『こんな目で娘に見つめられたい!娘と父の美しすぎる蜜月 久保和範写真展「恋人」』で紹介した、NEXT GENERATION 久保和範写真展「恋人」が、東京・銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBE 9Fフォトスペースにて開催中だ。
すべての父親にとって、愛娘は目に入れても痛くないと思わせるほど愛おしく特別な存在だが、その愛娘を、どこのだれよりも美しく写真に写し込める父親は少ない。
久保和範氏は、本人すら知らない隠された美しさ、愛おしさを映し出す魔法の鏡を持っているかのように、見事なまでに隠された人の存在を映し出す。
どのようにすれば、普段は親に見せない隠された素顔を撮ることができるのだろうか、今回の作品と久保さんの撮影の秘密をうかがってみた。
■こんな我が子を撮ってみたい!久保さんの秘密を探る
久保さんの作品の前に立つと、撮り手である久保さんの親としての娘に対する愛情だけでなく、娘から撮り手である親への想いがヒシヒシと伝わってくる。作品をじっとみていると、まるで被写体と心が繋がっているような錯覚を覚えるほどなまめかしい。
我が子とはいえ、どのようにして被写体との距離感をつくっているのだろうか。
特別な家庭や家族ではないという久保さんにお子さんを含めた家庭について、聞いてみた。
「どこにでもある、ごく普通の家庭だと思います。 写真を撮るときに気をつけていることは、自分の目線から撮らないようにすることぐらいです。カメラを構えるときもそうですが、対等のひとりの人間、女性として撮るようにしています。」
久保さんは、対等の人としてお子さんを見て、撮影しているという。
「写真を撮りだして自分でも驚いたのは、普段みている表情とは別の表情が撮れるということです。すごく自分でも面白いと思ってます。」
久保さんによると、お子さんは写真を撮られることを嫌がるときもあったり、照れてピースするような子供らしい仕草もとるなど、普通のお子さんだという。また、お子さんのお友達を撮ったときには、その親御さんから「こんな表情みたことない」と、喜ばれたそうだ。
どうやら、久保さんとお子さんが、特別なのではなく、久保さん自身が、人の隠された表情をとらえる力を持っているのかもしれない。被写体と同じ目線になる、愛情を持って写真を撮るといった、久保さんの写真の撮り方に秘密がありそうだ。
■場所じゃない!どこでもいい人物写真は撮れる
今回展示されている作品は、5点。いつ、どのように撮影されたのか、伺ってみた。
これも意外な回答が帰ってきた。
「撮影場所は、特別な場所ではないです。家のすぐ隣の公園やお風呂で撮っているんですよね。」
真ん中の3つの作品は、御苗場でRINGCUBE賞を受賞した作品と同時期の作品で、のこりの2点は、今年に入って撮影された作品だという。
雪の中で目をつぶっている作品は自宅のすぐ近く、ゴーグルを付けている作品は自宅の風呂場というから、弘法は筆を選ばずならぬ、場所を選ばずだ。
ごく普通の生活の場でも撮り方次第で素晴らしい作品がつくれるというわけだ。
■「人」は「モノ」ではない!人を「人」として撮る難しさ
久保さんが、写真を撮り始めたきっかけは、カメラマンが撮った子供たちの写真を見てからだという。
その時の気持ちを伺うと、興味深い回答をいただいた。
「カメラマンに撮っていただいた写真から、子供の存在や愛情をかんじられなかったんです。その時、根拠は何もないのに、自分ならもっと良い写真を撮れると思っちゃったんです。」
この時、久保さんは記録としての写真と、人の存在を映し出す写真の違いに気がついていたのだ。
今の写真は、シャッターを切れば誰にでも撮れる。だからこそ、ただの映像のメモや記録のように撮れてしまうのだ。
私たちは、写真を撮る時に、被写体に愛情を注ぎ、愛情こめて見つめ、わずかな仕草や表情も感じ取れるほど見ているだろうか?
カメラの前にいる人を、モノや記録でなく、人として向かい合っていただろうか?
