ファーウェイ(Huawei)は、日本を含む世界中にUSBタイプのデータ通信端末を販売していることでも知られている。また、お手軽価格のスマートフォンを立て続けに市場投入するなどスマートフォンメーカーとしての認知度も着々上げている。特に通信事業者の独自ブランドによる価格の安いスマートフォンにはファーウェイ製のものが多くなってきた。
日本でも、同社のスマートフォンはソフトバンクのVision SoftBank 007HWやイー・モバイルのGS02といったミッドレンジクラス製品のほか、イー・モバイルのPocket WiFi Sも実はAndroid OSを搭載したエントリークラスのスマートフォンだ。このPocket WiFi Sの同系モデルは世界各国の通信事業者からも超低価格でも販売されているほどだ。
そのファーウェイが、2012年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクスショー「CES2012」で新しいスマートフォンの発表会を開催した。これまでの同社のラインナップを見ている限り、発表されるのは新興国向けのコストパフォーマンスに優れた製品ではないかと予想されていたが、発表された2製品はいずれも大手メーカーのハイエンド機種にも匹敵する上位モデルだったのだ。
CES2012のファーウェイブースはAscnedシリーズを中心に展示 |
ファーウェイが発表した「Ascend P1 S」「Ascend P1」はいずれも新しい「Ascendシリーズ」に属する製品である。同社はこれまでにも「IDEOS」などのブランド名をスマートフォンにつけていたが、Ascendはミッドレンジからハイエンドをカバーする、同社の「顔」となるブランドに育てていくとのこと。またモデル名の「P」はプラチナを意味しており、文字通り同社のラインナップの最上位にランクされる製品となる。
「Ascend P1 S」「Ascend P1」の細かいスペックは同社のWEBサイトやオンラインニュースなどですでに報道されている通りだが、Android OS 4、4.3インチ/qHDの有機ELディスプレイ、1.5GHzデュアルコアCPU、8メガピクセルカメラなど。
ファーウェイの製品としては大幅に機能が上がっているだけではなく、P1 Sの厚さ6.68mmは富士通のARROWS F-07Dの6.7mmを抜いて世界最薄の記録を更新している。基本スペックが同じP1はP1 Sより若干厚い7.7mmだが、こちらは価格がP1 Sより安くなっている。
ファーウェイのハイスペック&世界最薄スマートフォン「Ascend P1 S」 |
通信部分の機能も目立たないが注目すべきポイントだ。W-CDMAの周波数は850・900/1700/1900/2100MHzの5バンドに対応、これは大手他社の製品でもまだ対応品はほとんど無い。このうち1700MHzはアメリカT-Mobile対応とのことだが、5バンド同時搭載が可能ということからイー・モバイル向けやドコモのプラスエリア(800MHz)対応も容易と考えられる。ハイエンド嗜好の高い日本市場にAscendシリーズが投入されることも十分ありうるだろうし、端末コストの引き下げを図りたい各事業者も興味を持つだろう。
そしてネットワークの掴みも他社品よりも大幅に良くなっているとのこと。携帯電話は常に基地局と通信を行っているが、ネットワークの掴みが悪ければ電池寿命も短くなってしまう。ファーウェイはインフラ事業も行っており、無線技術に関しては長年の技術の蓄積がある。アンテナ感度が高く、ネットワークの掴みも良いというAscendシリーズは同じ電池容量の他のスマートフォンよりも長時間の利用が可能になるわけだ。
4-5年前までは無名の存在だったファーウェイだが、USBデータ端末でシェアを徐々に拡大し、今ではデータ端末では世界のトップに立っている。また事業者向けのフィーチャーフォンのOEM供給から始まった音声端末も、今ではエントリーおよびミッドレンジのスマートフォンで数を急激に伸ばしている。
この数年の間に蓄積した端末製造、販売ノウハウの集大成が今回発表されたAscend P1 SとP1として開花し、大手メーカーと同じ土俵に立てるまでの存在になったことは、これまで同社をライバル視していなかった他社にとって大きな脅威になるだろう。
純正のカラバリカバーを用意。端末のイメージアップにつながりそうだ |
市場調査会社Canaccord Genuityによると、2011年のスマートフォンの販売ランキングでファーウェイはトップ10入りを果たし、順位は9位、販売数は1590万台と予想されている。1位のサムスン電子の9000万台強にはまだまだ及ばないものの、8位のモトローラや7位のLG電子、そして2420万台で6位のソニー・エリクソンは十分射程距離内に入っているだろう。
Canaccord Genuityもファーウェイの2012年のスマートフォン販売台数を3050万台と倍増するものと予想している。だがこの数字はハイエンドモデルのAsendシリーズの発表前であったことから、ファーウェイの2012年のスマートフォン販売台数はさらに伸びるであろう。
技術力と品質で大手メーカーに並んだファーウェイの今後に不安があるとすれば、それはブランド力だろう。今回のAscendという名称も、これまでの同社のイメージを払拭する新しいイメージを植えつける意図でつけられたものだろう。
またこれからハイエンドモデルのラインナップを拡大していけば、消費者への認知度も自然と高まっていくだろう。同社によると2月に開催されるMobile World Congress 2012ではAscend Pシリーズの上のモデルとしてAscend Dシリーズ、すなわち「Diamond」が発表される予定であるとのこと。
また2012年は各国でLTEサービスが本格化すると見られているが、CES2012の同社ブースにはLTE対応のAscend P1 lteも参考出品されていた。
大手メーカーと同じタイミングでLTEスマートフォンを市場に投入すれば、価格だけではなく機能面でも優れた製品を開発するメーカーとしてブランド力も高まるだろう。
2012年はファーウェイのハイエンド端末、すなわちAscendシリーズが台風の目になるかもしれない。
山根康宏
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