2010 年2月15日から18日までスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress 2010は、世界最大の携帯電話関連のイベントである。ここ数年、携帯電話メーカー各社も本イベントに合わせて新製品を発表することが多く、今年も意欲的な製品の展示がいくつか見られた。

その中で目立っていたのが、端末名に「mini」の名称を付けた製品だ。これらの製品はただ小さいというだけではなくオリジナルの製品があり、それを小型化したものである。安易なネーミングとも思えがちだが、実はこのminiシリーズにこそ端末各メーカーの最新戦略が伺えるのだ。
Sony EricssonのXperia X10 mini

最も話題となった製品を展示していたのはSony Ericsson。ハイエンドかつスタイリッシュなAndroid端末として期待のかかる「X10」の発売を目前に控えており、日本でもNTTドコモから「SO-01B」として発売予定だ。今回発表さたのはこのX10を手のひらにすっぽり収まるコンパクトサイズに凝縮した「X10 mini」と「X10 mini pro」の2機種。

いずれもOSも同様にAndroidを採用、端末の質感も光沢ある仕上がりで高級感はそのままだ。また X10 mini proはX10でも要望の声が高いスライド式のキーボードを備えたことで文字入力も快適に行える。大画面の高性能スマートフォンがX10なら、X10 miniシリーズは手軽に利用できる、より「パーソナルな道具」と言えるだろう。3つのラインナップを揃えた「X10シリーズ」は同社のスマートフォン戦略の中心製品となりそうである。
スライドキーボードを備えたXperia X10 mini pro

またHTCも小型のWindows Phone「HD mini」を発表。こちらもオリジナル製品は「HD2」で、質感やデザインはそのままにサイズを小さくした製品である。同社はAndroidスマートフォンとして機能を引き下げ手軽な価格を実現した「Tattoo」を発売中だが、HD miniは低価格化を目指した製品ではなく、あくまでも同社のフラッグシップモデルであるHD2をそのまま小型化したもの。価格も機能もHD2より下がるものの、「安価な製品」ではなく「小型のフラッグシップモデル」という位置づけだ。

発売中の製品の小型版をリリースし、それに「mini」の名前を付与したのはNokiaの「N97」が最初だろう。スライド式QWERTYキーボードを備えたフルタッチスマートフォンである Nokia N97は市場で大きな人気となった。だが高機能化に伴い本体のサイズも若干大型化されたことも事実。このN97を従来の携帯電話サイズに小型化した製品が「N97 mini」であり、本家ともいえるN97を超える人気の製品になっている。
HTCのHD mini。オリジナルサイズを使いやすく小型化した

このように各メーカーから「mini」シリーズが出てきた背景は、スマートフォンがよりコンシューマー向けの製品として販売数が増加していることが最大の理由だろう。スマートフォンがビジネスユースや一部のハイエンド製品を好むユーザーに受け入れられていたのは一昔前の話で、海外では一般のユーザーが最初からスマートフォンを買う傾向が増えている。

特に最近では FacebookやTwitterなどを友人との連絡に利用し、携帯電話で撮影した写真はFlickrで公開、といった利用スタイルが増えている。そのためには高価で多機能なハイエンドスマートフォンではなく、ある程度機能を絞った手軽に購入できるスマートフォンでも十分実用的なわけだ。今回のSony EricssonやHTCのminiスマートフォンも、画面サイズやメモリ容量などはスペックダウンしているものの気軽に使うには必要十分なスペックだろう。

そして海外では日本のように、通信事業者が高度なサービスを提供しているケースは少ない。しかしスマートフォンを利用すれば、通信事業者のサービス開始を待たずにインターネットサービスを直接利用することができるわけだ。「このサービスは通信事業者が公式コンテンツとして開始していない、だから利用できない」といった制限が無いわけである。PCと同じ環境をそのまま携帯電話で利用するのであれば、スマートフォンを利用するのが最も簡便なのだ。

だがこれまでのスマートフォンは高度な機能を有するものの、一般的なユーザーには使い勝手は悪いものだった。特にサイズは携帯電話よりも大きめである。もちろんスマートフォンは大きなディスプレイを備えることでPCに匹敵するネイティブなWEB環境や、迫力ある映像や写真の再生環境を提供してくれる。だが「そこそこSNSサービスが利用できればよい」と考えるコンシューマー層はそこまでの利便性の高さは求めていないのが実情である。

「携帯電話より高機能な製品が欲しいが、今のスマートフォンは使いにくい」と考える一般ユーザー層にとっては、今回発表された miniスマートフォンはサイズも機能も満足できる製品になっているだろう。メーカーにとっても、また通信事業者にとっても、携帯電話利用者をスマートフォンへ移行させる効果が期待できる。

それによりARPUの増加やアプリケーションの購入といった収益を上げる方向にも結びつけることができるだろう。miniスマートフォンはこのようにスマートフォンユーザーを一般レベルにまで引き下げる効果があると同時に、一般ユーザーが買いやすい製品として今後大きなトレンドになっていくだろう。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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