-ブログメディアそしてソーシャルへTechWave湯川鶴章×Market Hack広瀬隆雄 Part-3-

ライブドアのブログメディア「TechWave」と「Market Hack」の名物編集長二人の、2011年1月某日、Skypeを使ったネット対談が実現した。

インターネット黎明期から活動を続けている二人が、ブログメディアに参加した経緯からソーシャル時代を迎えたネットの今を、歯に衣を着せず語り合った。

■読者にリーチできるセミナービジネスモデルという選択肢
広瀬:みんなが考えているほどブログで喰っていく、あるいは、ソーシャルメディアで喰っていくのは楽じゃないですよね。

湯川:ある程度マスを取らないと今の広告の仕組みだとビジネスとしてブログは成立しないですよね。ホリエモンほどマスを取り込めるならやっていけるだろうけど。

TechWaveの潜在的な読者層はおそらく一万人もいないのではないかと思っています。今の日本の社会って、まだ工業化社会の段階から情報化社会の段階へ移行しきれていない。でもこれからもちろん、情報化社会への移行が進むだろうし、そうなれば潜在的読者層は拡大すると思っています。将来に大きな市場が待っていると思っているからこそやっているんですが、残念ながら現状ではまだ潜在的読者層はそれほど大きくない。なので広告ビジネスが成立しにくい。

アクセス解析すると読者の99%ぐらいが東京周辺に住んでいるんですよ。地方にはほとんどいないんですよね。そうなると東京でイベントをやるのが現状では最も効果的なマネタイズ手法だなって思います。

広瀬:なるほどね。基本的には私もそれに非常に近いです。

湯川:セミナーとかやらないんですか?
広瀬:やってますよ。証券会社のセミナーとか結構多いですよ。週一回ぐらいありますよ。

湯川:それは、サンフランシスコでやっているのですか?
広瀬:今日やっているような、形で

湯川:Skypeで?
広瀬:そうですね。直伝というWebセミナーの会社があるんですけど、そこのシステムなどを使って証券会社の主催でいろいろ投資セミナーみたいなことやるんですよ。

湯川:僕は自分たちでセミナー作っちゃうんです。メディアを持っているので、告知すれば人は集まるし。自分の主張したいことを主張したいときに話できる。その情報の価値を理解してくれる人に対して話できる。自分でセミナーを企画するのが一番いいと思っています。ほかの会社が主催するセミナーとかだと、そんなわけにはいかない。地方のロータリークラブのような地場産業の高齢の経営者が集まるような会合で「インターネットとは何か」みたいな講演してくださいって頼まれても・・・。僕自身もそんな基礎的なテーマで話しても楽しくないし、聞きにくる人も楽しくないと思うんですよ。だれもハッピーじゃない。ですから最近は講演依頼をほとんど断っています。


広瀬:そのセミナーは場所を借りてやるんですよね。いわゆるネットセミナーではないですよね。
湯川:そうです。ネットセミナーではありません。

広瀬:私はサンフランシスコに住んでいますので、リアルはできないのでネットセミナーになってしまうんです。
湯川:ネットセミナーでもやっていけるのはすごいですよね

広瀬:そうですね。全然準備にたとえば場所を用意したり、手配の準備はかからないので、その点、非常に楽ですよね。スケーラビリティというか参加者が何人なってもよいのでそういう意味でも良いですよね。


■ソーシャルメディアとネット広告ビジネス
湯川:このままだとライブドアへの苦情ばかりになっちゃいますね(笑)こんな話でいいんですかね、この対談(笑)。

広瀬:せっかくなんでソーシャルメディアとの絡みで我々がやっていることを話を。TwitterとかFacebookのソーシャルメディアをマーケティングのツールだと考えている人が多いですよね。

湯川:多いですよね。

広瀬:つまり自分のほうから出ていくツールと考えている人が多いと思うですけど
僕は、それは違うのではないかなっと思っているんです。

すでに自分が持っているコミュニティとか、すでに自分が持っているブランドとかをコミュニティビルディング、交流するためのものであって、TVのCMみたいに自分から出て行ってファンを取るタイプのものではないのではないかと思うんですよね。

湯川:そうだと思います。

広瀬:もし、そういう切り口でソーシャルメディアを考えているのではあれば、それってイントリューシブというかソーシャルメディアを使っている人たちからして歓迎せざる存在だと思っちゃうんですよ。

湯川:歓迎されないでしょうね。
実は独立してすぐのころは、ソーシャルメディアコンサルタントとしてやっていこうと思ったことがあるんです。それで結構、相談に来られる方もいたんですが、相談内容がソーシャルメディアを使ってマスメディアのマーケティングのような効果を得るにはどうすればいいんでしょうかね?とかいうものがほとんど。

僕は「コマーシャルメッセージの拡散より、顧客の声を聞くことが大事なんですよ」と言うんです。そうすると「分かりました。で、どうすればコマーシャルメッセージを拡散できるでしょうか」って、全然分かってない。

なので、「できません」と一言。そのためのツールじゃないですって。

それじゃコンサルティングにならないんです。

最近はオカッパ本田が、ソーシャルメディアコンサルタントとして仕事がいっぱいくるようになったんですが、彼はやさしいので、懇切丁寧に対応しています。えらいです。僕にはそれができないんです。

