Samsungがタブレット製品のラインナップ強化を進めている。2011年2月に10.1インチディスプレイモデルを発表したのに続き、わずか1ヵ月後の3月には8.9インチモデルを追加しタブレット製品を3種類に増やしている。また10.1インチモデルは1ヶ月で早くも改良され、世界最薄の8.6mm厚タブレットとして全世界で発売される予定だ。
Samsungの最初のタブレット端末「Galxy Tab」は7インチのディスプレイを搭載した製品で2010年の9月に発売された。タブレット端末ブームの火付け役となったAppleの「iPad」のディスプレイサイズが9.7インチであるのに対し、同社はよりコンパクトな7インチを選択した。この動きに対し、AppleのCEO、スティーブ・ジョブズ氏は「7インチは中途半端」と一蹴。現時点では確かに他社のタブレットはiPadの牙城を崩すほどの勢力にはなっていない。
だが一方では7インチこそが日常的に利用できるサイズと考える消費者も増えている。Amazonの電子書籍端末「Kindle」の大きさが7インチタブレットに近似しているように、この本体サイズはハンドバッグやスーツの内ポケットにも入る。もちろん大きな画面で迫力ある動画再生をしたり、カラフルな電子雑誌を読みたいと考える層は10インチを選ぶだろうが、ちょっとした空き時間に気軽に読書したいと考える層には7インチも選択肢の一つになるはずだ。
そもそもスマートフォンにしてもノートPCにしても、消費者の利用ニーズに応じて様々なサイズのものが販売されている。それと同様に、どの画面サイズがタブレットとして最適なのかは消費者の利用形態によって異なるはずである。大きいディスプレイは確かにリッチな体験を与えることができるが、消費者全てがそれを求めているわけではない。また車社会のアメリカでは大型の端末も日常的に持ち運びが容易だろうが、徒歩やバイク、電車を使うアジアではより小さいサイズが好まれる傾向にある。
では市場ではどの程度7インチタブレットが売れているのだろうか。Galaxy Tabは販売開始後4ヶ月で約200万台だったという。iPadが販売直後の20日間で300万台を売った数と比べれば、その数差は歴然としているようだ。とはいえ立ち上がったばかりのタブレット市場でこの数字を直接比較することはあまり意味がないだろう。
すでにiPhoneで完成されたエコシステムをそのままタブレットにも提供できるiPadは売れて然りであるだろうし、タブレットとしては最適化されているとはいえないスマートフォンOSを搭載したGalaxy Tabはまだまだ発展途上の製品とも言え、この数でもむしろ十分健闘していると考えるべきではないだろうか。
今後はタブレットの利用者が増えていくことだろうが、iPadが大きく売れ行きを伸ばすだけではなく、より広い層の消費者がタブレットを求めることから多様化したディスプレイサイズの製品も次々に登場しそれらも販売数を増やしていくであろう。
もちろんSamsungが立て続けにタブレット製品を投入する理由の1つにはiPadへの対抗があることは明白だ。10.1インチモデルはiPadと真っ向から競争する製品である。しかもアメリカ市場での発売は2011年6月8日が予定されており、これはAppleの世界開発者会議「ワールドワイドデベロッパカンファレンス(WWDC)」がサンフランシスコで開催される6月6日から10日の間にぶつけてきている。
10.1インチの「Galaxy Tab 10.1」は2月の発表時は本体サイズ246x170x10.9mmだったが、3月には256.6x172.9x8.6mmとサイズを薄くしiPad 2の8.8mmを厚みで抜き去った。デザインもよりシャープなものとなり、スマートフォンのiPhoneに対するGalaxy Sのように、iPad 2に対抗できるタブレットとなりえる存在だ。
だが10.1インチモデルだけではなく同社は8.9インチの「Galaxy Tab 8.9」も投入する。Samsungのこの戦略は「打倒iPad」だけではなく、「あらゆるディスプレイサイズを提供することで全ての消費者ニーズを満たす」ものなのだ。LG電子が同時期に発売を開始した8.9インチモデルの「Optimus Pad」は、10インチと7インチの中間サイズこそが消費者に最適ということで開発されたという。だがSamsungは最適サイズの選択ではなく、ニーズがあるだろう全てのサイズの製品を投入する道を選んでいるのだ。