久保さんが、誰にも撮れない、本人すらしらなかった表情を写真に定着できるのは、そうした被写体である目の前にいる人と「人」として向かい合っているからなのだ。
カメラの前にいる人を、人として見て撮る。実にシンプルだが、これは、そう簡単なことではない。
久保さんの写真と写真への向き合い方を通して、写真の原点を、あらためて再認識できた気がする。
■娘が結婚して親となるまで撮り続けたい
最後に、今後の展開について、うかがってみた。
「娘は撮り続けますが、その中でいろいろな人を撮りたいですね。最近、二十歳になる女性を撮らせていただいたのですが、本人に見てもらったときに、いつも見ている自分ではでない自分に出会えたと言っていただけました。」
娘さんの撮影については、
「娘が結婚して親になるまで、撮り続けたいと思っています。今回は作品として展示していますが、作品としてだけでなく、娘が自分の思い出として何か感じてもらえるものとなればよいとも考えています。」
作品のモデルでもある娘さんは、今回のインタビューの前日に会場で照れながらも喜んで記念撮影をしたそうだ。
今後の写真への取り組みについては、
「チャンスをいただいたので、自分の写真で何かを表現できるように長い方向で写真と付き合っていければと思っています。これからもたくさんの存在感のある人を撮っていきたいと思っています。」
今回の写真展の作品は、美しくてやさしくて、見ているだけであたたかいものが伝わってくる。久保さんは、人の魅力を引き出す不思議な力を持っているようだ。
■久保和範 氏のプロフィール
1978年、鹿児島県いちき串木野市生まれ
高校、大学と陸上競技(100M走)に没頭。(日本選手権、日本インカレ等に出場)
2009年、娘がクラシックバレエを習い始めたのをきっかけに、デジタル一眼レフを購入。写真を撮る楽しさを知る。
2011年、プリンター湯地信愛氏と出会い、カラーネガフィルムによる作品制作を開始。同年、御苗場 vol.9 関西へ出展、 RING CUBE賞 ・オーディエンス賞 第一位を受賞。
現在、三重県伊賀市在住、食品メーカー勤務
写真展概要
名 称:NEXT GENERATION 久保和範写真展「恋人」
期 間:2012年5月30日(水)~6月18日(月) ※休館日を除く
場 所:リコーフォトギャラリーRING CUBE 9Fフォトスペース
所 在 地:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階/9階(受付)
電 話:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00 (最終日17:00まで)
休 館 日:火曜日
入 場 料:無料
■リコーフォトギャラリー「RING CUBE」
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久保さんの作品の前に立つと、撮り手である久保さんの親としての娘に対する愛情だけでなく、娘から撮り手である親への想いがヒシヒシと伝わってくる。作品をじっとみていると、まるで被写体と心が繋がっているような錯覚を覚えるほどなまめかしい。
我が子とはいえ、どのようにして被写体との距離感をつくっているのだろうか。
特別な家庭や家族ではないという久保さんにお子さんを含めた家庭について、聞いてみた。
「どこにでもある、ごく普通の家庭だと思います。 写真を撮るときに気をつけていることは、自分の目線から撮らないようにすることぐらいです。カメラを構えるときもそうですが、対等のひとりの人間、女性として撮るようにしています。」
久保さんは、対等の人としてお子さんを見て、撮影しているという。
「写真を撮りだして自分でも驚いたのは、普段みている表情とは別の表情が撮れるということです。すごく自分でも面白いと思ってます。」
久保さんによると、お子さんは写真を撮られることを嫌がるときもあったり、照れてピースするような子供らしい仕草もとるなど、普通のお子さんだという。また、お子さんのお友達を撮ったときには、その親御さんから「こんな表情みたことない」と、喜ばれたそうだ。
どうやら、久保さんとお子さんが、特別なのではなく、久保さん自身が、人の隠された表情をとらえる力を持っているのかもしれない。被写体と同じ目線になる、愛情を持って写真を撮るといった、久保さんの写真の撮り方に秘密がありそうだ。
撮影方法について語る、久保 和範 氏 |
■場所じゃない!どこでもいい人物写真は撮れる
