YMOがキリンビールのCMで「RYDEEN 79/07」を披露したり、Perfumeがバレンタインに出す新曲「チョコレイト・ディスコ」が最高だったり、山本梓が「あず☆トラ ~うる星やつら ラムのラブソング~」で歌手デビューしたりと、なんだか最近世の中はテクノづいているようです。そこで今回は、テクノ界を陰で支えるインディーズアーティストのアルバムを勝手にレビューしてみることにします。



こういう場合、高橋名人ともコラボった「YMCK」あたりを紹介するのが王道な気もしますが、今回はとりあえずジャケットのインパクト優先でチョイスしてみました(ジャケ買いは、男のロマンであります)。レビューはすべてファーストインプレッション。感じたままに書いていますので、ファンの方で気を悪くされた方がいたらすみませんです。



※アルバム紹介データは、「CDタイトル:アーティスト:レーベル:リリース時期」の順に表記。曲データは「曲タイトル/アーティスト」の順に表記(『萌えテクノぽっぷぅ』)。



■『萌えテクノぽっぷぅ』:※複数アーティストのコンピ:T4P(TECHNO4POP):2006年9月

~女性ボーカルのピコピコテクノユニットを中心に集めた企画モノ~



萌え萌えなジャケ絵。アキバっ子ならノリで買えてしまう良い出来。裏面では参加アーティスト&曲名が並ぶ。フォントも萌えている。中身はこんな感じ。ツインテール&絶対領域がテクノライズ!

(1)LOVELYファットちゃん/まにきゅあ団

ファミコン風ピコピコ音アレンジ。「ちょっぴり太目のファットちゃ~ん。趣味はダ・イ・エッ・ト!」と女性ヴォーカル&男性コーラスがノリノリでからみつく電波曲。



(2)妊婦はポップ/アーバンギャルド

子供が生まれそうな妊婦の呼吸法から始まり、最後に子供が生まれるというハードテクノ。



(3)いじわる(normal extended club mix)/normal pop?

坂本龍一アレンジの中谷美紀っぽい、爽やかアレンジ。ガールポップに真正面に向き合っていて好感が持てる。これは個人的にかなり好みでアルバムが聞いてみたいと思えた。



(4)Galactic Gate/pLumsonic!

林原めぐみ(声優)が歌うアニソン風。曲はメリハリに乏しく、一本調子?に聞こえる。



(5)sewing machine/applehead

女性ヴォーカルは不思議ちゃん? 音がなんだか安っぽいのだが、これ、狙っているのだろうか。



(6)未来ハ便利ニ ~ 24hours open mode/ダブルユース

リズムがGSを感じさせる。ノイジーな録音のヴォーカルは微妙。ちょっと荒削りすぎ。



(7)カイドク/オーラルヴァンパイア

ラブサイケデリコみたいな声のヴォーカル。歌は普通に上手いので、もっとボーカルを活かす曲にすべきかと。バックのノイズ音が過剰で聞き辛いのも少々もったいない。



(8)君の天使/細江慎治 featuring ANGEL-N

しっとりささやくアート系テクノ。ヴォーカルは大貫妙子っぽい? 雰囲気はかなりある。



(9)ナイロンウェーブ/ベスパ☆くまメロ

90年代のUKテクノ風味。ヴォーカルは坂本真綾とhitomiを足して割った感じ。アイドルが歌ってもおかしくない曲(シングルではキツいが、アルバム収録曲なら全然アリ)。



(10)プラスチックラブ/isogo turumi

後期YMO風のアレンジだが、もう少しヒネリが欲しい。アルバムのつなぎ曲っぽい。



(11)電池サーフ(06'version)/ゼンマイ

戸川純的な曲。かなり前衛的なので興味のない人には雑音にしか聞こえないかも。



(12)ボサボサノバト/風葉

脱力加減がなかなか良い、ささやき系。シンプルな編曲も、まあこれはこれで。



(13)Static Love/THE ELECTRICK LOVE

女の子キャラが活躍するアクションゲームのBGM的な雰囲気がある。わりと好み。



(14)シスター/ハニー・マニー

グラビアアイドルが歌うようなユルい曲を電子音アレンジしたという印象。惜しい。



(15)みずのふわり/ぽらぽら。

しっとりアンビエント系。アルバムのエンディングを意識した選曲かと。



(総評)毒電波出まくりの1曲目を聞いた時は「ぐわわ! 地雷かよ!」と、正直落ち込んだのですが、通して聴くと結構いい曲もあって安心しました(むしろあの1曲目が異質)。過度な期待は禁物ですが、テクノ&ガールポップが好きな人になら普通に勧められると思います。気に入らなくても保障は全然できませんが、私的にはまあまあ満足でした。



