今、もっとも注目されているプロの写真家のための月刊写真雑誌「PDN」をご存じだろうか?
PDNとは、 Photo District Newsの略で、30年以上前にニューヨークで創刊された写真雑誌だ。写真家が成功するために必要なクリエイティブなインスピレーション、クライアントがどのようなことに興味をもっているのかなどの情報を、商業写真、ジャーナリズム、新聞・雑誌、芸術写真などのジャンルを問わず提供している。
その写真雑誌「PDN」の中でも近年特に注目されているのが、毎年、将来有望な30人の写真家を選び、その写真家の作品を紹介する「PDN’s 30」のクオリティの高さだ。
そんな写真展『「PDN's 30」 2011-アメリカの写真雑誌「PDN」が選んだ写真家たち-』が、アメリカ以外では初、もちろん日本でも初めて 9月21日(水)~10月9日(日)、RING CUBEにて開催されている。
日本でも滅多にないほどクオリティの高い写真展となっているが、開催にあわせて来日された「PDN」のシニアエディターであり、「PDN’s 30」今回の写真展の審査員の一人でもあるコーナー C. リシュ(Conor C. Risch)氏に話を伺った。
■圧倒的な迫力!日本初・世界初の複数展示で写真家のパワーが爆発
「若い写真家を世間の人々に紹介したいことを目的として、PDNが30人の写真家を選定・紹介を始めて約12年になります。RING CUBEさんも同じような活動をされているということで、素晴らしい若い写真家をもっと紹介していけたらと思い、今回の写真展を実現しました。」と、コーナー C. リシュ氏は、初の日本開催となった経緯を語る。
今回の日本での展示がアメリカでの展示と異なるのは、1人の写真家の作品を複数展示していることだ。
「複数点を展示したいというのはRING CUBEさんからの提案です。見てもらうと分かるのですが、複数点を展示したことで非常にパワフルで素晴らしい展示になっていると思います。」と、作家の個性がより表現され、力強い写真展になったと評価した。
Erik Madigan Heck | Justine Reyes | Justin Fanti | Susan Worsham |
Rachel Barrett | Katrina D’Autremont | Will Steach | Pari Dukovic |
Judith Stenneken | Liz Hingley | Spencer Lowell | Nicholas Alan Cope |
Bartholomew Cooke | Dyad Photography | Nick Hall | David Black |
Rebecca Drobis | Ryan Heffernan | Jody Rogac | Therese + Joel |
Silja Magg | Ivor Prickett | Daro Sulakauri | Philip Cheung |
Nicolo Degiorgis | Adam Dean | Giulio di Sturco | Dima Gavrysh |
Joel Micah Miller | Matthew Kristall |
■作家選びはチャレンジ
「PDN's 30」の写真展は、商業写真・報道からアートまでバリエーションに富んでおり作品のレベルが非常に高い。作家の方を選ぶ苦労は計り知れない。そのあたりをコーナー C. リシュ氏に伺った。
「難しいと言うよりは、チャレンジです。キュレーターさんとかギャラリーのオーナーさん、雑誌・新聞の編集者、広告業界の方などに、彼らが仕事をした中で、素晴らしい仕事をした写真家を推薦してもらいます。そして我々は、その写真家の方々にコンタクトして、作品を提出してもらいます。
まずは写真のイメージから、どのくらい印象に残るかを見ます。そして、どのような仕事をしてきたのか、キャリアを積んできたか、将来性はどうかということも含めてみるのです。」
最終的に選出するまで、多くの時間をかけて討論して決定するという。コンペのように1作品だけ決定するのではなく、キュレーターや仕事関係者からの推薦から、これまでの仕事の作品や成果も評価されるため、最新かつレベルの高い作家を選出できているそうだ。また、現時点の力量だけでなく、将来性に注視しており、さらなる可能性を秘めた作家を選んでいるという。
■写真展のポイントはストーリー性
コーナー C. リシュ氏から、今回の展示を観る方にメッセージをいただいた。
「写真家の方がどのようなストーリーでみなさんに語りかけていきたいか、ストーリー性に関しても注目していただければと思います。また、オーディエンス、見ている方々に、彼らがどんなことを語りかけていきたいかを学んでいただきたいですし、写真家の方の視点、どのような視点でこの写真を撮ったかを見ていただきたいと思います。」
「商業写真は、技術や質、オリジナリティに注目していただきたいですし、芸術作品は、インスピレーションを受けていただきたいですね。このようなイメージをもっと見たいと感じていただければありがたいです。」
今後の日本での展開について、伺ってみた。
コーナー C. リシュ氏も次回を含め、継続した写真展を続けていきたい意向はあるようだ。しかも、「PDN's 30」の中から選ばれた作家の写真展(個展)の可能性もあるという。以前に取材を行ったアレックス・プレガー氏も去年、PDNの30人に選ばれた一人だった。
■世界への扉となる写真雑誌「PDN」
現在「PDN」は英語版のみで、日本版PDNの予定はないそうだが、iPad向けアプリ(英語版)が提供されており、日本での入手も可能だ。
さらにPDNは、日本人写真家を世界に羽ばたかせる可能性もあるという。日本では、有名な写真家になるためには、写真コンテストなどに応募して認めてもらう必要がある。しかし、PDNの場合は、編集者などが目に触れた写真から有望な若手写真家を見いだすことができる。普段の仕事や作品制作そのものが、世界への扉を開くことができるのだ。
「先日、日本の若い写真家にお会いし、非常にエキサイティングな仕事を見させていただき、ぜひとも我々の雑誌で紹介したいと思いました。このように日本の写真家の方を海外で紹介するのに、我々の雑誌を使っていただきたいと思っています。そのためにも、RING CUBEとの関係を続けていきたいと思っています。」
このように、PDNは最新の写真世界を見せてくれる写真展や出版物で日本人の目を楽しませてもらうだけではなく、日本の若い写真家が世界に羽ばたく支援も期待できる。これから、PDNから目が離せそうにない。
コーナー C. リシュ(Conor C. Risch)
東1978年生まれ、コルビー大学(米国メイン州ウォータービル市)卒。現在、PDN (Photo District News) シニアエディター。これまで、ReganBooks/HarperCollins Publishers 編集アシスタント、becker&mayer! Books 編集(ワシントン州ベルビュー市)、COOL'EH Magazine シニアエディター(ニューヨーク市)に携わってきた。
■PDN(Photo District News)
名 称:「PDN's 30 2011」-アメリカの写真雑誌「PDN」が選んだ写真家たち-
展示作品数:約68点
出展予定作家: Adam Dean / Bartholomew Cooke / Daro Sulakauri / David Black / Dima Gavrysh / Dyad Photography / Erik Madigan Heck / Giulio di Sturco / Ivor Prickett / Jody Rogac / Joel Micah Miller / Judith Stenneken / Justin Fantl / Justine Reyes / Katrina d'Autremont / Liz Hingley / Matthew Kristall / Nicholas Alan Cope / Nick Hall / Nicolo Degiorgis / Pari Dukovic / Philip Cheung / Rachel Barrett / Rebecca Drobis / Ryan Heffernan / Silja Magg / Spencer Lowell / Susan Worsham / Therese + Joel / Will Steacy(敬称略・アルファベット順)
主催:株式会社リコー
期間:2011年9月21日(水)~2011年10月9日(日) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料
■リコーフォトギャラリー「RING CUBE」
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