日銀は4月4日、黒田総裁の就任後初めてとなる金融政策決定会合で、大胆な金融緩和を発表した。アベノミクスの「三本の矢」の第一番目である「大胆な金融緩和」が、本格始動したことになる。

この緩和策の内容と、市場の反応を中心にまとめてみよう。

■マネタリーベースを2倍に
発表された措置の最大の特徴は、物価2%の上昇を「2年程度の期間を念頭に」「できるだけ早期に」実現するため、「量的・質的緩和」という、世界金融市場にも例のない緩和策を打ち出したことだ。

中でも、金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに変更し、マネタリーベースおよび日銀の長期国債・ETF(上場投資信託)保有額を2年間で2倍にするとしたことだ。

昨年末で約138兆円のマネタリーベースは、14年末には約270兆円に拡大される。マネタリーベースとは、日銀の発行した現金と、民間金融機関が持つ日銀当座預金との合計。つまり、市中に資金をどんどん流し、それによってインフレを起こそうというのである。

従来、日銀の緩和策は金利を目標としていた。今後は、極論すれば金利がどうなろうと、資金を市場に流し続けるということである。このため、日銀は長期国債の保有残高を年間50兆円のペースで増加させるとともに、長期国債の買い入れ対象を拡大、買い入れの平均残存期間を3年弱から7年程度に伸ばす。

これは表裏一体の策だ。なぜなら、国債は不断に償還期限を迎えるため、残存期間の長い国債を買わない限り、日銀の保有残高は増えないからである。このほか、不動産投資信託(REIT)、ETFなどのリスク資産も買い増されることになった。

マネタリーベースの2倍化を「目標」にするとは、リーマン・ショックの震源地となった米国や、ソブリン(国家債務)危機の欧州でさえ行っていないことである。もっとも、「目標」にしていないだけで、米国のマネタリーベースはリーマン・ショック以降、約3倍になっているのだが……。いずれにしても、史上まれに見る金融緩和策であることは間違いない。

■「バズーカ砲さく裂」!
ロイターは、この措置を「黒田日銀の『バズーカ砲』さく裂」と表現した。黒田総裁や岩田副総裁は、白川総裁時の緩和策を「兵力の逐次投入」として批判してきたが、「レジームチェンジ(体制転換)」の言葉に違わぬ措置である。

市場はこれに反応、円はすぐさま対ドルで2円以上円安に振れ、日経平均株価は約200円安から272円高まで急反転した。10年債の利回りは史上最低水準を更新した。アナリストの評価も、おおむね高い。

何より、緩和策の内容が事前の予想を上回ったことで、「110点」「120点」などの高評価を与える人が目立つ。国会の答弁を聞いていると、安倍政権も自民党も自信満々のようだ。

一方、冷静な意見もある。英「フィナンシャル・タイムズ」は社説で、措置自身を評価しつつ、「これ以外に選択肢はなかった」と述べた。「資産バブルを招く」などの厳しい意見もある。

むろん、全体に厳しい意見は「押され気味」である。株価は上昇、輸出企業は円安で潤うなど、経済に明るい兆しがあるのは事実だからだ。だが、この勢いが長続きする保証はない。次回は、そのあたりの様相を探ってみたい。

(編集部)


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