ガラパゴスケータイ(フィーチャーフォン)一色であった日本の各通信事業者の新製品発表会も、今ではスマートフォンが真っ先に紹介される時代になってきた。
フィーチャーフォンも新製品が定期的に発表されてはいるが、主役の座はスマートフォンにすっかり奪われてしまっている状況だ。日本のメーカーがお得意としていた事業者の新サービスに対応して新製品を投入するというビジネスモデルも完全に崩れた格好だ。
さらに各社から発表されるスマートフォンは、大半が海外メーカー製の製品で埋め尽くされている。
先日、auが発表したスマートフォンは台湾HTCの「htc EVO WiMAX ISW11HT」で、同社のスマートフォンラインナップの中では上位のモデルとなる。おサイフやワンセグなどの国産技術には非対応なことからこの製品をハイエンドと見ない向きもあるが、WiMAXと3Gを両用できるスマートフォンとしては唯一の製品であり、高速なネットワーク環境を求めている消費者には、これほど最適な一台はないのだ。このようにWiMAXとのハイブリッド端末では海外メーカーが日本メーカーの技術を既に抜き去ってしまっているのである。
これがタブレット製品となるともっと顕著で、完全に海外メーカー製品の独壇場となっている。各通信事業者のタブレット製品はAppleやSamsung電子、LG電子そしてMotorolaが続々と製品を投入、または投入予定であり、HTCも市場に参入する予定だ。日本勢ではシャープが孤軍奮闘しているものの、電子書籍の利用をメインユースに置いていることもあり、WEBやアプリケーション利用を主体とするほかのタブレットとは土俵の違う製品になっている。
2011年1月にアメリカで開催されたCES、そして2月にスペインで開催されたMobile World Congressでは海外メーカーから多数のスマートフォンやタブレット製品が相次いで発表された。
それらの製品ラインナップを見てみるとハイエンドだけではなくミッドレンジクラスの製品も着実に増えてきている。HTCのFacebook携帯のように、専用サービスに特化したスマートフォンも登場するなど、スマートフォンはもはや一般消費者が使う製品として各社がバリーション豊かな製品の開発を行うに至っているのである。
海外メーカーがこぞってスマートフォンの開発に注力している中、日本メーカーもNECやPanasonic、富士通がようやくスマートフォンでの海外進出を図ろうと画策中だ。しかし、携帯電話で過去に失敗した日本メーカー各社にとっては、台湾HTCの「htc EVO WiMAX ISW11HT」で
一昔前、日本の携帯電話の機能は世界でも最高のものと言われていた。特にコンテンツサービスの利用を前提とした大画面・高解像度のディスプレイを搭載した製品は日本でしか見られないものだったからだ。また、カメラ画質の高さも日本メーカーが誇る部分だった。
だが、今では海外市場でハイエンドの製品を求める消費者はスマートフォンを使って自在にWEBサービスを利用しており、画面の解像度もVGAを超える製品もすでに一般的となっている。もはや海外では、単体の機能だけが高いフィーチャーフォンへの興味はもたれていない。
つまり、カメラがいい、画面が広い、ということよりも「GoogleやFacebookが使いやすい」「アプリケーションを自由にインストールできて、より便利に使える」ことのほうが重要なのだ。
さらに問われているのが、現在の日本メーカーのスマートフォンは、果たして本当に高機能だろうか?ということだ。
日本ではワンセグやおサイフ機能搭載を売りにしているが、海外ではそもそもそのどちらもサービスされている国が少なく、いかにワンセグやおサイフ機能に先進性があろうとも使えない機能であれば不要なものに過ぎないのだ。またカメラの画質がどんなに高くとも、既存のスマートフォンはネットや移動中に利用するのに必要十分な画質を備えている。
要するに無駄に高い機能には、もはや誰も見向きもしないのだ。そして実際の操作を快適にするデュアルコアプロセッサの搭載などは、海外メーカーが日本メーカーに先駆けているのが現状だ。
Samsung電子やHTCはハイエンドからミッドレンジまで隙間なく製品を提供しているし、HuaweiやZTEは事業者向けのOEM品を提供することで安価な製品を続々と市場に投入している。大手メーカーの製品はブランド力も強く、製品価格を高めに設定しても消費者はこぞって購入してくれる好循環を作り出している。
このような状況の中、日本メーカーのスマートフォンが海外の消費者に受け入れられる余地は残っているのだろうか?
