各プラットフォームは思想を持っている。iモードの思想、モバゲーの思想、GREEの思想というように、その思想にあわせてサードパーティはコンテンツを出していく必要がある。
世の中のありとあらゆるコンテンツをタダにしてインデックス化し、お金はBtoBで回すというGoogleの思想に比べると、iOSマーケットの思想はなかなか把握しづらい。

Appleのドン、スティーブ・ジョブズの歴史を紐解いていくことで、iOSの思想のヒントを探っていこう。

1.最初の最高傑作は違法電話の装置
違法電話装置の通称はブルーボックス。ウォズニアックが開発し、ジョブズが学生たちに売った。後のAppleにおける2人の役割分担を最初に物語った共同事業だった。

当時の電話通信システムは、特定の周波数を使えば、課金部分を通り抜けて電話をかけることできた。その仕組みの詳細をウォズニアックが本で知り、開発したという。当時の学生にとって、電話料金はとても痛い。そんなところにヒーローとして、この2人が現れたというわけだ。

石川五右衛門のように、お上を敵に回してもやりたいことをやるという姿勢は、今後の彼の製作物に一貫して見ることができる。

2.「会社を興したことあるってかっこいいだろ」
世界初のパーソナルコンピュータの原型は、ヒューレット・パッカード(HP)に勤務していたウォズニアックが作った。しかし、上層部は「こんなおもちゃ、誰が使うんだよ」と製品化を却下した。

ジョブズは、それを喜んだ。クルマを売っぱらって起業したというわけだ。
ウォズニアックはギーク仲間にオープンにして、貢献できればいいくらいにしか考えておらず、HPを辞める気なんかさらさらなかった。

そこでジョブズがこの言葉でウォズニアックを口説いた。
「もしダメになってもいいじゃん。後で会社起こしたことあるって自慢できるってのは、なかなか人生でもないことだぞ。」

社名は、2人が大好きだったビートルズのレーベル名にした。こんなノリで作った会社が、世界有数の会社になったわけだ。

3.「残りの一生を砂糖水を売って生きるのかい?」
面白いことに、スティーブ・ジョブズとウォズニアックは創業者ではあるが、社長ではなかった。これが米国企業の面白いところで、ジョブズは当時、自分が社長をやれるタマではないと思っていた。

彼はペプシの社長であるジョン・スカリーを招聘することにする。
そこで、ささやいた言葉がこれだ。
「残りの一生を砂糖水を売って生きるのか、それとも俺らと新しい未来を作るか。どっちがいいかい?」

かっこよく決めたリクルーティング劇ではあったが、1年後にジョブズはこのスカリーを追い出そうとして失敗。砂糖水を売っていた男から、クビを切られることになる。30歳の痛い思い出だ。

4.何も作らず、全てを作った
Appleに投資したいというゼロックスに対して、ジョブズが要求したのは、最新のコンピュータ技術の現場を見せろということ。そして実現したのが、パロアルト研究所の見学である。
「こんなすごい技術が商用化されずに腐っていくのか」と感嘆したそうだ。

定説ではジョブズは、マッキントッシュの原型となったデスクトップとマウスという概念を見たことになっているが、その中には、iPadのようなもの、iPhoneのようなものがあったともいわれている。すぐに商品化したのがマッキントッシュであり、その後、ジョブズはAppleから追い出された。

後にジョブズがAppleに戻らなかったら、iPhoneやiPadが、世界に現れずに闇に葬られた可能性もあるのだ。

5.IBMとの契約破棄で、時代はマイクロソフトへ
Apple上で動くソフトウェアのベンダーだったマイクソロフトのビル・ゲイツは、親の知人を頼って、IBMを訪問する。そこで唱えたのが「ディスクオペレーションシステム」、いわゆるDOSで、IBMはそれを採用することになる。

しかし、そんなものは当時のマイクロソフトにはないわけで、ゲイツが口八丁で売ったものだった。彼は、もらった契約金で、すでに「DOSのようなもの」を開発している会社を買収し、それを「DOS」として売った。

