理化学研究所と富士通は、共同で開発中の京速コンピュータ「京(けい)」において、LINPACK性能10.51ペタフロップス(毎秒1.051京回=10,510兆回の浮動小数点演算数)を達成したことを明らかにした。

今回計測に用いた「京」のシステムは、864筐体(CPU数88,128個)をネットワーク接続した最終構だ。実行効率は93.2%と、2011年6月に世界のスーパーコンピュータのランキングである第37回TOP500リスト(第1位)で登録した93.0%を上回った。

まだシステムソフトウェアの整備・調整など開発途上ではありますが、第3期科学技術基本計画における国家基幹技術である「京」の性能目標として定めたLINPACK性能10ペタフロップスを実現することができた。

1. 経緯
理研と富士通は共同で、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画の下、2012年11月の共用開始を目指し京速コンピュータ「京」の開発を進めている。

「京」は、高性能・低消費電力のCPU(中央演算処理装置)や、超大規模構成を可能とするネットワークなど、数々の先端技術を結集して高性能・高信頼を追求したスーパーコンピュータだ。

2011 年8月末に864筐体全ての搬入・据付が完了したシステム最終構成について、基本動作の確認と設計性能を確認するために、10月7日から8日にかけてベンチマーク・プログラムである「LINPACK」を用いて性能計測したところ、10.51ペタフロップス、実行効率93.2%を達成した。

これらの結果を第38回TOP500リストに登録し、集計結果は、11月12日~18日に米国ワシントン州シアトルで開催されるハイパフォーマンス・コンピューティング(高性能計算技術)に関する 国際会議SC11(International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis)で発表される。

2. 「京」の性能と開発状況
「京」の主要部分は、864の筐体に収められた88,128個のCPUで、理論演算性能は11.28ペタフロップスだ。システム最終構成でLINPACKベンチマーク・プログラムを走らせ、前回(2011年6月)のTOP500リストで世界一となった性能値(8.162ペタフロップス)を上回る10.51ペタフロップスを達成した。計測結果の詳細は以下の通りだ。

今回、目標である10ペタフロップスを達成したこと、実行効率が前回の計測結果をさらに上回ることができたといった性能面だけでなく、88,128個のCPUなどから構成されるシステム全体が 29時間28分にわたって無故障で動作したことは、世界最大級の超大規模システムの安定性を実証することになった。

現在は、2012年6月の完成に向けて、大規模環境下におけるオペレーティングシステム(OS)、コンパイラなどシステムソフトウェアの整備・調整を行っている。

また、国が戦略的に重要と定める分野で画期的な成果を早期に創出するため、2011年4月から「グランドチャレンジアプリケーション開発」や「戦略プログラム」に参加している研究者に対し、「京」の一部を試験利用環境として提供している。

試験利用環境は、試験利用者のニーズにも可能な限り対応しており、「京」のシステム整備の進捗に合わせて徐々に拡大してきている。

3. 「京」の利用と今後
「京」は、シミュレーション精度や計算速度の飛躍的な向上により、さまざまな計算科学の分野で広く利用され、世界最高水準の成果創出に貢献することが期待されている。

例えば、
・高速応答かつ低消費電力デバイスが期待される次世代半導体材料、とくに「シリコンナノワイヤ」や「カーボンナノチューブ」などナノ電子デバイス材料の挙動をシミュレーションで解析し、早期開発へ貢献
・膨大な薬剤候補物質の中から、病気の原因となるタンパク質活性部位へ結合して発病を防ぐことが可能な化合物を予測し、新薬の開発期間の短縮や開発コストの削減へ貢献(創薬への応用)
・色素増感型太陽電池の原子・電子レベルの挙動解析シミュレーションによるエネルギー変換効率の高い太陽電池開発への貢献
・地震波伝搬・強震動および津波シミュレーションに基づく人工構造物の揺れの予測、被害領域予測に基づく地震防災予測計画、耐震設計への貢献
・大気大循環モデルを解像度400mの高解像度でシミュレーションすることによる、集中豪雨など局所現象を解明する高精度な気象予測情報の提供
などが考えられる。

今回の目標性能達成により、システム完成に向けて一歩近づくことができた。理研と富士通は、引き続き「京」の大規模システム環境下におけるシステムソフトウェアの整備・評価を中心に取り組むことで、2012年6月の完成、11月の共用開始に向け、最大限努力していくとしている。

4. 理研及び富士通からのコメント
理化学研究所 理事長 野依良治氏は、
「わが国のさらなる発展の礎となる国家基幹技術としての京速コンピュータ「京」が、その目標であるLINPACK性能10ペタフロップスを達成し、高い技術力を示すことができたことを大変嬉しく思います。システム開発に全力で取り組んだ富士通株式会社はもとより、プロジェクトに関係する多くの方々の並々ならぬご尽力に感謝いたします。

来年6月のシステム完成に向けて着実に整備を進め、10ペタフロップスという世界に誇れる計算性能を有する「京」の能力が十分発揮され、輝かしい成果を創出するよう、また、来秋には多くのユーザーへの共用開始につなげられるよう責任を持って取り組んでまいります。」と、コメントしている。

富士通株式会社 代表取締役社長 山本正已氏は、
「今般、京速コンピュータ「京」が、まだ完成途上ながらも、LINPACK性能10ペタフロップスを達成できたことを、大変喜ばしく思います。われわれが目指した「世界に誇れるスパコン」に、また一歩近づくことができたと、自負しています。弊社としては、ソフトウェアも含め、2012年6月に「京」をきちんとお納めして、たくさんの方々に利用いただけるよう、引き続き完成に向けて努力してまいります。

そして、「京」の世界トップレベルの性能が、日本の力に、そして世界の価値になるよう、引き続きICT技術を通じて貢献していきたいと思います。」と、コメントしている。

京速コンピュータ「京」が10ペタフロップスを達成
富士通
理化学研究所

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