タブレットやスマートフォン製品の陰に隠れているが、Samsungは5インチディスプレイのGalaxy S Wi-Fi 5.0も2月に発表している。これはGalaxy Sの4インチとGalaxy Tabの7インチの間を埋める製品だ。さらには3インチ台のディスプレイを搭載したGalaxy S以下の製品としてGalaxy AceやGalaxy Miniもラインナップに加えている。
そしてフィーチャーフォンには1.8インチという小型のタッチパネル端末もSamsungは投入している。同社の製品ラインナップは今や大半がフルタッチモデルだが、ディスプレイサイズを見ると1インチ台から10インチ台まで隙間無く製品が埋まっているのだ。
これに対し、例えばHTCはスマートフォンに特化していることからハイエンドモデルを充実させており、ディスプレイサイズは4インチ前後のモデルに偏っている。一方Samsungは電話番号をタッチパネルで押すだけというライトユース層向けのエントリー機から、動画やWEBコンテンツのヘビーユーザーをも満足させるタブレットまでフルタッチデバイスの充実振りは他社を圧倒している。
Samsungの端末総販売台数はまだまだ世界シェア1位のNokiaに追いつかないものの、スマートフォン分野では急激に追い上げている。IDCの調査によると2010年第4四半期のスマートフォン販売台数はNokiaが前年比36%増だったのに対し、Samsungは440%と10倍以上も伸ばしている。Samsungの端末部門CEO、J.K Shin氏は同社の2011年のスマートフォン販売台数目標を6000万台とし、昨年の2500万台から2.4倍まで引き上げる考えだ。
今回のタブレット製品の拡充は、そのスマートフォン拡販のための第一ステップでもある。だがそれだけではなく、スマートフォンが世界的なブームとなっている中でメーカーとしてのプレゼンスを強固なものにする目的も大きいだろう。
あらゆる消費者が求める製品を自社ラインナップ内に全て揃えることで、Samsungは今後業界の中心メーカーとしての地位を不動のものとしていくだろう。
山根康宏
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だが一方では7インチこそが日常的に利用できるサイズと考える消費者も増えている。Amazonの電子書籍端末「Kindle」の大きさが7インチタブレットに近似しているように、この本体サイズはハンドバッグやスーツの内ポケットにも入る。もちろん大きな画面で迫力ある動画再生をしたり、カラフルな電子雑誌を読みたいと考える層は10インチを選ぶだろうが、ちょっとした空き時間に気軽に読書したいと考える層には7インチも選択肢の一つになるはずだ。
そもそもスマートフォンにしてもノートPCにしても、消費者の利用ニーズに応じて様々なサイズのものが販売されている。それと同様に、どの画面サイズがタブレットとして最適なのかは消費者の利用形態によって異なるはずである。大きいディスプレイは確かにリッチな体験を与えることができるが、消費者全てがそれを求めているわけではない。また車社会のアメリカでは大型の端末も日常的に持ち運びが容易だろうが、徒歩やバイク、電車を使うアジアではより小さいサイズが好まれる傾向にある。
Galaxy Tab 10.1。1ヶ月で改良され世界最薄8.6mmを実現 |
では市場ではどの程度7インチタブレットが売れているのだろうか。Galaxy Tabは販売開始後4ヶ月で約200万台だったという。iPadが販売直後の20日間で300万台を売った数と比べれば、その数差は歴然としているようだ。とはいえ立ち上がったばかりのタブレット市場でこの数字を直接比較することはあまり意味がないだろう。
すでにiPhoneで完成されたエコシステムをそのままタブレットにも提供できるiPadは売れて然りであるだろうし、タブレットとしては最適化されているとはいえないスマートフォンOSを搭載したGalaxy Tabはまだまだ発展途上の製品とも言え、この数でもむしろ十分健闘していると考えるべきではないだろうか。