例えばSamsung電子はGalaxyシリーズだけでも10機種近い製品ラインナップを揃えている(タブレットやWi-Fiモデルを含む)。LG電子やHTCも常に5機種前後のスマートフォンを販売している。
つまり、スマートフォン市場は、すでに1機種だけを提供したとしても、全ての消費者をカバーすることはできないという現実ができあがっているのだ。スマートフォン市場で勝ち抜くためには複数の製品を消費者に提供しなくてはならないのである。もはや世界市場でブランド力を失っている日本メーカーが、1機種だけを市場に投入したとしても消費者からの注目を集めるのは至難の業だ。ましてや日本で各社がつけている携帯電話のブランド…REGZAやGalapagos…は、世界市場でブランドと呼ぶには認知度が低すぎる。
Mobile World Congress 2011のドコモブースでは、日本メーカーの端末の横に「Japan Quality」という表示がされていた。すなわち機能ではなく高い品質をアピールしていたのである。日本メーカーのスマートフォンは高機能、そう思う海外の消費者に思わせることも簡単ではないし、高機能なスマートフォンはすでに多くのメーカーが手がけている。
強力なライバル同士が激しい競争を繰り広げている海外のスマートフォン市場で、今後日本メーカーがどうやって参入していくのか見守っていきたい。
山根康宏
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HTCは北米向けにLTE対応のスマートフォンもすでに商品化している |
これがタブレット製品となるともっと顕著で、完全に海外メーカー製品の独壇場となっている。各通信事業者のタブレット製品はAppleやSamsung電子、LG電子そしてMotorolaが続々と製品を投入、または投入予定であり、HTCも市場に参入する予定だ。日本勢ではシャープが孤軍奮闘しているものの、電子書籍の利用をメインユースに置いていることもあり、WEBやアプリケーション利用を主体とするほかのタブレットとは土俵の違う製品になっている。
2011年1月にアメリカで開催されたCES、そして2月にスペインで開催されたMobile World Congressでは海外メーカーから多数のスマートフォンやタブレット製品が相次いで発表された。
それらの製品ラインナップを見てみるとハイエンドだけではなくミッドレンジクラスの製品も着実に増えてきている。HTCのFacebook携帯のように、専用サービスに特化したスマートフォンも登場するなど、スマートフォンはもはや一般消費者が使う製品として各社がバリーション豊かな製品の開発を行うに至っているのである。
LG電子の最新スマートフォンは世界初のデュアルコア、デュアルチャンネル、デュアルメモリーアクセスを搭載 |
海外メーカーがこぞってスマートフォンの開発に注力している中、日本メーカーもNECやPanasonic、富士通がようやくスマートフォンでの海外進出を図ろうと画策中だ。しかし、携帯電話で過去に失敗した日本メーカー各社にとっては、台湾HTCの「htc EVO WiMAX ISW11HT」で
一昔前、日本の携帯電話の機能は世界でも最高のものと言われていた。特にコンテンツサービスの利用を前提とした大画面・高解像度のディスプレイを搭載した製品は日本でしか見られないものだったからだ。また、カメラ画質の高さも日本メーカーが誇る部分だった。
だが、今では海外市場でハイエンドの製品を求める消費者はスマートフォンを使って自在にWEBサービスを利用しており、画面の解像度もVGAを超える製品もすでに一般的となっている。もはや海外では、単体の機能だけが高いフィーチャーフォンへの興味はもたれていない。
つまり、カメラがいい、画面が広い、ということよりも「GoogleやFacebookが使いやすい」「アプリケーションを自由にインストールできて、より便利に使える」ことのほうが重要なのだ。
さらに問われているのが、現在の日本メーカーのスマートフォンは、果たして本当に高機能だろうか?ということだ。
日本ではワンセグやおサイフ機能搭載を売りにしているが、海外ではそもそもそのどちらもサービスされている国が少なく、いかにワンセグやおサイフ機能に先進性があろうとも使えない機能であれば不要なものに過ぎないのだ。またカメラの画質がどんなに高くとも、既存のスマートフォンはネットや移動中に利用するのに必要十分な画質を備えている。
要するに無駄に高い機能には、もはや誰も見向きもしないのだ。そして実際の操作を快適にするデュアルコアプロセッサの搭載などは、海外メーカーが日本メーカーに先駆けているのが現状だ。
Samsung電子やHTCはハイエンドからミッドレンジまで隙間なく製品を提供しているし、HuaweiやZTEは事業者向けのOEM品を提供することで安価な製品を続々と市場に投入している。大手メーカーの製品はブランド力も強く、製品価格を高めに設定しても消費者はこぞって購入してくれる好循環を作り出している。
Samsung電子の製品発表会は海外でも多くの注目を集める。製品ラインナップの厚さが強みだ |
このような状況の中、日本メーカーのスマートフォンが海外の消費者に受け入れられる余地は残っているのだろうか?
例えばSamsung電子はGalaxyシリーズだけでも10機種近い製品ラインナップを揃えている(タブレットやWi-Fiモデルを含む)。LG電子やHTCも常に5機種前後のスマートフォンを販売している。
つまり、スマートフォン市場は、すでに1機種だけを提供したとしても、全ての消費者をカバーすることはできないという現実ができあがっているのだ。スマートフォン市場で勝ち抜くためには複数の製品を消費者に提供しなくてはならないのである。もはや世界市場でブランド力を失っている日本メーカーが、1機種だけを市場に投入したとしても消費者からの注目を集めるのは至難の業だ。ましてや日本で各社がつけている携帯電話のブランド…REGZAやGalapagos…は、世界市場でブランドと呼ぶには認知度が低すぎる。
Mobile World Congress 2011のドコモブースでは、日本メーカーの端末の横に「Japan Quality」という表示がされていた。すなわち機能ではなく高い品質をアピールしていたのである。日本メーカーのスマートフォンは高機能、そう思う海外の消費者に思わせることも簡単ではないし、高機能なスマートフォンはすでに多くのメーカーが手がけている。
強力なライバル同士が激しい競争を繰り広げている海外のスマートフォン市場で、今後日本メーカーがどうやって参入していくのか見守っていきたい。
山根康宏
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