若い写真家たちが、カメラをバトンに写真魂を繋いでいくユニークな写真展「GRバトン 写真家リレー」が、東京・銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBEで開催中だ。
この「GRバトン 写真家リレー」は、リコーのコンパクトデジタルカメラ「GR DIGITAL」(もしくは「GXR」)をバトンとして、展示を行った写真家が次の写真家を紹介するという、リレー方式の写真展なのだ。
12ヶ月で12人の若手作家に受け継がれる「GRバトン 写真家リレー」は、「若手写真家を発掘し支援していく」というRINGCUBEの取り組みを体現するものとなっている。
2月の第一走者であるTaichi氏よりバトンを受け取った第二走者は、富永崇功氏だ。
早速、同氏に作品についてお話をうかがった。
■Taichiさんが僕にチャンスをくれた
最初に、今回の写真展のキッカケについてうかがってみた。
「第一走者のTaichiさんとは学校が一緒で、僕の先輩なんです。その関係で、TaichiさんからRING CUBEで写真展をやるので、次の写真展の走者にどうだ?と言われて。急だったんですけど、チャンスだなと思って、僕もやろうと思いました。」
富永氏が声をかけられたのが、昨年12月末だったというから、本当に急な話だ。第二走者の展示のスケジュールは2012年3月21日とすでに決まっており、写真の最終入稿は3月15日という慌ただしさだ。富永氏は実質2ヶ月で作品を揃えたというから、若さのなせる瞬発力といえる。
写真展までの短い期間に、どのようにして作品作りをしたのか、伺ってみた。
「もともと作品作りは早いほうではありません。街で声を掛けて写真を撮るというスタイルなので、最初は10点展示しようと思っていたんですけど、5点に絞り込むことにしました。時間が少なくて大変という気持ちよりも、作品を発表できるチャンスだ、という気持ちと、人に見てもらえるドキドキ感のほうが勝っていたので、撮影は大変だと思わなかったです。」
■僅かの時間で全国を飛び回ったフットワーク
今回の富永氏の作品は、1点1点雰囲気がかなり違うのだが、それもそのはず、撮影した地域が全部違うのだ。それもただ場所を変えたというレベルの距離ではなかったのだ。
「最初は統一しようかなと迷ったんですけど、撮影した人の魅力をどのように見せようかと考えて、カッコイイ人はカッコよくと見せようと、モノクロやカラーが混在した作品群にしてみました。」
5作品の撮影場所は、福岡、大阪、鎌倉、栃木など、全国に飛び出し、そこで出会った人を街のたたずまいごと写真に収めている。ハードなテイストがあるかと思えば、優しい質感があったりと、若い感性で切り撮った地域の空気と共に、人が写真に記録されている。
富永氏は、どのようにして全国を飛び回り撮影するスタイルを選んだのだろうか。意外な回答が返ってきた。
「場所とかは、僕の中ではどこでもいいんです。ただ、行きたいなと思ったら、行くみたいな。そんな感じで、ふらっと気が向いて大阪に行ったという感じですね。今思えば、あっちこっち行っているなと。」
時間がないからといって近郊だけで撮影すれば、5枚の作品は似通った平凡な作品になったかもしれない。短い時間に臆することなく、行動して写真に向かった姿勢が、生き生きとした躍動感のある5作品を生んだのだろう。
富永氏が実際に動くことで、景色が動いて、感性も動く。動けば動くほど、新しい視界が広がり、それが作品との出会いになっていく。若く行動力のある作家だけが探し出せた作品が、そこにはあった。
■写真ってホンマにすごいんやな
「写真を始めたのは、高校3年生の頃で、当時は学校で友達を撮ったりするくらいでした。たまたまWebでホンマタカシさんの写真を見て、素直にカッコイイと思いました。ホンマタカシさんの作品作りを知ると、自分の方向性に合っていると感じました。僕も人に話しかけて写真を撮るんですけど、自分の中でちょっと距離を置いている部分もあって、ホンマさんの写真を見て共感するものがあったんです。写真ってホンマにすごいんやな。と思って、東京に出てこようと思ったんです。」
今回の作品について伺った。
