文化や社会は、国により大きく異なる。島国である日本は独自の文化や社会を築いてきた反面、世界と異なる点も数多くある。アートとしての写真との向き合い方も海外と国内の違いを見ることができる一つである。

日本より世界で活躍する写真家も多く、海外を拠点として活動している人もいる。12月15日(木)から1月10日(月)まで、銀座リコーフォトギャラリー「RING CUBE」9F Photo SpaceでNEXT GENERATIONの写真展「幻想」を開催する堀内 球代さんもその一人だ。
「twilight」


■ピアノ教師から写真家へ
堀内 球代さんは、横浜フェリス女学院大学音楽学部卒業と同時に渡仏し、パリの音楽学校エコール・ノルマル・ミュージック・ド・パリに在籍。ピアノ教師として6年間パリで生活した経験をもつ。その後、東京とパリを行き来しながら、写真と詩作を中心とした活動を開始したという。2001年の結婚を機にイタリアのヴェネチアに移り、イタリアを拠点として作家活動を続けている。

■イタリアの写真アートはインスタレーションも
堀内さんが、イタリアを拠点としている理由は、結婚されたご主人がイタリア人だったとのことで、現在は8歳の男の子と6歳の女の子の母でもある。

イタリアと日本、アートとしての写真について伺ってみた。
「イタリアでは、写真は絵画と共に、一つのアートとしての受け止め方をされています。最近はインスタレーションという分野もとても盛んです。その中でアーティスト達は、今までのクラシックな写真展示から離れ、いろんなマテリアルやプリントを使ったり、インスタレーションと写真を融合した作品を製作したりと、独自のスタイルを作り出そうと挑戦しているのがよく見かけられます。

日本ではまだ写真は「写真」で、一般レベルではアート作品的受け取り方はあまりされてないかもしれませんが、日本でも写真はアートの世界の中で大きなステップを踏んでいるカテゴリーじゃないでしょうか。素晴らしい有能な写真家の方もたくさんいらっしゃると思います。」

■『詩』と『音楽』が写真の中で響き合う
堀内さんと写真の関係について伺ってみた。堀内さんにとって、写真は「インスピレーションを通して来る直感を『フレーム』の中に収めた一遍の『詩』」だという。

「『目に見える物質的なもの』に属した映像というよりも、その対象となる主題の単なる『場所』と『現実』を超えた視点を写真という手段を使って拾い上げるというのが、私の姿勢であり、テーマであり、探究でもあります。

現実の目に見えるものの裏にあるだろう何か、全ての瞬間が早足で駆けていく中、その主題が見せてくれる一瞬の美しさ、はかなさ、強さ、そして偉大さを深く見据え、そこに語りかけられる沈黙の言葉を映像にトランスフォームする試みもまた、大きな一つのテーマです。」
「the day we met」と「rendez-vous」

堀内さんの作品には、奥行きのある空間のなかに響くものを感じるのだが、音楽も学んでいていたことが作品に大きく影響しているのかもしれない。そのことについては、
「私の中で、写真と音楽のバックに流れる感性は同じものだと言っていいと思います。
『詩』は言葉の音楽でもありますし、大学時代から絵画、写真、映画にとても魅力を見い出していましたので、実際に写真機を手にした時から自然に抵抗なく来たのは、写真に求められる瞬時性や、主題に対しての姿勢、構図バランス等、音楽というベースがあったからこそかもしれません。」という。

■写真展「幻想」について
「playground」と「summer sun」

「今回、日本で初めて私の写真作品を御覧になられる方にも、『幻想』というコンセプトの中で、私の写真の大まかなラインを見て頂ける10点の作品かと思います。

一つ一つの作品の撮影場所をあえて明記することを避けて、(いつも必ず作品にはそうですが)絵画と同じように展示作品には必ずタイトルをつけておりますので、その言葉と映像の間にある対話がまた、鑑賞して頂く方と私とのコミュニケーションの軸となる役割となれば、とても嬉しく思います。」


堀内さんは、このあと2011年にミラノで個展の予定があるという。
「今後、イタリアが拠点ということをさらに生かして、イタリア国内、さらにヨーロッパ内でのワークショップやコンクールの参加も積極的にやっていきたい」と語る。

これからのグローバルな活動が楽しみな、写真家である。


堀内 球代 プロフィール
1971年3月生まれ。横浜フェリス女学院大学音楽学部卒業。
パリの音楽学校エコール・ノルマル・ミュージック・ド・パリに在籍、ソルボンヌ大学のフランス語科を経た後、ピアノ教師として6年パリに生活。その後、東京に居を移しながらも、パリを行き来しながら、常にヴィジョンにあった写真と詩作を中心とした活動を始める。
2001 年 結婚を機にイタリアに移住。現在イタリア、ヴェネチア県在住。
イタリアを拠点に展覧会、個展の写真活動を続けている。


2001年 神戸インターナショナルフォトグラファー、IPA国際写真家協会展に入選。
2004年 イタリア・ヴェネチア県サンタ マリア デイ サーラにおける
    ヴィジュアルアート・ビエンナーレ国際コンクールの写真部門 大賞受賞。
2004年 イタリア・ピザ県カステリーナ マリッティマにおける
    ヴィジュアルアート「EM’ARTE2004」国際コンクールの芸術写真部門 大賞受賞。

展覧会
2001年 神戸県立美術館IPA国際写真家協会展
2002年 ポルトグルアーロ、ヴェネチア、イタリア 市立コンテンポラリー
    アートギャラリー Orchestrazione n.10
2003年 ポルトグルアーロ、ヴェネチア、イタリア市立コンテンポラリー
    アートギャラリーOrchestrazione n.11
2004年 エヘア デ ロス カバエロス、 サラゴッサ、スペイン市立アートギャラリー
2004年 カステリーナ マリッティマ、リヴォルノ 国際ビジュアルアート
2004年 東京原宿 つきぐもアートギャラリー
2005年 パドヴァ、ヴェネチア、イタリア ヴィッラ ファルセッティ
国内ビエンナーレ ヴィジュアルアート
2006年 熊本県立近代美術館
2007年 ポルデノーネ、フリウリ、イタリア ヴィッラ ガルヴァーニ ヴァスタ ガンマ

個展
2003年 ポルトグルアーロ、ヴェネチア、イタリア ギャラリー“アイポルティチ”
2004年 ポルトグルアーロ、ヴェネチア、イタリア 市立コンテンポラリーアートギャラリー
2005年 チェッチナ、リヴォルノ、イタリア 市立美術館
2009年 コンコルディア サジッタリア、ヴェネチア、イタリア ギャラリー“カフェテリア”2010年 ポルトグルアーロ、ヴェネチア、イタリア ギャラリー“アイポルティチ”
2005年-2009年 東京田園調布フランス料理店カントンにおいて常設展示 


リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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