携帯電話各メーカーの2011年第4四半期が出揃った。この時期はクリスマスセールの期間でもあり、1年の中で最も利益を稼ぎ出す重要なシーズンでもある。同四半期に新製品iPhone 4Sを投入したAppleが絶好調であったのは当然として、他社の状況を見てみると明暗がはっきりとし、各社の状況をそのまま物語った結果となっている。

たとえば、Sony Ericssonは前年同期比で販売台数が20%も下落。同社は高価格なスマートフォンにシフトしている状況でもあり、この減少は2億700万ユーロの損益を引き起こしている。

一方、Samsungは携帯電話部門が過去最高の営業利益を更新。特にGalaxyシリーズのスマートフォンが好調で、今やスマートフォンの販売台数でAppleとトップを粗そう座に上り詰めた。

携帯電話全体の販売台数ではまだNokiaがシェア1位をキープしているものの、スマートフォンでは前年同期比販売台数を31%下落させ、AppleとSamsungの後塵を拝するまでに後退してしまっている。


Samsungはスマートフォンだけでなく携帯電話全体の販売台数も伸ばしており、調査会社IDCの報告によれば2011年通期の同社端末総販売台数は初の3億台を突破。前年から17.6%伸ばし3億2940万台となった。

一方、Nokiaは前年から7.9%減の4億1710万台。マーケットシェアはそれぞれ21.3%、27%となり、両者の差は大きく縮まっている。これは仮に2012年も同じペースが続くとすると、今年末にはシェアが逆転するほどの状況である。もちろんNokiaもWindows Phoneへの移行を進めているのでスマートフォンの販売台数引き上げが図られるだろうが、Samsungの勢いはそれを上回るものになるだろう。

Samsungのスマートフォンが好調なのは圧倒的な製品数を市場に投入した結果でもある。同社が2011年に発売したスマートフォンは日本でもヒットしたGalaxy S II、GoogleのリファレンスモデルであるGalaxy Nexusなどを含め、70機種以上に上る。この中には国別の派生モデルも含まれるが、低価格で若い世代=Young Generation向けのGalaxy Yやデザインに特化したGalaxy R、フルキーボードを搭載したGalaxy Proシリーズなど、製品のバリエーション展開は広げられている。
Samsungの好調を支える多数のスマートフォンラインナップ

さらにディスプレイサイズも2インチ大から4インチ後半と多数の製品を揃えているところも見逃せない。タブレットに至っては、7インチ、7.7インチ、8.9インチ、10.1インチと4つのモデルを1メーカーで揃えており、これだけの製品を揃えるメーカーはSamsungだけだ。そして販売国ごとに現地で売れると判断したモデルだけを販売国で投入するという徹底したターゲットニーズ展開も特徴だ。

各国の通信事業者も自社の顧客が求めるだろうと判断した製品をSamsungのラインナップの中から自由に選ぶことができることで、各国の通信事業者にとってもSamsungの豊富な製品群は魅力的なものなのだ。

Samsungのこの勢いはApple以外には敵なし、という状況にも見える。同社は2012年も多数のスマートフォンを市場に投入するだろう。だが昨年と同じ戦略を取るだけでは今の好調さを維持することは難しいかもしれない。

たとえばGalaxyシリーズだ。
製品デザインは全体的に似通ったものが増えてきている。矢継ぎ早に投入される新製品に、消費者が今後も新鮮味を感しるとは限らず、飽きられる恐れは十分にある。さらにはAppleから受けたデザイン模倣訴訟も国によっては敗訴となっているケースもあり、今後、同社の端末デザインは大きなウィークポイントになりかねない。

Appleですら大成功したiPhone 3GからiPhone 4へのモデルチェンジ時には製品デザインを大きく変えて市場から大きな支持を受けたころからもわかるように、今後のSamsungも製品デザインの根本的な改革を早急に行うべきだろう。
スタイラスペンを使うGalaxy Noteはヒット商品になっ

またこれまではNokiaなど他社を追いかける2位の座にあった同社だが、今後は他社から追従を受ける先駆者として業界を牽引していかねばならなくなる立場にかわったことだ。そのためには新技術の採用はもちろんのこと、斬新で新しい製品を他社に先駆けて投入する必要は、今以上に要求されてくるだろう。

たとえば、2011年秋に投入したペンを使う新カテゴリの製品、Galaxy Noteは販売直後の2ヶ月で全世界で100万台を出荷するヒット製品となった。このような製品をコンスタントに開発していくことがSamsungの強さを本物にするためには必要だ。

その一方では、新興市場で低価格なスマートフォンが販売台数を急速に増やしている。100ドルを切るスマートフォンは低所得者でも手軽に購入できる製品であり、Facebookなどのソーシャルサービスの普及は新興国でのスマートフォン人気を後押ししている。

低価格スマートフォンはHuaweiやZTEに加え中国の新興メーカーも多数の製品を投入している。Samsungが販売数をさらに増やすためには新興市場にもスマートフォンを本格的に販売していく戦略を取るべきかもしれない。
新興市場でも中国メーカーを中心にスマートフォンブームが到来

今年中にはAppleから新しいiPhoneが発表される予定だが、それに匹敵するだけの新製品の開発も必須である。スマートフォンで世界1位になったといっても、その地位は決して安泰のものではない。2012年も昨年の好調を維持できるかどうか、Samsungの動向には市場が大きく注目している。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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