広瀬:ソーシャルメディアで唯一、そういった形で能動的に取りに行くタイプのサービスはグルーポンになると思うのですけど。

グルーポンの場合、そういうアクティビティをキャンペーンという形容の仕方をしています。実際に販売促進のキャンペーンなんですけど、キャンペーンという発想は、ソーシャルメディアで使うときはすっごく気を付けないと危険な発想だと思うです。おせち事件でずっこけましたけど、あれなんかは、焼畑農業的なキャンペーンがいかにダメージをもたらすかということの一つ良い例だと思うですよ。

FacebookにしてもTwitterにしても、あるいはブログメディアにしても、心がけないといけないことはキャンペーンをやるという発想より、一つのコミュニティというかムーブメントに対する発想で、押すのではなく、引く発想でやらなければいけないと思うのです。

湯川さんのシリコンバレーツアーじゃないですけど、読者の方からリクエストが出てくる「今度、西海岸に行きたいんです」それをビジネスにしていけばいいと思うですよ。

彼らは我々が気づかないような切迫感というかアージェンシィーを持って、こういうことしたい、あーいうことしたい、これが知りたいっていうニーズや欲求を持っていますから、それを充足させていけば、クリック単価いくらとかそういう商売よりマージンの高いビジネスをできるのではないかと僕なんか思うんです。

湯川:我々、ソーシャルメディアの中のプレイヤーとしてはそういうビジネスだと思うんです。ただライブドアはどうするのかなと。まあ僕が心配することではないと思うのですが。キーワード広告をわれわれが目指さないとすれば、ライブドアはビジネスモデルをどう変えていくんだろうなぁっと。僕が心配してもしかたないですけどそんなこと思っているんですよね。


広瀬:それは、いくつかの切り口があると思っています。
例えばMarketHackやTechWaveの読者はそれほど多くないんですけど、非常に濃いです。日経新聞の読者よりもはるかに濃いんですよ。そういう濃いメディアが持つ発信力、あるいは影響力は単純に日経新聞のもつ発行部数が何万部とは違う影響力を持ちうるし、そういうつもりでブログメディアを運用する必要があると思うですよね。

僕がやってみたいのは、既存のメディアを読者数やPVで崩すのではなくて、コミュニティの濃さでどのくらい突き崩すことができるのか、一回ぶつけてみる必要があると思うです。

そういう意味ではターゲットをどこに置くかというと、あきらかに既存のメディア、僕は打倒ブルームバーグといっているのですが、ブルームバームにとって何か脅威になるようなことをやってみたい。そういう気概を持たないといけないと思うです。

失敗したら失敗したときに次のこと考えればいいですよ。
それぐらい太いというか、大胆というか、無謀なマインドセット持ってないと、小さく固まって終わっちゃうと思うです。

個人ブランド、個人メディアの最大のリスクというのは、自分の殻に合わせてビジネスモデルを完結させちゃう。本当であればもっと大きく育めたかもしれないものがこじんまりと終らさせちゃう。

我々はライブドアにチャンスをもらった。何かをやらなけばならない。討ち死にしても最低トライしてから白旗あげないとライブドアに対して申し訳ないなぁと僕は思いますよ。

だから、我々がライブドアのビジネスモデルに対して心配してあげるようなそういうレベルでは全然ないじゃないので、もっと、全身にぶつからなければならないと。


■打倒ブルームバーグは、既存メディアの裏をつく
湯川:具体的にはどのように打倒ブルームバーグを考えておられます?

広瀬:それは難しいことなんですけど・・・、あのう・・・じゃあ、具体的に言いましょうか。

既存メディアの編集の徹底的に逆をつく、既存メディアのコンプライアンスとか品質管理の逆をつく。ということです。

最近の話題で言えば、エジプトで反政府デモがあって、それでオスニム・ムバラク大統領がやめろやめろと言われてますけど、ムバラクの息子さんガマルを次期大統領にしたがっているわけですよね。おとうちゃんは。でもガマルはイギリスのどっかのタブドロイド誌が出国したと言っているんです。

そういうことって日経新聞や朝日新聞では書けないと思うのですよ。なぜかというとメディアとしての品質、コンプライアンスからダブルチェックしないといけないわけですよ。

でも僕がやっているのはブログであって僕は単なるブロガーであって、そういうクオリティコントロールはするべきではないし。また投資家がね。ガマル出国したのしてないのと知りたいというそういうニーズがあれば、”噂”としては出国したと伝えられていることを活字にしちゃっていいと思うのですよ。

マーケット関係の話になって恐縮なんですけども、最近FXやCFDとか帰宅後トレーダーということで夜トレードする人が多いんですよ。だけど、アメリカの経済指標が発表になるときに日本メディア、日経新聞やYahoo!などの高い賃金を払ってるところはリアルタイムで情報を流せないんですよ。

新聞には締切があって何時までに原稿入れたら翌日仕上がってくる、そういうニュースのサイクルの裏を徹底的につく。

湯川:そういう意味ではもう勝っているのでは?すでにそういう視点ではかっているのではないですか

広瀬:それは続けていれば当然気づくと思うんですよ。広瀬さんのブログって品質管理むちゃくちゃだけど、自分が知りたいということがあると。

湯川:なるほど。話はつきませんが、今回は、このへんでしめましょうか。
広瀬:そうですね。また機会があれば、よろしくお願いします。

湯川:本日は、おつかれさまでした。ありがとうございます。
広瀬:ありがとうございました。

【対談 TechWave湯川×Market Hack広瀬】
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