「昔から人物の写真を撮ることが多く、ダイレクトに反応が返ってくるところが、たまらなく嬉しくて。それで、人物を撮るようになりました。今回テーマは何でもよいということだったので、人物にしました。」
タイトルの「慕情」だが、撮らせてくれた相手と写真に対して、富永氏が慕情にも似た感情を抱いていることに由来するそうだ。
■9割の人に断られる作品作り
ところで、モデルさんはどのように選んでいるのだろうか。
「普通に、何されているんですか?と、話かけるんですが、9割の人には断られますね。」
今回、バトンとなったリコーの「GXR」の印象を聞いてみた。
「いつもファインダーをのぞいているのですが、ディスプレイなのにすごいピントの合う時間が速くて、起動も速かったので、さすがリコーやな、と思いました。撮った写真もシャープで、黒のしまりが非常によかったですね。」
■次の走者は、対照的な写真で刺激的
次に展示する第三走者の大久保 恵さんについてもうかがってみた。
「彼女も僕と一緒の学校出身で、就職せずに作家活動を続けている人です。僕もTaichiさんに写真展の機会をもらえたので、本当にいい写真を撮って頑張っている人に、次に展示してほしいと思ったのでバトンを渡しました。大久保さんの作品をいろんな人に見てもらいたいと思っています。」
大久保さんの作品について聞いてみた。
「僕と対照的な写真なので、僕の中ではすごく刺激的なんです。すごく繊細で、私小説ではないですけど、写真の流れを創るのが上手な人なので、こういう人がちゃんと評価されて欲しいと思います。」
■自分のルーツを撮りたい
最後に、今後の作品作りについてうかがってみた。
「誰かの人生に寄り添うものを撮りたいので、誰かに密着して撮っていきたいというのはありますね。ひとつ考えているのは、おじいちゃんだったり、お母さんだったり、自分の家族を撮っていこうかなと。最近では自分のルーツを撮ることも考えていて、一度福岡だけの写真展をやってみようかなという思いがありますね。」
若い作家は、技術や経験ではベテランの作家に及ばないが、若さが無ければ撮れない作品というものもある。
写真展「GRバトン 写真家リレー」は、今後も毎月第三水曜日を初日として、12人目のアンカーまで写真展が引き継がれていく予定だ。
■リコーフォトギャラリー「RING CUBE」
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最初に、今回の写真展のキッカケについてうかがってみた。
「第一走者のTaichiさんとは学校が一緒で、僕の先輩なんです。その関係で、TaichiさんからRING CUBEで写真展をやるので、次の写真展の走者にどうだ?と言われて。急だったんですけど、チャンスだなと思って、僕もやろうと思いました。」
富永氏が声をかけられたのが、昨年12月末だったというから、本当に急な話だ。第二走者の展示のスケジュールは2012年3月21日とすでに決まっており、写真の最終入稿は3月15日という慌ただしさだ。富永氏は実質2ヶ月で作品を揃えたというから、若さのなせる瞬発力といえる。
写真展までの短い期間に、どのようにして作品作りをしたのか、伺ってみた。
「もともと作品作りは早いほうではありません。街で声を掛けて写真を撮るというスタイルなので、最初は10点展示しようと思っていたんですけど、5点に絞り込むことにしました。時間が少なくて大変という気持ちよりも、作品を発表できるチャンスだ、という気持ちと、人に見てもらえるドキドキ感のほうが勝っていたので、撮影は大変だと思わなかったです。」
写真展のキッカケについて笑顔で語る、富永崇功氏 |
■僅かの時間で全国を飛び回ったフットワーク
今回の富永氏の作品は、1点1点雰囲気がかなり違うのだが、それもそのはず、撮影した地域が全部違うのだ。それもただ場所を変えたというレベルの距離ではなかったのだ。
「最初は統一しようかなと迷ったんですけど、撮影した人の魅力をどのように見せようかと考えて、カッコイイ人はカッコよくと見せようと、モノクロやカラーが混在した作品群にしてみました。」