今後はタブレットの利用者が増えていくことだろうが、iPadが大きく売れ行きを伸ばすだけではなく、より広い層の消費者がタブレットを求めることから多様化したディスプレイサイズの製品も次々に登場しそれらも販売数を増やしていくであろう。
もちろんSamsungが立て続けにタブレット製品を投入する理由の1つにはiPadへの対抗があることは明白だ。10.1インチモデルはiPadと真っ向から競争する製品である。しかもアメリカ市場での発売は2011年6月8日が予定されており、これはAppleの世界開発者会議「ワールドワイドデベロッパカンファレンス(WWDC)」がサンフランシスコで開催される6月6日から10日の間にぶつけてきている。
10.1インチの「Galaxy Tab 10.1」は2月の発表時は本体サイズ246x170x10.9mmだったが、3月には256.6x172.9x8.6mmとサイズを薄くしiPad 2の8.8mmを厚みで抜き去った。デザインもよりシャープなものとなり、スマートフォンのiPhoneに対するGalaxy Sのように、iPad 2に対抗できるタブレットとなりえる存在だ。
Galaxy Tab 10.1はAppleのWWDC開催中の6月8日発売 |
だが10.1インチモデルだけではなく同社は8.9インチの「Galaxy Tab 8.9」も投入する。Samsungのこの戦略は「打倒iPad」だけではなく、「あらゆるディスプレイサイズを提供することで全ての消費者ニーズを満たす」ものなのだ。LG電子が同時期に発売を開始した8.9インチモデルの「Optimus Pad」は、10インチと7インチの中間サイズこそが消費者に最適ということで開発されたという。だがSamsungは最適サイズの選択ではなく、ニーズがあるだろう全てのサイズの製品を投入する道を選んでいるのだ。
タブレットやスマートフォン製品の陰に隠れているが、Samsungは5インチディスプレイのGalaxy S Wi-Fi 5.0も2月に発表している。これはGalaxy Sの4インチとGalaxy Tabの7インチの間を埋める製品だ。さらには3インチ台のディスプレイを搭載したGalaxy S以下の製品としてGalaxy AceやGalaxy Miniもラインナップに加えている。
そしてフィーチャーフォンには1.8インチという小型のタッチパネル端末もSamsungは投入している。同社の製品ラインナップは今や大半がフルタッチモデルだが、ディスプレイサイズを見ると1インチ台から10インチ台まで隙間無く製品が埋まっているのだ。
5インチディスプレイのGalaxy S Wi-Fi 5.0 |
これに対し、例えばHTCはスマートフォンに特化していることからハイエンドモデルを充実させており、ディスプレイサイズは4インチ前後のモデルに偏っている。一方Samsungは電話番号をタッチパネルで押すだけというライトユース層向けのエントリー機から、動画やWEBコンテンツのヘビーユーザーをも満足させるタブレットまでフルタッチデバイスの充実振りは他社を圧倒している。
Samsungの端末総販売台数はまだまだ世界シェア1位のNokiaに追いつかないものの、スマートフォン分野では急激に追い上げている。IDCの調査によると2010年第4四半期のスマートフォン販売台数はNokiaが前年比36%増だったのに対し、Samsungは440%と10倍以上も伸ばしている。Samsungの端末部門CEO、J.K Shin氏は同社の2011年のスマートフォン販売台数目標を6000万台とし、昨年の2500万台から2.4倍まで引き上げる考えだ。
今回のタブレット製品の拡充は、そのスマートフォン拡販のための第一ステップでもある。だがそれだけではなく、スマートフォンが世界的なブームとなっている中でメーカーとしてのプレゼンスを強固なものにする目的も大きいだろう。
あらゆる消費者が求める製品を自社ラインナップ内に全て揃えることで、Samsungは今後業界の中心メーカーとしての地位を不動のものとしていくだろう。
山根康宏
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