一方、Appleを追い出されたジョブズは、ネクストを創業しOSを開発していた。IBMが採用をしたいと手をあげたが、ジョブズは断る。
「契約書が分厚いのが気に入らない」と言ってゴミ箱に捨ててしまったのだ。

もし、ここでIBMと組んでいたら、ウィンドウズはなかったのかもしれない。そんな大事な商談であっても、気に食わないことはやらないというわけである。

6.ジョージ・ルーカスの離婚がきっかけ
スティーブ・ジョブズは6つの業界に革命をもたらしたといわれる。ひとつは当然のことながらコンピュータ業界、もうひとつは映画業界。そして、音楽、出版、通信、ゲームだ。

映画業界に足をつっこんだのはジョージ・ルーカスの離婚がきっかけだった。彼が慰謝料を払えないからと、ピクサーを売却しようとしていた。ジョブズは、買収候補がほかにいないことを分かっていたので、一度つっぱねてルーカスの希望の半額以下で買うことになる。

ジョブズの本当の狙いは彼らが開発していた3Dアニメの描画ソフトにあった。しかしながら、一向にソフトウェアは売れない。いよいよアニメーション部門を撤退させなくてはならないかという時も、これは有望な芸術だから手放せないと、さらに身銭をつっこんだ。
こうやってできたのが、トイ・ストーリーやバグズ・ライフだ。その後も連続ヒットが相次ぎ、自身2度目の株式上場を果たす。

はじめ興味がなかったお荷物部門が、莫大な富をもたらしたのである。

7.ディズニーの大株主に
ピクサーはディズニーのアニメーション部門を補完するような存在であった。
しかし10年も経つとディズニーのパレードでは、ピクサー生まれのキャラクターが9割を占めていることに、当時の新任社長は気づいた。
既存のアニメーション部門を撤退したいし、ピクサーを他と組ませたくない。こうしてディズニーによるピクサーの買収がおこなわれた。

ピクサーのトップは、ディズニーのアニメーション部門のトップへ。そして経営は独立性が約束され、収益分配も変わらず、ピクサーのブランドもそのまま残ることになる。
形としては「買収」であるが、実際はジョブズがディズニーの大株主となり、ますます、ディズニーはピクサー依存となったわけだ。

8.「ウィンドウズはMacのパクリなので」
スタンフォード大学の卒業式講演にて拍手が起こったクダリはこうである。
「Macがなかったら、今のPCに美しいフォントはなかったことになります」

ジョブズが大学中退した後もモグっていたカリグラフィーの授業で、たくさんの美しい文字に出会っていたから、マッキントッシュにたくさんのフォントをいれることになったという。

このパクリ論争、実はゲイツがうまいことジョブズを言い負かしていた。「あなたは、たまたま隣人が金持ちで、あなたはそこの家具を盗みました。それは、僕らより、ちょっと早かっただけなのではないですか。」と。
今となっては昔のことだから水に流そうではなく、10年前以上も前の恨みを、きっちり返すのがジョブズ流なのだ。

9.Apple製ウォークマンの思想とは
「決してコピーはしないように!」
iPodのパッケージには、このメッセージが書いてあった。当時の音楽業界は、ナップスターによる違法ダウンロードが横行しており、大手の音楽パブリッシャーは独自で楽曲をオンライン販売をしていた。そこに、「俺らに任せろ」と割って入ったのが、AppleのiTunes Music Storeである。

他のMP3プレイヤーと違って莫大な楽曲数の入るiPodと、PCにつなげば、莫大なラインナップの音楽が1曲ごとに手に入るストアをセットにすることで、彼は市場を制した。

音楽業界の者たちは、俺たちがApple製品を売っているようなものだと愚痴をこぼしたが、時すでに遅し。音楽業界はジョブズ軍団の軍門にくだったわけだ。

なお、iOSアプリの開発者がお世話になっているApp Storeは、クレジット登録ユーザが世界にすでに2億人もいる未曾有マーケットであるが、まさに「コピーはするな。アーティストの権利を守ろう。」という思想の賜物なのである。

