金利とは利子のことで、借りた金銭の一定割合を、借りた分(元本)に加えて支払う対価のことだ。日銀は経済事情に合わせて金利を操作している。現在行われている「アベノミクス」では金融市場調節の目標が変更されたが、経済活動において金利の重要性が変わったわけではない。
今回は、政策金利に迫ってみる。
■政策金とは何か
政策金利とは、中央銀行が景気に影響を及ぼそうとする際に、上下動させる金利のことである。この仕組みは国によって微妙に異なっているが、操作対象となるのが1年未満の短期金利であることは共通している。
年配の人なら「公定歩合」という言葉を聞いたことがあるだろう。これは、日本銀行が一般の銀行に資金を貸し出す際の金利である。1990年代半ばまでは、各銀行の預金金利はこの公定歩合と連動するように規制されていた。日銀は、この上げ下げを通じて景気を引き締めたり、刺激したりしていた。ここでは、公定歩合=政策金利であった。
これに対し、90年代半ばから最近までは「無担保コール翌日物」が政策金利の役割を果たしてきた。これは、銀行が資金を融通し合う「コール市場」(実体はコンピュータ・ネットワーク上の取引)において行われる、「翌日返済」分の金利である。2010年10月以降、日銀はこの金利0.0~0.1%を誘導目標としてきた。
たとえば、日銀が金利を引き下げようと思った際には、銀行から国債や手形を買い取る(買いオペ)ことで、金利を下げたのである(逆は「売りオペ」)。
■アベノミクスは政策金利目標を廃止
4月、黒田新総裁が就任して初の日銀金融政策決定会合で「無担保コール翌日物」を金融政策の目標とはしないことが決まり、代わりにマネタリーベース(現金通貨と金融機関の日銀当座預金残高の合計)が操作目標とされた。
むろん、「無担保コール翌日物」自体がなくなったわけではない。アベノミクスは「無担保コール翌日物」の金利水準に関係なく、「買いオペ」でマネタリーベース量を増やす(2年で2倍が目標とされている)政策である。なお、現在のこの金利水準は、0.07~0.08%である。
■日本は最近まで、実質金利高で円高だった
さて、金利を考える際には、名目金利と実質金利を理解することが重要だ。アベノミクスのような思い切った政策が出てきた背景は、デフレが実質金利に与える影響が大きいからである。
日銀がいくら金利を下げて景気を良くしようと思っても、0%以下に下げることはできない。だが、デフレで物価が下落していると、名目金利が0%で金融政策での対応がこれ以上できない状態であっても、実質金利は高いので景気が良くならない。これを「流動性のワナ」と言う。
もう少し説明しよう。たとえば、銀行金利(名目金利)が0%で、物価が1年間で5%低下したとする。銀行から1万円を借りてモノを買う。同じモノの値段は1年後に9500円に下がるが、銀行からの借金は1万円のまま。仮に、モノを9500円で売って借金を返そうと思っても、500円分自腹を切らなければならない。つまり、実質金利は5%(名目金利ー物価上昇率)ということになる。このように、デフレ下では実質金利が上がるため、借金の負担が重くなる。
借金の負担が重くなるのだから、「ローンを組んで高額品を買おう」という人は減る。景気は悪化し、勤労者の賃金は減ってモノはさらに売れなくなる。企業は売ろうと思って物価を下げる……。これがデフレスパイラルである。実質金利が上がることは、他国の人にとっては、円で持っている資産価値が上がるということで円高要因でもある。円高になれば、輸出企業の業績はさらに悪化する。
安倍政権と日銀が、「デフレ脱却」に強い決意を示したのは、デフレが実に恐ろしく、デフレスパイラルからの脱却が容易ではないからなのだ。
(編集部)
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政策金利とは、中央銀行が景気に影響を及ぼそうとする際に、上下動させる金利のことである。この仕組みは国によって微妙に異なっているが、操作対象となるのが1年未満の短期金利であることは共通している。
年配の人なら「公定歩合」という言葉を聞いたことがあるだろう。これは、日本銀行が一般の銀行に資金を貸し出す際の金利である。1990年代半ばまでは、各銀行の預金金利はこの公定歩合と連動するように規制されていた。日銀は、この上げ下げを通じて景気を引き締めたり、刺激したりしていた。ここでは、公定歩合=政策金利であった。
これに対し、90年代半ばから最近までは「無担保コール翌日物」が政策金利の役割を果たしてきた。これは、銀行が資金を融通し合う「コール市場」(実体はコンピュータ・ネットワーク上の取引)において行われる、「翌日返済」分の金利である。2010年10月以降、日銀はこの金利0.0~0.1%を誘導目標としてきた。
たとえば、日銀が金利を引き下げようと思った際には、銀行から国債や手形を買い取る(買いオペ)ことで、金利を下げたのである(逆は「売りオペ」)。
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むろん、「無担保コール翌日物」自体がなくなったわけではない。アベノミクスは「無担保コール翌日物」の金利水準に関係なく、「買いオペ」でマネタリーベース量を増やす(2年で2倍が目標とされている)政策である。なお、現在のこの金利水準は、0.07~0.08%である。
■日本は最近まで、実質金利高で円高だった
さて、金利を考える際には、名目金利と実質金利を理解することが重要だ。アベノミクスのような思い切った政策が出てきた背景は、デフレが実質金利に与える影響が大きいからである。
日銀がいくら金利を下げて景気を良くしようと思っても、0%以下に下げることはできない。だが、デフレで物価が下落していると、名目金利が0%で金融政策での対応がこれ以上できない状態であっても、実質金利は高いので景気が良くならない。これを「流動性のワナ」と言う。
もう少し説明しよう。たとえば、銀行金利(名目金利)が0%で、物価が1年間で5%低下したとする。銀行から1万円を借りてモノを買う。同じモノの値段は1年後に9500円に下がるが、銀行からの借金は1万円のまま。仮に、モノを9500円で売って借金を返そうと思っても、500円分自腹を切らなければならない。つまり、実質金利は5%(名目金利ー物価上昇率)ということになる。このように、デフレ下では実質金利が上がるため、借金の負担が重くなる。
借金の負担が重くなるのだから、「ローンを組んで高額品を買おう」という人は減る。景気は悪化し、勤労者の賃金は減ってモノはさらに売れなくなる。企業は売ろうと思って物価を下げる……。これがデフレスパイラルである。実質金利が上がることは、他国の人にとっては、円で持っている資産価値が上がるということで円高要因でもある。円高になれば、輸出企業の業績はさらに悪化する。
安倍政権と日銀が、「デフレ脱却」に強い決意を示したのは、デフレが実に恐ろしく、デフレスパイラルからの脱却が容易ではないからなのだ。
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