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SoftBankとauのiPhone 4Sをさまざまな視点から徹底比較する本シリーズ、最終回となる今回は「サービス・機能」に着眼したい。両社が販売しているiPhone 4Sは端末としては同一であるが、両社のネットワーク環境などの違いから、同じiPhone 4Sでも使える機能や使い勝手が異なっている。購入前にあてにしていた使い方が実はできなかったということがないよう、購入前にしっかりチェックしておきたい。
■一躍有名になった「通話とパケット通信の同時使用」問題
iPhone 4S発売直前に各方面で話題になったトピックとして、auのiPhone 4Sは通話とパケット通信を同時に行うことができない。これはauの携帯電話において従来から共通した仕様であるが、常にパケット通信が行われることを前提としているiPhoneなどのスマートフォンにおいては、使い勝手を損ねる可能性がある。たとえばアプリのダウンロード中に電話着信した場合、ダウンロードはいったん中断し、電話を終了した後ダウンロードが継続されることになる。また電話で会話中にハンズフリーモードにしてiPhoneの画面を確認する場合、ブラウザでのWebサイト閲覧や、「マップ」アプリによる地図の閲覧など、3G通信を必要とする操作は不可能である。なおWi-Fiが有効となっている場合、音声通話とWi-Fiによるデータ通信は同時に行うことができる。

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通話中にマップを参照した例。SoftBank(写真=左)では地図が表示されるが、au(写真=右)では通話中にデータ通信ができない旨が表示されるのみ

■海外利用は高額請求に注意
SoftBankもauも海外でのパケット利用には定額サービスを提供している。しかし、auのiPhone 4Sでは国際ローミング時にローミング先事業者は自動選択となり、事業者を手動で選択できない。この仕様により海外パケット定額サービス(auでは「海外ダブル定額」)でローミング先を定額対象事業者に固定することができない。

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このことから、海外でau iPhone 4Sで「海外ダブル定額」を適用した場合、ユーザーが知らずに従量制のキャリアが選択され、高額な通信料金が請求される可能性がある。
滞在期間や利用の仕方にもよるが、長期滞在やアプリダウンロードなど利用すれば、数万単位の請求ではすまないケースもあるので、現実的には「海外ダブル定額」の利用は難しい。

au iPhine4Sの場合、設定でモバイルデータ通信の「データローミング」をオフにして、無線LANを利用するなどの利用を検討したほうがよいだろう。

au国際ローミング(注意文)

■auの3Gネットワークが「○」表示になる現象
このほか、auのiPhone 4Sで、接続されている3G表示が「○」表示になる現象がある。これはau のiPhone 4Sは下り3.1Mbps/上り1.8Mbpsの「3G」と下り144kbps/上り64kbpsの「CDMA 1X」が利用でき、「CDMA 1X」で接続した場合に「○」と表示される。「3G」接続できないエリアでも「CDMA 1X」接続で通信が確保はされるが、3G接続にくらべ速度が大幅に低下するといったデメリットにもなる。

特に地下鉄など一部地域で、「○」表示でしか繋がらない場合は、アプリのダウンロードやWebサイト閲覧などで支障がでるケースも多い。

■ SMS・キャリアメールは両社とも対応、auは絵文字の文字化けに注意
iPhoneをメイン端末として活用する際に、メール環境が整っているかは非常に重要である。幸いにして、SoftBank・auともにメール環境は充実しているが、その使い勝手は異なるものになっている。

SoftBankが提供しているのは、相手の携帯電話を指定してショートメッセージを送る「SMS」、いわゆるケータイメール(SoftBank他端末で言うところの「S!メール」)に相当する「MMS」(***@softbank.ne.jp)に加えて、iPhone専用に提供される「Eメール(i)」(***@i.softbank.jp)の計3種類。SMSとMMSは「メッセージ」、Eメール(i)は「メール」アプリで利用する。いずれも即時の受信通知や迷惑メールフィルタ、絵文字が使用可能である。なおEメール(i)については従来受信許可・拒否設定など迷惑メールフィルタのカスタマイズに非対応であったが、11/15より対応開始された。

一方auが提供しているのは「SMS(i)」と、auのケータイメールである「Eメール」(***@ezweb.ne.jp)。SMS(i)はSoftBank同様「メッセージ」アプリで送受信するが、EメールはSoftBankのMMSと異なりPCメールの扱いとなるため「メール」アプリでの送受信となる。受信通知はSMSについてはSoftBank同様即時通知されるが、Eメールについては15分おきにサーバーに新着を確認しに行く形となる。絵文字はSMSについては利用可能だが、EZweb Eメールは現状、メールの送信先が iPhone同士の場合のみ正常に表示される。それ以外の場合は(相手がauか他社かを問わず)絵文字部分が文字化けする場合がある。

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au端末から送信したケータイメール。SoftBank(写真=左)は絵文字が表示されるがau(写真=右)は絵文字が文字化けする

■ iPhone後発のauが現状対応していないサービス
auがiPhone 4Sを発売したスピード感は大いに評価されるべきであるが、それゆえにiPhone 4Sのサービスに十分に対応しきれていない面があるのは否定できない。例えばテレビ電話サービス「FaceTime」や留守番電話の伝言を端末にダウンロードできる「ビジュアルボイスメール」、iOS 5から導入されたメッセージングサービス「iMessage」は、auのiPhone 4Sでは現状使用できない。なおFaceTimeとiMessageについては「近日中に対応予定」とKDDIより発表されている。ビジュアルボイスメールについてはアナウンスされていない。

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SoftBank(写真=左)ではFaceTimeが利用可能だが、au(写真=右)ではFaceTimeのメニューが表示されない

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「メッセージ」の設定画面ではSoftBank(写真=左)に存在するiMessageの設定項目がau(写真=右)では表示されない

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「ビジュアルボイスメール」はSoftBankでは「留守番電話プラス」の契約で利用可能(写真=左)。auでは現状非対応で留守番電話サービスセンターへの電話発信になる(写真=右)

■ まとめ:料金・エリア・機能、しっかり比べて納得のキャリア選びを
本記事ではSoftBankとauのiPhone 4Sについて、各種機能の対応状況や使い勝手を比較した。KDDIはiPhone販売の歴史が浅いこともあり、現状auのiPhone 4Sでは使えない機能が少なからずあることは否めない。従来SoftBankのiPhoneを使っていて、auへの乗り換えを考える場合、それらの制限が受け入れられるものかどうかを慎重に検討する必要があるだろう。

とはいえ、KDDIがiPhone販売に参入することで、ユーザーにより多くの選択肢が提示されたことは紛れのない事実である。iPhoneに興味を持ちながらもキャリア変更に二の足を踏んでいたauユーザーにとって、auのiPhone 4Sは有力な選択肢となる。

本特集では3回にわたって、料金・通信速度・機能など様々な面からSoftBankとauのiPhone 4Sを比較してきた。同じiPhone 4Sといえども、両社が提供するユーザー体験は予想以上に異なったものといえる。どちらかを選んだ時の利点・欠点、できること・できないことをしっかり見極めて、あなたのiPhoneライフを充実させる1台を選んでほしい。

【特集】iPhone 4S徹底比較
第1回「料金編」:「iPhone 4S」SoftBankとauのどちらが安い?購入前に気になる料金をチェック!
第2回「通信編」:SoftBankとauのiPhone 4Sはどちらが速いのか?通信速度の違いを実測調査

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