レインボーアップススクールの受講生の中には、独自のネットワークを駆使してアプリ開発の仕事を受けているとの報告を多く聞くようになった。

自分で自由にアプリを作る作業と違って、受託開発の仕事はトラブルもつきものである。

先日、APPBANK主催のApple銀座店で「受注/発注の掟」という講演をしてきたので、みなさんにも紹介したい。

■アプリビジネスに落とし穴「JT」とは
さて、スマートフォン業界において「JT」と呼ばれているのが、何を指すことであるかご存知だろうか?

「受託(開発)」の頭文字をとったもので、今までの「受託」とは違う様相であることから、あえてこう呼んでいるのだ。

何が今までと違うのか。

簡単に言えば、安価(クライアントから見たら高価という世界ではあるが)で、納期が見ず、次のアプリの生産計画が見込めないという経済効率の悪さと、今が旬ゆえの大切な人材をそのような作業に、つぎ込んでいいのかという戦略的効率の悪さがあげられる。

ご存知のように誰でも参入できるスマートフォンアプリの世界だからこそ、ヒットを当てるのが難しい。

だからといって、手堅くお金が貰る受託に手を染めていいものなのか?

開発会社にとって、悩ましいのがこの「JT」という奴である。

「JT」は麻薬のようなスパイラルに陥りがちで、iPhoneにいちはやく取り組んだ先輩ディベロッパーは、一攫千金を夢見る自社アプリ開発をやめ、爪に火をともすような受託開発で生き残りを余儀なくされている。

そもそもi-modeビジネスは、今思えばやりやすかった。たくさんの専門産業が形成され、テンプレートビジネスと言われる、待ち受け、占い、着メロ、着うた、デコメ、きせかせ、電子書籍という形態が計画生産や計画収益を支えていた。

ひとたび当てると、その形式を量産することで下請け会社や広告会社を潤わせ、IPOのExitをめがけて、収益は再投資につぎ込まれた。

受給バランスがコントロールされた中で、まさにクライアント側には、資金とノウハウが貯まるというビジネスだった。

スマートフォンビジネスは、まったくその逆で、過当競争ゆえに、最初の開発費は抑えられ、一発当てたとしてもヒットの再現性がないことから、すでにiPhoneビジネスから勝ち逃げのカタチで撤退をするものまでいる。

クライアントにとって外部発注の罠は、納期遅れや、バージョンアップ毎のメンテナンスコストだ。
また、下請け会社にとっての受託の罠は、曖昧な仕様、妥当ではない相見積もり、完成後のやり直しなど、双方にとって、それぞれ分の悪いものとなっている。

■なぜ、スマートフォンビジネスの「JT」が悪化するのか
まずあげられるのが細分化されるプログラマーの専門スキルである。
OpenGLなどの表示系、WebKitなどのクラウド連携、CoreAudioなどの音再生、SQLiteなどのデータベース、アプリ内課金や独自サーバ連携など、多彩なスキルをクライアントはジャッジできていない点だ。そして受託側も「できる」と言いながら、それは「やればできる」であり、納期コミットをしないとことにある。

さらに、アプリという製品としての得意分野の細分化だ。
ゲーム、ツール、楽器、ビューアー、写真加工、AR、加速度やジャイロなど、スキルを製品に昇華させる得意技が、エンジニアや会社によって異なるという点だ。

何せ、アプリはiPhoneアプリだけでも30万点もある。それだけ多いアプリのバリエーションがあるのだから、業者の選定は困難を極めるのは当然なのである。

少なくともクライアントが発注先を選定するためにやれることは、
「このようなアプリを今まで3回は開発したことがあるか」と質問することぐらいである。

いざ開発をすすめるとなると、さらに困難が待っている。

トラブルを未然に防ぐためには、徹底的に競合アプリや参考になるアプリを使い倒し
その情報を下請け業者と共有し、こまめに途中経過を見るという不断の努力が必要だ。
実にくだらないと思われるかもしれないが、開発会社のメンバーを酒の席に誘い、夢を語り合うことがプロジェクトをうまくすすめたりする。こういった時間の共有が、上記のサボりがちなお互いの作業を埋めることにつながったりするからだ。

逆に受託側にとって大事なことは、専門スキルや専門カテゴリーの明示であり、専門でない仕事は、それを得意とする開発会社にまわすという、仕事のシェアだ。仕事をシェアできれば、信用できる人間から仕事を貰うこともできるようになる。あと、意外に大切なのは、有能なデザイナーや有能な音職人もネットワークに持つことだ。

アプリの売れ行きに貢献するのは、デザインや音だったりするわけで、こういった職人たちもアプリプログラミングの仕事を紹介しあったりしている。当然、自分たちと同じように、職人たちの得意分野も細分化しているので、注意しなければならない。

とにかく、よくわからない人(経験のない人)から仕事を貰ってはならないということだ。

■JTの落とし穴を回避するには
最終的にその仕事を受けるかどうかを決めるために、クライアントにこう聴こう。

「あなたはアプリを今まで20回はプロデュースしましたか?」と。

筆者がいろいろなクリエイターに聞いた確率論で言うと、20本に1本が有料で、1万本以上のセールスを出している。であれば、当てるためには、20回のプロデュース経験があるに超したことはない。

つまり、20回のプロジェクトの中で、競合やセールスの反応、レビューをかかれた経験などから、彼らにノウハウが蓄積されているからである。

受託側、発注側、双方に大切なことを3つあげるとすれば、下記のとおりだ。
・経験において嘘をつかない
・スケジュールを守る
・役割分担を明確にする

これらはビジネスの基本中の基本だと誰もが思うかもしれないが、この前提が崩れるケースが多いのが、現在のスマートフォンビジネスなのだ。

これは携帯電話ビジネスの黎明期にも通じる、ひとえに経験者が少ないビジネスの黎明期に共通したことでもある。お互いにプロになっていかなくてはならない課程の市場なのである。

アプリを世の中に出すクライアントにしても、アプリを実際開発するディベロッパーにしても、競合意識にとらわれずに、お互いをリスペクトしあえばいいのだ。消費者に、レベルの高い商品を出そうとする共通意識が、結果的に業界をも潤わすのである。

■成功への道はこうなる
狙っている分野のアプリ開発3本以上の開発スキルと、20本以上のプロデュース経験が出会ってはじめて、ランキングの神様が微笑む。

ユーザの評価を得なければ、儲かる仕事、そして継続する仕事にはならないのである。

60本のうち59本のアプリが消費者からクソアプリと言われ、すぐに忘却される中、私たちは業界内で諍いをしている暇などはない。

世界中のクリエイターたちが諍いいあっているうちに、いちはやく身の回りにヒットクリエイターを生み出すことこそ、成功への道となる。

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