田中宏大氏は、手描きならではのタッチを活かし、どこか温かみのある雰囲気を大切に表現している作家だ。丁寧に描写されたひとつひとつのシーンが、まるで絵本のページをめくるように流れていく。見た後にすがすがしくなれる不思議な空気感が漂うアート作品だ。

■日曜日ノ昼下ガリ

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【作品解説】
ある日曜日の昼下がり。女性が街路を歩いていると、そこかしこに緑が広がり、動物たちも歩きだす。春の訪れを告げる、軽快なイメージムービーです。

街頭ビジョンで放映するお話をいただいたので、街行く人がいつ目にしても分かるよう、画と音で印象付けようと制作した作品です。見る人に心地良さが伝わるよう、ミュージックビデオ風に仕上げました。音楽の「前奏」や「メロディ」、「サビ」といった強弱を、映像にもあてはめて演出した作品です。

■雨の足跡

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【作品解説】
とある雨の日の帰り道、少年は死んだカエルから切符を拾う。それは異次元への招待だった。その切符でバスに乗った少年は、一人の老人に声をかけられる。かすかに「寝てはいけない」と聞こえたような気がした。しかし、しばらくすると老人の忠告にもかかわらず少年は寝てしまう。目を覚ますと、自分が老人になっていることに気が付くのだが…。

■大学の上映会で刺激を受けて
高校生の頃に「もののけ姫はこうして生まれた」という番組を見て、アニメーションに興味を持ちました。その後、大学ではアニメーション学科を専攻しました。上映会で、同年代の人達がこんなに凄い作品を作っているのかと刺激を受けて、大学の課題で1年かけて制作したのが「雨の足跡」です。

■鉛筆のタッチにこだわる理由
僕の作品は手描きなのですが、ひとつひとつのシーンを鉛筆で陰影をつけてアナログ感を出すように心掛けています。そして、ちょっと不思議な世界観を作るために、実験的な演出も積極的に取り入れるようにしています。例えば「雨の足跡」では、いまにも雨の匂いが漂ってきそうな雰囲気を演出したくて、空気感や奥行き感を試行錯誤しながら制作しました。演出もなるべく静的にし、できるだけ絵のカットのつながりで物語を見せるように工夫しました。
カラフルな配色が苦手なので、どうしても自分の作品では彩度の低いトーンで統一した、手描きの画になりがちです。その代わり、どのカットもひとつひとつの画として見られるように画のクオリティにこだわって描いています。

■今後の制作活動について
作品を人に観てもらうのは恥ずかしいですが、リアクションがあると嬉しいですし、次も作ろうと意欲が湧いてきます。普段は仕事をしているので、なかなか個人作品の制作時間は限られてしまいますが、新作も進めています。次回作も手描きのアニメーションです。3Dも使用していますが、最終的には2Dの画に落とし込んで、手書き風の雰囲気を壊さないように作り上げていきたいです。

■田中宏大 氏 プロフィール
1985年生まれ。東京工芸大学アニメーション学科卒業。鉛筆による手描きタッチを活かした表現豊かなアニメーションを得意としている。影響を受けたアニメ作品は「ライアン・ラーキン」。
・「雨の足跡」BACA-JA 2006映像コンテンツ部門『入選』
・「雨の足跡」デジタルクリエーターズコンペティション2006選定作品、フォローアッププログラムの新規作品制作で「日曜の昼下がり」を制作。

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