■『デジタルス的電化大革命』:デジタルス:ホタテクノ:2005年11月

~電化製品がモチーフの曲を集めた同ユニットのベスト版~



これはwww。思わず買ってしまったこの気持ちは人類共通と信じたい。マンセーの大合唱が聞こえてきそうな裏面。笑顔がみんな素晴らしい。レーベル絵も完璧。何気にCD-Rなところがインディーっぽくてマル。

(1)リ・モ・コ・ン

クラフトワークっぽいフレーズを淡々と繰り返す。8ビットパソコンの匂いがする。



(2)電子レンヂ

「電子レンヂでチンするチンする(女性ヴォーカル)」を繰り返す。男性ヴォーカルは「コンビニエンスの可愛い姉ちゃん、僕も一緒にあたため~て~」とキモさ全開。



(3)ワープロ

インド風アレンジで「わわわ!ぷろせっさ!」とシャウト。ワープロの機能を語る曲。



(4)電気掃除機

「電気クリ~ナ~♪ 電気クリ~ナ~♪」を繰り返す。このあたりからアルバムを聞くのがツラくなってきます。掃除機の音がサンプリングされているのが、なんとも物悲しい。



(5)アキハバラ・エレクトリック・ショップ

オノ●ンCM風。「あ~き~はば~ら、あきはばら~」がサビ。ボッタクられそうだ。



(6)電気

エフェクトかけまくりのロボット声で、歌詞はジン並みに解読不能。一度聴けば満足。



(7)デジタルペット・ラプソディ

電化製品が売れて「ありがとうございます」と一生懸命お礼をする。販売員、必死過ぎです。



(8)ピコ・ピコ

たま●っちの曲。「10万円超えてるたま●っち~」のフレーズが、時代を感じさせる。



(9)FAX

一瞬にして紙詰まりを起こしそうな曲。聞き手をぶっちぎりで置いてけぼりのアレンジに唖然……。



(10)電子炊飯器

若干、喜多郎風。「できたてごはんをたべたいなあ~」とか男がすごくキモく歌う。



(11)留守番でんわ(Single Ver)

シングルバージョンと書いてあるが、無謀にも程がある。おそろしいほど安っぽいアレンジは、もはや我慢大会。どこまで本気でどこまでシャレなのか、小一時間問い詰めたい。



(12)通信カラオケ

「ああ、マルチメディアじゃあ、ございませんか」と曲の中で東映ヤクザ映画的な仁義を切る。聞いてると不安になるコード進行、幸薄い演歌風のメロディ、何もかもが微妙。



(13)リ・モ・コ・ン(Re-Model)

珍しく勢いがあるレイブ風。昔ゲーセンにあったリッジレーサーのBGMがこんな感じだったが、チープな味付けが曲のドライブ感を迷走させている。壁にガンガン当たりクラッシュしそう。



(14)ワープロ(Re-Model)

「みょ~ん」「ぽわぽわぽわ」という昭和特撮がイメージした未来科学的音色が特徴。リズムは早くなったが、ノリがよくなったとは言えない。自己満足が激しくスパークしている。



(15)デ・ジ・タ・ル(Re-Model)

洋楽テクノ的で、若干ハウスっぽい。ダークな雰囲気だが、これはアリかも。この路線を行けばもう少しメジャーになれるのでは? デジタルスはやればできる子。



(16)電気屋さんへ行こうよ

なんかブツブツ歌っているが、歌詞を聞き取ろうとか思わない。ミュージシャンたるもの「俺らのテクノで世界をハックするぜ!」くらいの野心を持つべきなのでは(老婆心)。



(総評)えー、これはテクノ初心者にはまったくオススメできません。条件限定で言うなら、ファミコン~プレステ初期のゲーム音楽が好きな人なら、多少楽しめるかも?

ただ、CDだけではキツかったのですが、もしかしたらライブは面白いのかも……と思わせる何かはありました。1日ヒマで入場料2,000円以内なら、ライブを見に行く気になるかも知れません。最近の曲は聞いてないので、スタイルが変わっている可能性大ですが、このアルバムを聞いた限りではそう判断するしかありませんでした。どうやら隠れた才能はあるっぽいので、ウケ狙いに走らずにまっとうな曲作りをすればオリコンに……は、無理か。



■アキバ系カオス通信バックナンバー

第12回「アイドル雑誌で萌えあがれ!」

第11回「腐女子コミックの乙女心」

第10回「『どろろ』と『鉄コン筋クリート』」

第9回「マニアック芸人の明日はどっちだ?」

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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