nokiaの"Nseries"、Motorolaの"RAZR"シリーズ、SonyEricssonの"Walkman"携帯シリーズなど、ブランド力のある大手メーカーが自社内にさらに別ブランドを持つことで、製品の特色をより際立てるようにしているわけだ。



Samsungもメーカーとしての「ファッショナブル」「高機能」というイメージのほかに、Ultra Editionという名前は「Samsungオンリーの超薄型端末」という際立った印象をユーザーに与えることができる。年間100機種ともいわれる新機種が登場する海外市場において、多くの新機種が数ヶ月もしないうちにユーザーから忘れ去られてしまっている訳だが、ブランド名を持った端末であれば、シリーズ中の1ラインナップとしてユーザーの記憶により長く留まることができるだろう。



■日本メーカーもブランド戦略が必要

海外市場では日本メーカー端末の苦戦が続いているが、前述したように膨大な数の新機種が毎月登場する中で、ブランド力の弱い端末が1機種だけ出てきてもなかなか認知されないのが実情だ。機能面で見れば日本メーカー端末はたしかに高機能だが、他社を抜きん出るほどのインパクトを持った端末はなかなか見当たらない。



最近、日本ではシャープがワンセグ対応端末に"AQUOS"ケータイというブランド名をつけているが、いっそのこと海外でも同様に液晶表示のきれいな同社端末にAQUOSの名を冠してもいいのではないだろうか。意味が不明の数字だけの型番を付与するよりも、固有名詞であるブランド名を冠したほうが認知度は高まるはずだ。すなわち日本メーカーが海外で巻き返しを図るためには端末の高機能化だけではなく、ブランド戦略もそれ以上に重要なものと言えるのではないだろうか。

写真:スタンド式のディスプレイ方法も、スリムさを強調している感じだ

写真:SamsungはUltra Mobile PCの「Ultra」ロゴも携帯電話のUltra Editionと同様のものに。同ブランドは今後携帯電話以外にも広がるのだろう





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山根康宏

香港在住の海外携帯電話マニア&研究家

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