5作品の撮影場所は、福岡、大阪、鎌倉、栃木など、全国に飛び出し、そこで出会った人を街のたたずまいごと写真に収めている。ハードなテイストがあるかと思えば、優しい質感があったりと、若い感性で切り撮った地域の空気と共に、人が写真に記録されている。
富永氏は、どのようにして全国を飛び回り撮影するスタイルを選んだのだろうか。意外な回答が返ってきた。
「場所とかは、僕の中ではどこでもいいんです。ただ、行きたいなと思ったら、行くみたいな。そんな感じで、ふらっと気が向いて大阪に行ったという感じですね。今思えば、あっちこっち行っているなと。」
写真展「GRバトン 写真家リレー」の様子 |
時間がないからといって近郊だけで撮影すれば、5枚の作品は似通った平凡な作品になったかもしれない。短い時間に臆することなく、行動して写真に向かった姿勢が、生き生きとした躍動感のある5作品を生んだのだろう。
富永氏が実際に動くことで、景色が動いて、感性も動く。動けば動くほど、新しい視界が広がり、それが作品との出会いになっていく。若く行動力のある作家だけが探し出せた作品が、そこにはあった。
■写真ってホンマにすごいんやな
「写真を始めたのは、高校3年生の頃で、当時は学校で友達を撮ったりするくらいでした。たまたまWebでホンマタカシさんの写真を見て、素直にカッコイイと思いました。ホンマタカシさんの作品作りを知ると、自分の方向性に合っていると感じました。僕も人に話しかけて写真を撮るんですけど、自分の中でちょっと距離を置いている部分もあって、ホンマさんの写真を見て共感するものがあったんです。写真ってホンマにすごいんやな。と思って、東京に出てこようと思ったんです。」
今回の作品について伺った。
「昔から人物の写真を撮ることが多く、ダイレクトに反応が返ってくるところが、たまらなく嬉しくて。それで、人物を撮るようになりました。今回テーマは何でもよいということだったので、人物にしました。」
タイトルの「慕情」だが、撮らせてくれた相手と写真に対して、富永氏が慕情にも似た感情を抱いていることに由来するそうだ。
撮らせてくれた相手と写真に対して慕情にも似た感情を抱いているという |
■9割の人に断られる作品作り
ところで、モデルさんはどのように選んでいるのだろうか。
「普通に、何されているんですか?と、話かけるんですが、9割の人には断られますね。」
湘南で声を掛けた、サーファー |
今回、バトンとなったリコーの「GXR」の印象を聞いてみた。
「いつもファインダーをのぞいているのですが、ディスプレイなのにすごいピントの合う時間が速くて、起動も速かったので、さすがリコーやな、と思いました。撮った写真もシャープで、黒のしまりが非常によかったですね。」
写真展「GRバトン 写真家リレー」の様子 |
■次の走者は、対照的な写真で刺激的
次に展示する第三走者の大久保 恵さんについてもうかがってみた。
「彼女も僕と一緒の学校出身で、就職せずに作家活動を続けている人です。僕もTaichiさんに写真展の機会をもらえたので、本当にいい写真を撮って頑張っている人に、次に展示してほしいと思ったのでバトンを渡しました。大久保さんの作品をいろんな人に見てもらいたいと思っています。」
大久保さんの作品について聞いてみた。
「僕と対照的な写真なので、僕の中ではすごく刺激的なんです。すごく繊細で、私小説ではないですけど、写真の流れを創るのが上手な人なので、こういう人がちゃんと評価されて欲しいと思います。」
■自分のルーツを撮りたい
最後に、今後の作品作りについてうかがってみた。
「誰かの人生に寄り添うものを撮りたいので、誰かに密着して撮っていきたいというのはありますね。ひとつ考えているのは、おじいちゃんだったり、お母さんだったり、自分の家族を撮っていこうかなと。最近では自分のルーツを撮ることも考えていて、一度福岡だけの写真展をやってみようかなという思いがありますね。」
今後の作品作りについて語る、富永崇功氏 |
若い作家は、技術や経験ではベテランの作家に及ばないが、若さが無ければ撮れない作品というものもある。
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