公職選挙法の改正で、インターネットを使った選挙活動が今夏の参議院選挙から解禁される。従来は、選挙公示後は議員のWebサイトの更新やSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などへ投稿はできなかった。日本の選挙も、ようやく社会の現実に合わせたものに変わることになる。

ネット選挙は政治家の声が有権者にダイレクトに届くというメリットがある一方、なりすましや、候補者への誹謗・中傷などクリアすべき課題も多い。マーケットではこうした問題への対応を含め、インターネットの活用をビジネス領域とする銘柄への注目が集まっている。従来の選挙関連銘柄といえば、投票箱や投票用紙計算機などの設備関連が中心だったが、まさに様変わりとなる。関連銘柄の動向を追ってみた。

■関連業界の動向(1)
動画共有サイトを運営するドワンゴ<3715>は、すでに政治家を登場させた動画放送で知られ、昨年12月の総選挙公示前には党首討論会も行った。法改正を見越したイベント「ニコニコ超会議2」も開催しており、同社の動画サービスを利用した政治家の情報発信が増える期待が高い。

パイプドビッツ<3831>は、政治情報サイト「政治山」を運営する。有権者向けの政治・選挙情報はもちろん、政党・政治家向けにリサーチやタイアップ、セキュリティなどのサービスを提供しているのが強みである。

インターネットモールを主な事業とする楽天<4755>も、政治献金サイト「楽天政治LOVE JAPAN」を運営している。ネット経由で、クレジットカードによる献金で政治家を応援するサービスだが、法改正はプラスに働くことが確実だ。

デジタルガレージ<4819>は、米国の簡易ブログ「ツイッター」の日本における運営会社で、SNS最大手の米「フェイスブック」にも出資している。両サービスは政治家の発言がリアルタイムで配信・共有されるため、有権者の意識を知る場としても注目されている。むろん、日々の政治活動について発信する政治家の増加は必至で、これは利用者のいっそうの拡大につながることだろう。


■関連業界の動向(2)
マクロミル<3730>は日本最大手のインターネット調査会社で、ここ数年着実に業績を伸ばしている。ヤフー<4689>の出資も受けており、そのノウハウが選挙への利用に生かされることは確実。ネット調査は、オプト<2389>(電通<4324>の傘下)も手がけている。

ソフトウエアの不具合を洗い出すデバッグ事業を手掛けているデジタルハーツ<3620>は、サイバー攻撃の対象となりやすい政党・政治家の情報保護のためのサービスを提供する。GMOインターネット<9449>も、成りすまし対策やネット選挙用の支援サービスを手がける。

インターネット広告大手のサイバーエージェント<4751>は、最大級のユーザーを抱えるブログサービス「アメーバ」でも知られる。ネット選挙が解禁されれば、ブログを利用する政治家が急増、話題にする一般有権者も増えると見られ、同社には追い風だ。


■注目銘柄は?
インターネットの利用には、誹謗(ひぼう)・中傷や「なりすまし」によるデマ情報の拡散など、「負の側面」もあり得る。現に、昨年の総選挙告示前には、野田首相(当時)もニセ者が出現する騒ぎがあった。だが、こうしたことを恐れるだけでは、「先進国並み」の選挙活動にはなり得ない。

インターネットによる選挙運動は、投票率の低い若年層の政治参加にも役立とう。そうなれば、とかく喧伝(けんでん)されがちな、社会保障制度をめぐる「世代間対立」に関する建設的議論も進み、日本の政治を改革することにもつながることが期待できる。このビジネスに携わる企業には、そのような使命感と責任も求められることは言うまでもない。

株価的には短期資金の流入で急動意するものが多いが、話題性のみの短期銘柄、中期的な業容の拡大が期待できる銘柄が混在しており、その辺を整理しながら買い候補を探ってみたい。業績回復で復配となったパイプドビッツ、地味ながらマクロミルなどに妙味がありそうだ。

(小沼正則)

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