10.Apple製のケータイ、ニンテンドー
去年のWWDCのキーノートスピーチで、スティーブはジンガ社長マーク・ピンカスを壇上にあげて、
「これは素晴らしいゲーム機だ。どんどんいいゲームを作ってほしい」と鼓舞した。
現在、任天堂以外のほとんどの大手ゲームメーカーが参入を果たしている。

iPhoneの登場では、少なくとも通信業界とゲーム業界を翻弄し、
iPadの登場では、出版業界を翻弄している。

こうして気づけば、スティーブ・ジョブズはコンピュータ以外に、5つの業界に革命をもたらしたというわけだ。

11.SONYの制服
ジョブズは日本の工場に「禅」を感じ、リスペクトしていたらしい。
特に日本の強さを見せつけられたのが工場の制服。みんなが同じ服を来ているから連帯感が生まれるのだと。

そこで、社員たちに制服着用を提唱したのだが、まったくもって支持されない。神とあがめられるジョブズでも、無理なものは無理だった。
仕方がないので、自分だけは制服を持ちたいというわけで、三宅一生に黒のタートルネックを頼んだということだ。

12.Appleとの和解
去年の11月のある日、Appleのウェブサイトでは、
「明日、いつもと同じ一日が、忘れられない一日になります。」
という全面アナウンスがされていた。
Appleファンの間では、新機種の発表かとざわめきたっていたが、その発表が「ビートルズ全楽曲の配信」と判明した時点で、落胆ムードとなった。

でも、ジョブズにとっては念願のことだった。
何気なしに好きなアーティストにまつわる単語を社名に選んだばっかりに、Appleレーベルとは長い間、係争をくりかえしてきた。一度は「Appleコンピュータは、音楽関連ビジネスをしない」という約束でおさまったが、そうはならず、社名も「Apple」となっていく。

このような中で、堂々と「Apple」を名乗り、しかもビートルズナンバーを配信できるなんて、夢のようなことだったのだ。

13.ナンバープレートのないメルセデス
スティーブ・ジョブズの愛車のメルセデスについて、
娘が、「なんでお父さんはナンバープレートをつけないの?」と聞いたそうだ。
彼は「なんでだと思う?」と聞き返した。
娘は、「反逆者と思われたいからでしょ?」と答えた。
彼の答えはこうだ。「ちょっとしたゲームなのさ。」

14.人生最良の日
すでにiPodで完全復活をとげて、iPhoneの開発にいそしんでいるスティーブ・ジョブズが、
スタンフォードのスピーチで、「人生最良の日」にあげたのは、30歳のころ。

前述のように彼は30歳に、Appleを追い出された。非常に落胆し、シリコンバレーを離れようとも思ったそうだ。その時に彼が思ったことは、シリコンバレーの精神のバトンを俺が落としたということ。

シリコンバレーはスタンフォードから、HPが生まれ、それから、半導体とインターネットの世界を牽引してきた。
まさにその開拓者精神がジョブズにも引き継がれ、その後塵にも引き継がれている。

彼はAppleをクビになって、成功者の重責から逃れ、自分の好きなことに没頭するようになったという。

だからスタンフォードでもくりかえしこう言った。
「君たちの時間は限られている。だから自分以外のほかの誰かの人生を生きて無駄にする暇なんかない。」
「自分の内なる声、心、直感というのは、どうしたわけか君が本当になりたいことが何か、もうとっくの昔に知っているんだ。だからそれ以外のことは全て、二の次でいい。」

15.彼が盗んだもの
まず、ルパン三世「カリオストロの城」の最後のシーンを思い出してほしい。
銭形警部「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。それはアナタの心です。」
クラリス「はい。」

iPhoneアプリを開発している者の多くは、クラリスみたいな顔をして、スティーブの話をする。
「また、スティーブがやらかしたか。」
「スティーブだからしかたないよ。」
ジョブズを知らない開発者の奥さんたちには、スティーブという近所のおじさんか、同僚の一人ぐらいに映っているかもしれない。
「ジョブズが死んでから、ムライさんは喉が通らないらしい。」
こんな感じで、彼が他界した時は、開発者たちの中で、近い親戚の不幸のように語られたことだろう。

一言で言えば、スティーブ・ジョブズとは、20万人の開発者の心を盗んだルパン三世みたいなヤツなのである。

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