NTTドコモは2011年10月18日、2011年冬-2012年春モデルの新製品発表会を行った。製品のラインナップを見ると実にスマートフォンが15機種と過半数以上を占めており、もはやスマートフォンが主力商品であることが明確にアピールされている。

しかも高速なLTEサービス「Xi」対応端末も4機種が一気に発表された。海外の事業者はLTEを開始してもまだデータ端末だけを提供しているところも多い中、スマートフォンで出遅れたドコモは一気に海外の状況を追い越そうとしている。

ドコモの各社LTE/Xi対応スマートフォンはいずれもフルスペックを搭載したハイエンドモデルだ。日本固有のワンセグやおサイフ、赤外線機能はさておき、高解像度&大画面ディスプレイ、高速CPUを搭載しており3G環境でも十二分に活用できる製品が揃っている。

Samsung電子のGalaxy S II LTEだけがディスプレイ解像度がWVGAであるものの、同社はすでにディスプレイを強化したGalaxy S II HD LTEを海外で発表している。海外では年明け、日本では夏モデルあたりで採用されるだろう。

では、LTEの世界の状況はどうなっているのだろうか。

2011年冬時点では、LTEのサービスはまだ数カ国で提供されているに過ぎない。アメリカではVerizonに引き続きAT&Tが9月からサービスを開始したものの、まだ全土をカバーする状態にはなっていない。世界でも早い時期にサービスインした北欧も似たような状況だ。

お隣の韓国ではシェア3位のLT U+が年明けにも全国をカバーする予定だが、シェアトップのSKテレコムはそれよりも遅れそうだ。日本においても、NTTドコモ、ソフトバンクが全国をLTEのカバーエリアにするにはまだ時間がかかるだろう。
韓国も今年になってLTEサービスが開始された

それでも各メーカーはスマートフォンのLTE対応を急速に進めており、上位モデルはいずれもがLTEに対応している。これらの製品は最新機種を真っ先に購入するアーリー・アダプター層にとっても大きな魅力的だ。彼らがこぞって商品を購入し使ってくれることはメーカーとしても大きな宣伝効果をもたらす。

またいつでもどこでもネットワーク上のファイルを自由に扱える「クラウドサービス」も、LTEスマートフォンの利用者が増えれば普及が急速に広がっていくだろう。2Gから3Gへの切り替わりは「鶏が先か卵が先か」と同じ状況で、当初はなかなか普及が進まなかった。

しかしLTEではモバイルインターネットやクラウドというアプリケーションがすでに存在しており、メーカーの製品対応も加速化することから通信事業者の対応もより早いものになりそうである。


大手メーカーの動きを見てみると、HTCもSamsung電子もLTEを開始した事業者向けにはいち早くLTEスマートフォンを投入しており、両者はすでに複数のモデルを販売している。Googleの最新OS、Android 4.0を搭載した初のスマートフォンもSamsung電子からの発売となった。

今後はそこにLG電子やPantecなども加わり、LTEスマートフォンではアジア勢が市場の勢力を一気に奪う勢いだ。2G/3G時代の主役であったNokia、Motorola、Sony Ericssonはその各社を追いかける形になり、ハイエンドスマートフォンといえばアジアメーカー、という認識がこれから世界に広がっていくだろう。
LTE版も販売されるGalaxy Nexus

もちろん日本メーカーもここでLTEスマートフォンを積極的に海外へ投入すべきだ。日本向けに製品を出す力があるのならば、その製品をそのまま海外向けに投入することは技術的には全く難しいものではない。日本市場にこだわり海外への進出が遅れるようでは、今後も日本メーカーが海外でシェアを取ることは不可能だろう。

スマートフォン時代の今、多くの消費者が「先進的なメーカー」として認識しているのはApple、Samsung電子、HTCなどであり、日本メーカーの名前が出てくることはなくなってしまった。フィーチャーフォン時代はそれでもまだ若い女性層などに人気があったが、LTE時代に乗り遅れてしまえば、もはや日本のメーカーが携帯電話やスマートフォンを作っていることすら忘れ去られてしまうかもしれない。

そして日本メーカーが今からブランド力を構築するには、最新の技術や機能を搭載したハイエンドスマートフォンの投入は必須だ。しかしそれだけでは海外の各メーカーがやっていることと横並びであり、特徴ある製品として販売することは難しい。

たとえば、auの「iida INFOBAR Android スマートフォン」の特徴的なUIは日本メーカーならではのものであり、そのような「日本ならでは」の機能で差別化を図る必要もある。

日本メーカーの携帯電話が世界の先を走っていた時代はもはや過去の過ぎ去ったものであり、「日本メーカー品」というだけでは海外の消費者は製品に見向きもしてくれない。日本メーカーにとって、海外市場の参入への障壁はこれまで以上に高いものになっているのである。



毎年1月にはアメリカでCESが、そして2月にはスペインでMobile World Congressが開催され、各社から意欲的な新製品が発表される。2012年の両イベントではおそらく「LTEスマートフォン」が続々と発表されるだろう。CPU、ディスプレイ、カメラ、メモリ容量などだけではなく、LTEに対応することも先進性や技術力の高さをアピールする要素になるのである。

ドコモという厳しい製品品質を要求する事業者に製品を納入するだけの力を持っている日本メーカーだけに、海外向けにもLTEスマートフォンを次々と投入してもらいたいものである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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