アベノミクスが表明された昨年11月以降、ほぼ一本調子で上昇してきた株式市場で調整色が濃くなっている。長期金利も1%に迫り、一部ではアベノミクスの「凋落(ちょうらく)」がささやかれる事態となっている。

なぜこのような事態になったのか? 以降の日本市場に不安はないのか?

■FOMC議事録が引き金?
株価下落は、5月22日に行われた、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長による米議会での証言の後に起こった。世界に膨大なマネーを供給してきた、米国の量的緩和(QE3)が縮小する可能性が浮上したからである。

もっとも、バーナンキ議長の議会証言自体は、「性急な金融引き締めは金利上昇をもたらし、景気回復を止める恐れがある」と、QE3の継続を述べたものであった。ところが、その後の議員との質疑において、QE3による資産買い入れの減速があり得るような発言を行った。しかも、5月1日まで行われた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公開され、そこでは複数のメンバーが緩和縮小を6月にも行うよう主張したことが明らかになった。

これにより、米国の緩和策が「出口」へと向かい、日本の株式市場を支えている外国からの資金流入が「途絶えるのでは?」という懸念が浮上することになった。さらに、HSBCが公表した中国の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が7カ月ぶりの低水準となったことが追い打ちをかけた。

■調整であり「本格下落」ではない
では、日本の株式市場は、今後下落へと向かうのか? 編集部では、その可能性は薄いと判断する。

まず、昨年11月以来の一本調子の株価上昇が異常だったことだ。このあたりで調整的下落があることの方が自然で、それがなければ「バブル色」がいちだんと強まるところである。アベノミクス登場以前、日本の株価は歴史的な割安水準にあり、下落前にはようやく「適正」と言えるものとなっていたからである。

また、米国経済は雇用回復が依然遅いなど、そう簡単に「出口」へと向かえる状況にはない。仮に、雇用回復のないままに「出口」に向かえば、オバマ政権は来年の中間選挙で厳しい批判を受けかねない。そうすれば、残る任期中は政権が「死に体」となってしまう可能性が高い。FRBの少数意見ほどに、米国の「出口」は簡単ではないと予想する。

以上の点から、当面の調整さえ終われば、日本の株式市場は再び上昇に転ずると予想する。

(編集部)

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