地デジレコーダになったり、3Dゲームに対応したり、常に進化を遂げてきたプレイステーション3に習うように、プレイステーションポータブル(PSP)も次のステップを踏み出した。

ソニーはいままでも、コンパクトな「PSP go」を投入するなどテコ入れを図ってきたが、携帯ゲーム機市場では任天堂の「ニンテンドーDS」が先頭を走り、iPhoneをはじめとしたスマートフォンが追い上げをかけてきた。PSPは真の意味での変化が求められるようになってきたのだ。

そこで、注目ニュースを振り返るITフラッシュバックでは、ソニー・コンピュータエンタテインメントが発表した「PSP」の後継機「NGP(Next Generation Portable)」を取り上げよう。



■リアルとデータが新しい体験を生む
SCE代表取締役社長兼グループCEO 平井一夫氏は2011年1月27日、ザ・プリンスパークタワー東京で開催された「PlayStation Meeting 2011」において、「現実はデータ化される。現実とデータが結びつけば、新しい現実を体験し、それを自分自身で動かすことが可能になる。(5年前、SCEは)仮想の世界が現実の世界に影響を与えるコンピューターエンターテインメントの世界を目指していた」と、同社のゲーム事業への取り組みを力強く語った。

「実現していないものもありますが、その多くはみなさんの生活の中にあるのではないかと思います」と、初代PlayStationから始まり、PlayStation3でリビングルームを中心にコンピューターエンターテインメントの世界を実現してきた経緯を振り返った。

■スマートフォンへ進出する理由
「ゲームを外に持ち出すときに変化する楽しさ。どこで遊ぶか、いつ遊ぶかで体験の価値が変わる。手の中で繰り広げられるゲームがリアルの世界に影響する感覚を生み、よりエンターテインメント性が増す。」(SCE 平井氏)と、携帯ゲームに対する考えを述べた。

引き続き、携帯型ゲーム機を取り巻く環境について、「PSPを発売した当時から様変わりしています。」と、スマートフォンやタブレットといった多機能ポータブルデバイスの進出が目覚しく、無視できない規模になってきたことを明らかにした。

この状況でPlayStationの世界を広げるために何ができるか。

その答えのひとつが「PlayStation Suite」なのだ。年内の開始を目指している「PlayStation Suite」では、PlayStationクオリティのゲームをPSP以外の携帯端末で遊ぶことができる。対応機種はAndroid端末で、エミュレーションでプレイできるようにする。

ソニーは、世界で初めて「Google TV」を発表したようにGoogleとの連携は強い。AndroidはLinuxをベースにし、PlayStationもいままで積極的にLinuxの世界と連携をとってきた(現在は対応していないが当初PS3はLinuxをインストールできたうえ、PS2はLinuxキットが限定発売されていた)。こじつけのところもあるが、ソニーは日本メーカーとして先行してAndroidスマートフォンを投入するぐらい、Androidとの連携も強い。発表会では、この「PlayStation Suite」を、「NGP」に先駆け発表した。それほど重要視しているのだ。

すでに、Android向けに昔のゲームを提供しているメーカーはある。つまり、昔のゲームを提供すること自体は、そんなに驚くことではない。PS3向けの最新ゲームではなく初代PlayStationのゲームが対象となるということなので、なおさらだ。そう、ポイントはSCEから提供することだろう。

Androidマーケットやドコモマーケットではなく、SCEから提供することでPlayStationの世界を広げることが目的となっているのだ。また、メーカーやクリエイターに対し、これから伸びていくAndroidを取り込むことで、ユーザーへのリーチを広げていくこともアピールしているように思えた。

■NGPがスゴイことになっている
「PSPの後継ゲーム機『NGP』はまったく新しいエンターテインメントの世界を実現します」
そう語る平井氏は、「NGP」を支えるのが5つのコンセプトを明らかにした。それが、ユーザーのさまざまな振る舞いを入力できるようにした新UI、ゲームを中心としたエンターテインメント体験を実現するソーシャルコネクティビティ、位置情報を利用したロケーションベースエンターテインメント、ARをさらに進化させた現実と仮想の世界の融合、PlayStation Suiteとの連携だ。

NGPでは、究極のポータブルエンタテインメント体験をめざし、PSPの4倍の解像度を誇る5インチ有機EL、ディスプレイと背面の両方にタッチパッドを搭載し、4コアを持つARMベースのCPU「Cortex-A9」を小さなコンパクトボディに収め、センサーやジャイロ技術、GPSを惜しみなく投入している。

さらに、前面と背面にゲームプレイに最適なカメラを搭載し最新の画像や動画入力を実現したのだ。ポータブルで初めてふたつのアナログスティックを持ち、快適なゲームプレイや操作性を提供している。ゲームメディアはフラッシュメモリーベースのNGP専用カードで、ゲームデータの保存だけでなく将来の大容量化にも対応している。通信機能は、従来のPSPでも対応していたWi-Fiに加えて、3Gネットワーク機能も装備している。

会場では、カプコンが「モンスターハンター」、セガが「竜が如く」KONAMIが「メタルギアソリッド」などをデモンストレーションした。PS3のデータから数週間で移植でき、一部コマ落ちはあるものの、リアルタイム処理を実現したことからも「NGP」の驚愕の処理能力が分かる。

かなり高性能で機能も盛りだくさん。さすがPlayStationプラットフォームの考え方を踏襲していると言えそうだ。一方で、ニンテンドーDSは解像度も処理能力も高くない。3DSになり、3Dといういままでにないフィーチャーが加わったが、性能面では現在のスマートフォンなどと比べても決して高いとは言えない。しかし、いままでにないインターフェースが受け入れられてきたのだ。

使いこなせるかどうかわからないほど先進的な機能がユーザーを引き付けるわけではないことを、PS3の体験から知っているSCEが、このような最先端の携帯ゲーム機を投入するということは、もちろん勝算があってのことだろう。
これだけの処理能力を持ち、主要なメーカーが参入することが分かっている。

あとは価格にかかってきそうだ。ニンテンドー3DSは、ニンテンドーDSに比べて1万円も高く、そこで躊躇しているユーザーもいる。PSP goは価格戦略で躓いたように思える。年末に登場するときに、この高性能な「NGP」をどれだけ安く提供できるのか。いまから楽しみだ。

ソニー・コンピュータエンタテインメント

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