iOS(iPhone、iPad、iPod touch)用の音楽アプリで有料にも関わらず大人気のものがある。デジタルアクトによる「FANTABIT」(ファンタビット)というのがそれだ。800円と安いとは言えない値段だが、レビューの評価も高い。これは、音楽好きな筆者としては、試さざるを得ない。ということで早速試してみた。



■デジタルフォーマットの音楽は原音を忠実には再現できていない
知っている人も多いだろうが、iPodなどの携帯音楽プレーヤーや衛星放送で使われるAAC、MP3などといった音声フォーマットは、元データが本来持っているであろう音のデータをカットしている。具体的には「人には聞こえない」とされる周波数の情報はざっくりとカットし、中・低音部でも、実際にはある細かな音の波形を簡略化している。

その理由は、ズバリデータのサイズで、インターネットで配信するにはファイルサイズが小さい方が何かと都合がいいからだ。こうした原音から音を間引いてしまう圧縮音声フォーマットが普及したのは、ネットの帯域が狭い時代では当然であった。こうした圧縮技術によって音楽の細かな部分が再現できなくなったのも事実である。たとえば周波数の高い部分はたとえ人には聞き取れないとしても、鼓膜や脳には伝わっているわけで脳に何らかの刺激を与えているとも考えられる。

音楽CDが登場した直後、アナログレコードと同じ音源を聞き比べた筆者の父親は「シャリシャリして深みのない音だ」と批判していた。圧縮音声フォーマットは、音楽CD以上に音を間引いているわけだから、私たちは知らず知らずのうちに、音楽の楽しみ方を(一部)奪われていることにならないだろうか。もし、元データに含まれている音が全部聞き取れるとしたら、ものすごく深みのある音になるんじゃないだろうか? とも思える。

■広がりとニュアンスを感じ取れ!
そこで「FANTABIT」なのである。このアプリは独自の技術によって圧縮過程で間引かれた音をリアルタイムで補正してから出力してくれる。起動すると、ミュージックライブラリが読み込まれ、プレイリスト、アルバム、アーティスト、曲ごとの表示ができる。シンプルなUIなので操作に迷うことはないだろう。実際にこのアプリを経由して音楽を聴いてみると標準アプリの「ミュージック」で再生したときに比べ、確かに細かな音のニュアンスと広がりが感じられるのだ。

たとえばブラームスの交響曲第一番は、単純な音の連打の中、半音ごとの上昇音と下降音が組み合わされた冒頭部が印象的なのだが、「FANTABIT」で再生すると、上昇音群または下降音群の中にも細かな違いがあることまで表現されている。音楽ジャンルを問わず、作曲家はこうしたことに気を配って作曲している。そうした点からも聞き手にとっても、細かい部分が聴き取れることはすごく大事なことだろう。また、音楽データ全体の音空間も、より広がりをもった豊かな音になって聞こえてくる。音圧のインパクトも大きくなったように感じるのだ。

ものすごく良いことづくめに見えるが「FANTABIT」の課題は、アプリを切り替えた際に音が途切れたり、アルバムジャケットの表示が遅かったりするところもある。また、標準アプリの「ミュージック」では表示されるのに、「FANTABIT」では表示されないアルバムもあった。そして「FANTABIT」による再生回数は、iTunesライブラリには反映されないため再生回数の多い順で再生するといったことができない。

このようにいくつか改善を要する点もあるが、「再生音にこだわりたい音楽好き」なら800円を払っても惜しくないと思う。開発元のデジタルアクトは、このアプリの機能をオーディオ機器に搭載することも検討しているようで、これからの展開にも期待したいところだ。同社には、圧縮音源が当たり前になった音楽再生環境に一大革命を起こして欲しいと思う。


大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

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