半導体業界はボーダレスの業界であり、世界的にはそれぞれに企業が、それぞれの位置で比較優位を確立し、それぞれの役割を分担している。スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末などの最終製品は、米アップルや韓国サムスン電子が「勝ち組」となっている。だが、これらの製品製造で大きな役割を果たしているのは、鴻海(ホンハイ)、エイスース(華碩電脳)、エイサー(宏碁)といった台湾勢の受託製造メーカーである。

日本企業は、この国際水平分業化に乗り遅れ、垂直統合(自社一貫生産)にこだわったことで競争力を失ったとされる。現在、日本の半導体関連で強みを持っているのは、これらに電子部品(CPU=演算装置は除く)を供給したり、または製造装置を供給したりという役回りで、製造や最終製品での存在感はいちだんと薄くなっている。もっとも、個々の企業には世界的な競争力を持つものも多く、今回はこれらの銘柄にスポットを当ててみたい。


■東京エレクトロン
東京エレクトロン<8035>は原価や経費削減が進んでおり、半導体市況の改善に乗る態勢が整ってきた。2014/3期はメーカーの設備投資計画の上方修正もあり、売上高5700億円(前年比14.6%増)、営業利益180億円(同、43.4%増)と大幅な増収・増益を見込む。製造装置では、次世代メモリであるHMC(ハイブリッドメモリキューブ)、ウェハレベル・パッケージング、3次元積層などの成長期待分野に重点的に投資することでシェア拡大を狙う。また、子会社の東京エレクトロンデバイス<2760>は独自のエレクトロニクス製品にも定評があり、太陽光発電システムを効率化するコントローラ、NAND型フラッシュ・メモリ向けIPコア(回路情報)などを販売ししっかりした実績がある。

■アドバンテスト
半導体試験装置世界トップのアドバンテスト<6857>も、今期は売上高1600億円(前年同期比20.0%増)、営業益130億円(前期はわずか8000万円)と、業績が大幅に向上する。最近ではMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)センサー・テストの市場にも参入。早速、米フリースケール(モトローラから分社した半導体メーカー)向けの実績をつくった。

■ディスコ
半導体研削切断装置のトップメーカーのディスコ<6146>も、半導体チップ切断装置「ダイシングソー」や研磨装置「グラインダ」の設備投資が回復基調であることから、今期は売上高975億円(4.0%増)、営業益は138億円(19.0%増)と、こちらも大幅な増収・増益を見込む。加工装置での同社の世界シェアは70%にも達するが、事業の新たな柱としてレーザ光によるウエハー切断・内部改質装置(レーザソー)でさらに地位の強化を図っている。

■上記銘柄の特徴点
このところアップルの不振が言われているが、クックCEO(最高経営責任者)は「今秋および2014年を通して」新製品を発表することを示唆しており、半導体製造各社の投資に好影響を与える期待が高まる。新ジャンルを切り開く画期的商品に期待したい。

もっとも競争が激しいスマートフォンをめぐっては、「ファイヤフォックスOS」などの新規参入に加え、米マイクロソフトが「ウィンドウズ・フォン」で追い上げることも予想される。OS(基本ソフト)のシェアでは首位の米グーグルも安泰ではないし、製品メーカーでの勝者も予想しがたい。

IT(情報技術)端末は、パソコン以来変遷してきており、スマートフォンやタブレット端末の支配力も永久に続くわけではない。グーグルはメガネ型端末「グーグル・グラス」を開発中であり、アップルは時計型端末を開発中とのウワサもある。ただ、これらが成功する保証はない。メーカーの勝者も変わっていくし、受託製造メーカーもその地位に甘んじてはいないだろう。

他方、製造装置の勝者はこの数年、それほど変わっていない。地味ではあるが、製造装置メーカーの果たすべき役割は重要である。円安という有利な環境もあり、栄枯盛衰の激しい半導体業界の中で、確固とした地位を築く上記のような、日本の半導体関連各社は、非常の面白い位置にある。各社の株価ともこの半年、右肩上がりトレンドを継続しているが、まだ上値の余地は大きいと判断する。注目してみたい!

(小沼正則)

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