Sony Ericssonが6月に発表したAndroid端末「Xperia X8」は手ごろなサイズと機能を備えたミッドレンジクラスのスマートフォンである。これまで同社の弱点であったスマートフォンラインナップの中核となる製品であり、発売は今年の秋を予定している。クリスマスシーズンには各国で目玉となる存在になるだろう。

ここ数年、ウォークマン携帯とサイバーショット携帯を中心に端末ポートフォリオを展開していた同社も今ではスマートフォンが主力製品になりつつある。今年発売され日本を含む世界的なヒット製品となっている「Xperia X10」以降、同社のスマートフォンの主力OSはAndroidとなっている。この夏にはシリーズ展開として「Xperia X10 mini」、「同mini pro」の2機種も販売が開始された。

X10 miniシリーズは手のひらサイズの小型端末で、画面解像度もQVGAとスマートフォンにしては若干非力であるが、価格も安くスマートフォンの「高価格で多機能だが、使いにくいかもしれない」というイメージを払拭させる製品だ。ユーザーインターフェースも小さい画面を使いやすくするため画面四隅にアプリケーションのショートカットを配置するなど工夫も見える。そしてメッセージやSNSの更新情報をリアルタイムで表示するTimescape機能も搭載しており、若い世代をターゲットにした製品になっている。
このX10 miniシリーズとX10の中間に位置するスマートフォンとして、同社はSymbian S60を採用した「Vivaz」シリーズをリリースしているが、VivazはXperiaとは方向性が異なる製品である。XperiaシリーズはエンターテイメントとSNSに特化した製品となっており、Xperia X8は「ハイエンドスマートフォンのX10」、「エントリースマートフォンのX10 miniシリーズ」のちょうど間に位置する製品となる。端末のデザインはXperiaシリーズを踏襲しており、SNSサービス利用を強く意識したTimesape機能ももちろん搭載している。ユーザーインターフェースもX10 miniシリーズに類似したものになってる。
Xperia X8

実は今年のスマートフォンのトレンドを見てみると、各社が力を入れているのはミッドレンジクラスのモデルである。iPhoneに代表されるハイエンド端末はたしかに大きな話題を集めているが、一方で価格の高さは否めない。もちろんSIMロックをかけパケット定額契約を結ぶことで安価に販売されてはいるものの、たとえ端末が安くとも基本料金が高いようでは一般のコンシューマー層にとっては手は出しにくい。だがミッドレンジクラスのスマートフォンであれば高い基本料金を払わなくとも、端末は十分リーズナブルな値段で入手することができるのだ。

そのため各端末メーカーはイメージアップも兼ねたハイスペックなスマートフォンを出しつつも、ボリュームゾーンを狙うミッドレンジスマートフォンにも注力しはじめているわけだ。Android OS端末に絞ってみてもSamsung Galaxy3/Galaxy 5、LG GT540、HTC Tatoo/Wildfireなど大手メーカー品のほか、HuaweiやZTE、Alcatelなどからも同じクラスの製品が今年は多数登場している。

ではXperia X8の実力はどの程度のものなのだろうか。主な機能はHVGAディスプレイ(320x480ピクセル)、3メガピクセルカメラ、600MHzプロセッサ、内蔵メモリ128MBなど。Xperia X10と比較すると単純にスペックダウンとなってはいるが、99x54x15mmの小ぶりなサイズは日常的に利用する大きさとしてはむしろ使いやすいものだろう。各社がこのクラスのスマートフォンに注力するのは、ズバリ利用者増を狙っているためだ。
X8のカメラは3メガピクセルだが必要十分のスペックだろう

さて、世界で注目されているXperia X8は、日本で発売されるのだろうか?
実はXperia X8は公式にW-CDMA 800MHzをサポートしており、この周波数帯はNTTドコモがFOMAプラスエリアとして提供している。そしてこの周波数帯を利用する通信事業者は日本のNTTドコモだけだ。このことからXperia X10は日本で発売することを当初から考えた製品であり、日本での発売の可能性は十分高い。

日本の消費者はハイスペック端末嗜好が強く、これまで販売されてきたスマートフォンもほとんどがハイエンド端末だ。だがスマートフォンの利用がビジネス用途からSNSやインターネットサービスの利用に移りつつある今、日本でも適度な機能と手ごろな価格をそなえたスマートフォンを求める層は今後増えていくだろう。Xperia X8が日本で発売されれば、日本の消費者のスマートフォンに対する意識も「高機能な高級品」から「日常的に利用できる一般製品」へと変わり、スマートフォン利用者の裾野が広がることも期待できるだろう。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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