NECビッグローブ 取締役執行役員常務 古関義幸氏


注目記事を振り返る「ITフラッシュバック」では、BIGLOBEのAndroid端末「Smartia」をピックアップしよう。なぜAndroidを採用したのか、どうしてサービスとハードを一体化することとなったのかを解説していく。

PCを買ってプロバイダーと契約して、インターネットに接続する。PCを買い替えれば、また最初から設定をし直す。しかし、初心者にとって、このような設定は難しい上、何か問題が発生した時に対処できない。

NECビッグローブ 取締役執行役員常務 古関義幸氏は、「PCはユーザーが買って、ユーザーが管理するため、ネットワークやサービスの設定、使い方の説明までは手が出せません。しかし、ユーザーからは設定の仕方が分からない、メールの使い方が分からない、PCを買い替えたらつながらなくなったという声が寄せられてくるのです」と説明する。

そこで黎明期からインターネットのサービスを20年近く行なってきたBIGLOBEならではのノウハウが生かされてくる。端末にサービスを入れて提供することで、ユーザーのハードルが低くなるのだ。

■1年前にモニターとして提供
1年前に、BIGLOBEは7インチタブレットのサンプルモデルを開発させていた。そのころから、このハードとサービスを一体化するコンセプトはできあがっていたのだ。いまでこそ、7インチサイズは多くの機種が登場しているが、当時は7インチなどない。どのような使われ方をするのか、製品として完成させるにはどうしたらいいかの調査のため、一般ユーザーにモニター提供し、問題点を洗い出していったのだ。
当時はAndroidの可能性が見えていなかった。ほとんど製品がなかったことも影響している。モニターとして使ってもらうことで、どのくらいAndroidが使えるのかも試していたのだ。



そして完成したNECビッグローブの7インチのAndroidタブレット「Smartia」は、NECのクラウドコミュニケーター「LifeTouch」にBIGLOBEのネットサービスを一体化させ、家に届いて箱を開けるとすぐ使えるようにしている。

たとえばアプリケーションもそう。Androidアプリケーションは数万もあるが、すべてが使えるわけではない。「キチンと使えるサービス、アプリケーションを一緒に提供することが必要なんじゃないか。そこで、そのようなサービスを取り入れた端末はNECの「LifeTouch」とは別物となるのではないか。そこで、あえて新しい名前「Smartia」を付けました」と、意欲的な製品であることをアピールしたのだ。

■だれでも使える端末に仕上げる
利便性は高いスマートフォンだが、初心者にとって使いこなすのは難しい。初心者でも簡単に利用できる用に工夫されているのだ。
ポイントは、1)手頃なサイズで横置き利用、2)サービスを使いやすくするインターフェース「Smartiaホーム」、3)ビッグローブ厳選アプリを提供する「andronavi」の3点だ。

7インチサイズタッチパネルとコンパクトで手軽に持ち運べる。さらに、約370gと350mlの缶ビールとほぼ同等なくらい軽量だ。この中に、Wi-Fi、センサー(加速度、地磁気、光)、USB(スタンダード、マイクロ)、300万画素カメラ、GPS、Blutooth、SDHC、ステレオスピーカー、8時間駆動バッテリーなどが詰め込まれている。
メールアドレスが割り当てられるため、常時電源をONにして無線にアクセスすることで、メールで送られた画像を表示するフォトフレームとしても利用できる。

Smartiaホームは、BIGLOBEのサービスと一体化している。画面左には時計、最新ニュース、占いを表示する。Wi-Fi経由でネットワークにつなげていると、ニュースなどは自動的に配信される。画面下には、ニュース、アプリ、お買い物、お出かけなどのアイコンが並べられ、BIGLOBEのサービスにワンタッチでアクセスする。ハードとサービスを一体型しているからこそなせるワザだ。

「Andronavi」は、BIGLOBEが提供するAndroidアプリマーケットで、サービス開始当初は厳選した200アプリを提供し、そのうち150は無料アプリとなっている。Androidのアプリは多すぎて、初心者にとってはどんなアプリがいいのかよく分からない。そんなユーザーにとってはとても便利に使えそうだ。もちろん、GoogleのAndroidマーケットも利用できるので、物足りないということもない。

販売はインターネットか電話での直販のみにしている。初心者にとって、このような端末は設定が難しい。直接対応することで設定が完了した端末を届けようとしている。このあたりも、使いやすさを追求するためのBIGLOBEのノウハウが生かされている。

■Android2.2へのバージョンアップは難しそう
OSはAndroid 2.1だが、2.2へのバージョンアップも検討している。しかし、現時点では技術的な課題もあるため、すぐにバージョンアップができるというわけではないとのことだ。
au「IS01」の例もあるように、ハードウェアと組み合わせて特殊なことをしていると、バージョンアップが難しい。使いやすさを重視しすぎているため、そのような事態に陥る可能性もある。

価格は4万2800円(税込)で、2011年2月28日までは「BIGLOBE高速モバイルEM」を購入と同時に申し込むと3万4800円(税込)、2011年1月31日までに「BIGLOBE 光パック Neo with フレッツ」に同時に申し込むと24カ月間継続利用を条件に1円(税込)となる。これも、初心者への普及を考えた結果だ。

■ガラパゴス端末になるか!? 広まるか!?
折しも、ソニーが電子書籍端末「Reader」を発表した。電子書籍市場は、着うた・メロディ市場に次ぐ、ゲーム市場と肩を並べるまでに成長したが、あくまで携帯電話等の汎用機器での利用がそのほとんど。電子書籍専用端末は日本国内ではことごとく惨敗してきた歴史を持つ。「Smartia」は電子書籍に特化していない点ではソニー「Reader」に対して有利だかもしれない。

「Smartia」は意欲作だが、一般に普及するかは未知数だ。さすがにNECも、一般に広がるには時間がかかると考えている。一歩間違えば、独自性を追求しすぎたガラパゴス端末となる可能性もある。ただし成功すれば、ここから新しいAndroidの利用方法が広がる端末であることは間違いなさそうだ。


NECビッグローブ(BIGLOBE)

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