複利は「宇宙で最強の力」(by アインシュタイン)
 物理学者アルバート・アインシュタインは「複利」(利息が利息を生む効果)について、「人類最大の数学的発見」「宇宙で最強の力」といったそうです。実は、資産運用において最も大切なことは「複利の効果」を味方につけることです。

以下、複利の効果を理解するため、2問ほどクイズを出したいと思います。是非ともチャレンジしてください。

問1.「マンハッタン島とネイティブアメリカン」
 1626年、北米先住民であったネイティブアメリカンは、白人にわずか24ドル相当分の装身具やビーズでマンハッタン島を売却したといわれます。それから約400年近くもの間、いつもこのことを揶揄(やゆ)され続けてきたネイティブアメリカンですが(ご存知マンハッタンはニューヨークの中心地として栄える)、本当に彼らの行為は愚かなことだったのでしょうか?

 では、この装身具を現金に換え、資金を8%で複利運用していたら現在いくらになるでしょう(大雑把な感覚で結構です)。

問2.「アラブの王の運命」

 昔、昔のアラブでのお話。強大な隣国に攻め込まれ、滅亡の危機に瀕(ひん)した某アラブの国。アラブ王が観念しかけた時、一人の将軍が現れ、強大な敵軍を打ち破り、国を守り通しました。

 戦功のあった将軍に、アラブ王は「褒美(ほうび)を取らせるから何でも欲しいものを言え」といったところ、将軍は「チェッカー盤(縦横8マス、計64マス)をご用意いただき、端のマスに小麦を1粒、その次のマスに倍の2粒、さらに次のマスにはそのまた倍の4粒、といった具合に置いてゆき、最後のマスまで埋めたものを、いただきたく存じます」と頼んだとのこと。王様は将軍に「なんと無欲な」といったらしいですが、実際やってみると……。アラブの王様の運命やいかに???

↓答えと解説は以下をご覧下さい。↓

問1.「マンハッタン島とネイティブアメリカン」の答え
これは世界最大の独立系運用会社フィデリティの伝説的なファンドマネジャー、ピーター・リンチ氏の本に書いてあった逸話です。少し前の本で、データは1990年現在ということですが、24ドル(2260円)を8%で複利運用をした場合、400年近くの歳月を経るとなんと30兆ドル(2820兆円)となるそうです。「8%が高い」というなら6%で計算してみても、347億ドル(3兆2700億円)となり、当時のマンハッタン島の価格281億ドルを上回っています。

400年もの間、きついジョークにされ続けてきたネイティブアメリカンですが、もし当時、米国に債券市場や株式市場があり、彼らがこうしたもので資金を運用していたのなら、マンハッタン島の売却は理にかなっていたということになります(実はネイティブアメリカンの方が得をしたかも知れません)。

※ちなみに米国株式(S&P500)の1925~1999年までの年間リターンは11.2%で、1925年に1ドル投資をした人は、1999年には9930ドルとなりました。年6%という数字はその間の米国の債券市場の平均利回りに近く、現実的な数字です。

問2.「アラブの王の運命」の答え
翌日、家臣は血相を変えて王に言いました。「王様、あの男の求めに応じるには、わが国すべての富をもってしてもあがないきれません」。チェッカー盤のマス目は、全部で64あります。たとえ小麦1粒とはいえ、これを64回倍々で増やしていけば、その数は途方もないものとなります。1を64回倍化(100%の複利運用を64回)させると、その数はなんと、922京(京は兆の次の単位)になったのです。

これだけの小麦を集めるのは不可能でした。しかし、一度結んだ契約を破るわけにはいかず、結局、王は、その国を将軍に明け渡すことになってしまいました。

 さて長々と複利効果の話をしてきましたが、資産運用の基本は冒頭述べた通り複利効果を理解することにあり、この複利効果は利回りの水準(金利が高いほど効果的)と、期間(10年を超える頃から急劇に増える)が重要な役割を果たします。かつて郵便局の定額預金が10年で2倍になったのは、金利が7%を超えていたからです。また、欧州の「ソブリン危機」で国債金利が7%以上となることが「危険水域」とされているのも、10年で元本が倍になり、累積財政赤字の返済が困難視されるからです。

 現状、日本において金利7%の商品は望むべくもありませんが、世界中の債券や株式を組みわせれば、この程度のリターンは十分期待できると思います。

(小沼正則)

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