アベノミクスは、黒田日銀による「異次元緩和」、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で構成される。緩和策の狙いについては前回触れたので、今回はアベノミクスに対する批判・異論にどのようなものがあるか、概括したい。

ただし、成長戦略についてはその「第一弾」が公表されたものの、正式策定は6月の予定だし、法案化はさらにその先であるため、今回は扱わない。

■恒例とも言える「ムダ遣い」批判
分かりやすい批判から書くと、財政政策に対する「ムダ遣い」批判である。とくに、2012年度補正予算と13年度本予算にある、約10兆円の公共事業に対する批判である。こうした批判は自民党政権時代に繰り返し行われてきたので、目新しい意見ではない。

民主党政権下では「コンクリートから人へ」のスローガンの下、「事業仕分け」などで約5兆円の事業削減が行われた。だが、地方に行けば農業と建設業、若干の公務以外に産業がないところは多い。公共事業の拡大はこうした地域の振興策の面もあり、評価はなかなかに難しいのが実際。「ムダ」か「有益」かはいちがいに決めつけられない。

もう一つは、「消費税増税が前提の対策」という批判だ。14年4月から増税することが決まっているのだから、財政出動は「ありがたみがない」という批判だ。これは一定程度あたっている。ただ、いうところの「ムダ排除」がたいした節約にならなかったのは、民主党政権が実証済み。国内総生産(GDP)の2倍以上という日本の累積財政赤字を考えれば、景気がどうあれ、増税は遠からず避けられない。これはアベノミクスへの批判というよりも、「赤字を積み上げてきた歴代政権の責任」を追及する側面が強いことになる。


■賛否両論の異次元緩和
黒田日銀による異次元緩和策については、さまざまな批判がある。

まず、「物価目標」である2%を上回るインフレを招く可能性がある。緩和策による円安ですでにガソリンが値上がりしているが、原油や食料品などの輸入価格は間違いなく上がる。一方、勤労者の給料はそれほどには上がらないため、実質所得は減り、結果的に消費が増えない(景気は上向かない)という批判だ。安倍政権もこの点は気になっているようで、経済界に「賃上げ」を要請したのはそのためだ。

緩和策は株価などの上昇を招いているが、これは金融資産を保有している中・高額所得者の消費を増やし、景気にプラスに影響している。だが、非保有者はそうはいかないので、「格差が開く」という批判もある。

もう一つ、景気回復となれば長期金利が上昇するので、必然的に国債価格が下がり、金融機関の経営にマイナスに働いて、景気の足を引っ張るという意見だ。たとえば、国債金利が1%上がると、都銀・地銀の合計で6兆円以上の損失となる。こうなると、金融機関は企業への融資を「貸し渋る」ため、景気に悪影響になるわけだ。国債価格がもっと下がることによる、「日本発金融危機」の可能性を指摘する声もある。

これに対する反論は、「だからこそ日銀が国債を買って値下がりを防いでいる」というもの。日銀が国債を買い支えているうちに、金融機関が国債保有を徐々に減らし、イザというときの損失を防ぐという道筋もある。ただ、国債価格の下落はいつ起きるか予想できないので、「そううまくはいかない」という反・反批判もある。

ほかにも批判はあるのだが、大きくは以上のようなものだ。

さらに、対外関係の問題もある。長くなったので、この問題は次回としたい。
(編集部)

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