ICT総研は2011年10月24日、2011年下期 スマートフォン電波状況実測調査の概要を発表した。本調査は、2011年5月に計測した電波実測調査(6月4日発表)の続編という位置付けであるとともに、対象地域や測定地点をさらに拡大することで、より正確な実態把握を行った。

また、今回はデータ通信速度の実測だけでなく、YouTube接続成功率や視聴開始までの秒数など新たな計測指標を加えている。

■調査結果の要旨
データ通信速度については、携帯電話事業者4社のスマートフォン(Android端末とiPhoneで計6機種)を対象とし、首都圏、東海・関西、東北の全72測定地点においてデータ通信速度を測定する手法で調査を実施。1機種あたり合計1,080回測定した。

この結果、5月に実施した前回調査と比較して、全体的に通信速度が向上している傾向が見られる。携帯電話事業者各社のインフラのさらなる品質強化への取り組みや新型端末のスペック向上、より高速なサービスの導入などが結果となって表れている。また、スマートフォン利用者数の多い首都圏よりも、東海・関西の速度が速いという傾向も見られた。

事業者別には、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)の速度向上に著しい改善が見られた。首都圏の下り速度で見ても、前回はiPhone4が 0.47Mbps、Androidが0.55Mbpsと低調な結果であったが、今回調査ではiPhone4Sが1.06Mbps、Androidも 0.91Mbpsと2倍前後の速度を記録した。下り最大14.4Mbpsへの対応を開始したことや、短期間で基地局を大幅に増強してきている効果が確実に表れている。

auは前回調査に引き続き、首都圏・東北の下り回線速度でトップとなった。10月に発売が開始されたiPhone4Sも全国的に優れたサービス品質を示しており、iPhoneユーザーにとってはソフトバンク以外の選択肢が広がったと言えるだろう。通信速度に優れたAndroid端末と、アプリの豊富な iPhone4Sが加わったことで、auのスマートフォンユーザーがさらに増加することにつながりそうだ。

イー・モバイルのスマートフォンユーザーはまだ少ないが、今回の調査では非常に優秀な通信速度を記録した。特に東海・関西エリアではその速度が抜きん出ており、今後はデータ通信端末だけでなくスマートフォンユーザーの増加が見込まれる。

■ 首都圏・東北の下りデータ通信速度はauがトップ、東海・関西はイー・モバイル
前回調査では、対象とした首都圏、東北地方ともにauが最速となったが、今回の調査でも首都圏・東北地方の下り回線速度ではauのAndroid端末がトップとなった。東海・関西地方では、イー・モバイルが下り回線でトップである。

首都圏では、下りはau Android端末が最速(1.10Mbps)、ソフトバンク iPhone4S(1.06Mbps)が僅差でこれに続く結果となった。前回調査では振るわなかったソフトバンクの通信速度が大きく改善されたことで、激しく拮抗する形となった。上りはイー・モバイルが最速(0.85Mbps)、ソフトバンク iPhone4S(0.70Mbps)がこれに続いた。

東海・関西では、下り、上りともにイー・モバイル(下り1.48Mbps、上り1.11Mbps)が頭一つ飛び出た結果となった。東北地方では、下りはau Android端末が最速(1.27Mbps)、上りはイー・モバイルが最速(0.90Mbps)となった。

ドコモは前回調査結果と同様に、どの地域においても上りの通信回線速度が振るわなかった。これにより、ソフトバンクの上り速度が改善された首都圏や東海・関西では、NTTドコモの低速ぶりが目立つ形となってしまった。東北地方では、ソフトバンクの電波状況は改善されておらず、auやイー・モバイルとは大きな差が生じた。

■首都圏iPhone4S対決ではソフトバンクが優勢、東北ではau版iPhone4Sが圧勝
ソフトバンクに加えてauからも発売されたことで注目されるiPhone4Sを比較すると、首都圏や東海・関西では、理論上の最大値(下り 14.4Mbps/上り5.76Mbps)で勝るソフトバンクが、au(最大値下り3.1Mbps、上り1.8Mbps)を僅差ながら上回った。理論上の通信速度では、ソフトバンク版のiPhone4Sが圧倒的優位に見えるが、実測ベースではあまり差がないことが検証された。

また、東北地方では、au版iPhone4Sの速度が非常に安定しており、ソフトバンクを大きく上回った。
前回調査したソフトバンクのiPhone4と今回調査のiPhone4Sを比較すると、首都圏で大幅に速度が増加している(前回・首都圏下り 0.55Mbpsに対して、今回・首都圏下り1.06Mbps)。理論上のデータ通信速度の最大値が増したことも大きいはずであるが、端末自体のデータ処理能力など端末スペック向上の影響もあると考えられる。

■Android端末はデータ通信速度で優位、iPhone4Sは動画視聴に強みを発揮
auは、下り、上りともに首都圏、東海・関西、東北地方すべての地域でAndroidの通信速度がiPhone4Sを上回った。一方で、ソフトバンクは地域ごとにAndroidとiPhone4Sが一進一退の結果となった。NTTドコモやauと比べると、ソフトバンクは同じ測定地点でも、速度の最高値と最低値の差が大きい傾向があることも影響していると考えられる。

全体的にAndroid端末とiPhone4Sを比較すると、Android端末はデータ通信速度ではiPhone4Sより速い傾向が見られる。 iPhone4Sはホームページなどの画像読み込みに要する通信速度ではやや劣るものの、YouTubeを視聴するまでの開始時間が速いという結果が得られ動画視聴では強みを発揮することがわかった。

■ドコモは全国的に安定した品質。回線混雑時も高い動画接続成功率を記録
YouTubeの接続成功率・視聴開始時間については、通信速度の理論上の最大値やエリアカバー率と言った携帯電話キャリアが公表するデータでは読み取れない、本当にユーザーが利用するシーンでの使い勝手を検証する目的で実施した。そのため、昼間の時間帯と比較する形で、回線が非常に混雑する夜(通勤時間帯)の山手線内主要駅で測定している。

YouTube接続成功率については、昼は各社ともにほぼ100%を記録したが、夜はNTTドコモがトップ(93.3%)、au(86.7%)がこれに続く結果となった。NTTドコモはデータ通信の上り回線速度で劣るという傾向はあるものの、下り回線では全国的にどのエリアでも著しく劣ることがなく、 YouTubeの視聴でも安定した品質を示している。

YouTube視聴開始時間については、僅差ながらソフトバンクiPhone4Sが最短(5.2秒)となった。一方で、夜は全体的に視聴開始時間が大幅に長くなるなか、au iPhone4Sが最短(13.8秒)となった。イー・モバイルやNTTドコモもこれに準ずる結果となった。

今後、さらにスマートフォンユーザーが増加していくことが確実な中で、携帯電話事業者各社はデータ通信トラフィックの爆発的増大への対策に追われている。スマートフォンユーザーは、端末自体の魅力に加えて、ネットワーク品質をより重視するようになるため、携帯電話事業者の技術力や設備投資力がこれまで以上に問われることになりそうだ。

2011年下期 スマートフォン電波状況実測調査
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