今回展示されている作品は、5点。いつ、どのように撮影されたのか、伺ってみた。
これも意外な回答が帰ってきた。
「撮影場所は、特別な場所ではないです。家のすぐ隣の公園やお風呂で撮っているんですよね。」
真ん中の3つの作品は、御苗場でRINGCUBE賞を受賞した作品と同時期の作品で、のこりの2点は、今年に入って撮影された作品だという。
久保和範写真展 「恋人」 |
雪の中で目をつぶっている作品は自宅のすぐ近く、ゴーグルを付けている作品は自宅の風呂場というから、弘法は筆を選ばずならぬ、場所を選ばずだ。
ごく普通の生活の場でも撮り方次第で素晴らしい作品がつくれるというわけだ。
■「人」は「モノ」ではない!人を「人」として撮る難しさ
久保さんが、写真を撮り始めたきっかけは、カメラマンが撮った子供たちの写真を見てからだという。
その時の気持ちを伺うと、興味深い回答をいただいた。
「カメラマンに撮っていただいた写真から、子供の存在や愛情をかんじられなかったんです。その時、根拠は何もないのに、自分ならもっと良い写真を撮れると思っちゃったんです。」
この時、久保さんは記録としての写真と、人の存在を映し出す写真の違いに気がついていたのだ。
今の写真は、シャッターを切れば誰にでも撮れる。だからこそ、ただの映像のメモや記録のように撮れてしまうのだ。
私たちは、写真を撮る時に、被写体に愛情を注ぎ、愛情こめて見つめ、わずかな仕草や表情も感じ取れるほど見ているだろうか?
カメラの前にいる人を、モノや記録でなく、人として向かい合っていただろうか?
久保さんが、誰にも撮れない、本人すらしらなかった表情を写真に定着できるのは、そうした被写体である目の前にいる人と「人」として向かい合っているからなのだ。
カメラの前にいる人を、人として見て撮る。実にシンプルだが、これは、そう簡単なことではない。
久保さんの写真と写真への向き合い方を通して、写真の原点を、あらためて再認識できた気がする。
お風呂場で撮影したとは思えない作品 |
■娘が結婚して親となるまで撮り続けたい
最後に、今後の展開について、うかがってみた。
「娘は撮り続けますが、その中でいろいろな人を撮りたいですね。最近、二十歳になる女性を撮らせていただいたのですが、本人に見てもらったときに、いつも見ている自分ではでない自分に出会えたと言っていただけました。」
娘さんの撮影については、
「娘が結婚して親になるまで、撮り続けたいと思っています。今回は作品として展示していますが、作品としてだけでなく、娘が自分の思い出として何か感じてもらえるものとなればよいとも考えています。」
作品のモデルでもある娘さんは、今回のインタビューの前日に会場で照れながらも喜んで記念撮影をしたそうだ。
今後の写真への取り組みについては、
「チャンスをいただいたので、自分の写真で何かを表現できるように長い方向で写真と付き合っていければと思っています。これからもたくさんの存在感のある人を撮っていきたいと思っています。」
今後の活動について語る、久保和範 氏 |
今回の写真展の作品は、美しくてやさしくて、見ているだけであたたかいものが伝わってくる。久保さんは、人の魅力を引き出す不思議な力を持っているようだ。
■久保和範 氏のプロフィール
1978年、鹿児島県いちき串木野市生まれ
高校、大学と陸上競技(100M走)に没頭。(日本選手権、日本インカレ等に出場)
2009年、娘がクラシックバレエを習い始めたのをきっかけに、デジタル一眼レフを購入。写真を撮る楽しさを知る。
2011年、プリンター湯地信愛氏と出会い、カラーネガフィルムによる作品制作を開始。同年、御苗場 vol.9 関西へ出展、 RING CUBE賞 ・オーディエンス賞 第一位を受賞。
現在、三重県伊賀市在住、食品メーカー勤務
写真展概要
名 称:NEXT GENERATION 久保和範写真展「恋人」
期 間:2012年5月30日(水)~6月18日(月) ※休館日を除く
場 所:リコーフォトギャラリーRING CUBE 9Fフォトスペース
所 在 地:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階/9階(受付)
電 話:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00 (最終日17:00まで)
休 館 日:火曜日
入 場 料:無料
■リコーフォトギャラリー「RING CUBE」
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