「アベノミクス」の一環である、黒田日銀総裁による「量的・質的緩和」では、大きく3つのことを決めている。
それは、(1)2%の物価上昇率(インフレ)目標、(2)国債や上場投資信託(ETF)などの金融資産買い入れを量的にも種類においても拡大する、(3)マネタリーベースを2年で2倍に増やすというものである。
では、ここでいう「マネタリーベース」とは何だろうか?
■市中の流通現金
日銀の定義によれば、マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことである。具体的には、「日本銀行券発行高」と「貨幣流通高」、さらに「日銀当座預金」の合計ということになる。
国によっては「ベースマネー」、経済学の教科書では「ハイパワードマネー」と呼ばれる。
「日本銀行券発行高」とは、日本銀行が発行した紙幣の合計額で、日本国内に存在する紙幣の合計高(日銀自身が保有している分は除く)のこと。「貨幣流通高」とは、政府が発行する貨幣の量である。紙幣は日銀が独占的に発行するが、貨幣は政府が発行することに注意されたい。「日銀当座預金」とは、金融機関が日銀内にもつ口座にある残高である。
日銀が「量的・質的緩和」を行う際、金融機関から国債などを買い取り、その代金を当該金融機関の日銀当座預金口座に振り込む。金融緩和とは、直接的には日銀当座預金を増やすことで、ベースマネーを増やすのである。
■設備投資など融資増加を狙う
現在、先進国はいずれも金融緩和を行っており、ベースマネーを増やす政策を採っている。これはとくに、日本(日銀)と米国(連邦準備理事会=FRB)に顕著だ。
ところで、各国の中央銀行が緩和政策でベースマネーを増やしている目的は何か。むろん、日銀当座預金を増やすこと自身が目的ではない。実は、各金融機関は日銀当座預金高を超えた部分の預金を企業などへの融資にあてる。このため、日銀当座預金残高が多ければ、銀行からの設備投資などに向けた貸出が増える。金融緩和で日銀当座預金を増やすことの狙いは、このプロセスを通して、経済活動を活発にすることである。
■お金が日銀内に滞留する?
ところが、そう簡単にいかないのが経済の難しさだ。2008年のリーマン・ショック以降、各国とも金融緩和でマネタリーベースは急拡大しているのだが、「実際の経済活動で流通している資金の総量」はそれほどには増加していない。
実際の経済活動で流通している資金の総量は「マネーストック」と呼ばれ、簡単に言えば「金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量」だ。預金をどの程度まで含めるかなどの基準により、「M1」「M2」「M3」などいくつかの指標がある。ベースマネーは、マネーストックの一部ともいえる。
要するに、現在までのところ、日銀が緩和政策を行っても、実際の経済活動はそれほどには活性化してはいない。日銀当座預金の金額だけが増加し、実際の経済活動ではさほど使われていないのである。それどころか、金融機関は日銀当座預金の資金を使って株式などの金融資産の売買を行い、これが世界的な資産価格の高騰を招いている。マネタリーベース実体経済では使われず、投機マネーに化けているというわけだ。
とはいえ、直近の株価の変調もあり、金融緩和の効果を見定めるのはまだ早いかもしれない。マネタリーベースもマネーストックも日銀のサイトで見ることができるので、その推移から、経済活動の具合を類推してみると面白い。
(編集部)
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日銀の定義によれば、マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことである。具体的には、「日本銀行券発行高」と「貨幣流通高」、さらに「日銀当座預金」の合計ということになる。
国によっては「ベースマネー」、経済学の教科書では「ハイパワードマネー」と呼ばれる。
「日本銀行券発行高」とは、日本銀行が発行した紙幣の合計額で、日本国内に存在する紙幣の合計高(日銀自身が保有している分は除く)のこと。「貨幣流通高」とは、政府が発行する貨幣の量である。紙幣は日銀が独占的に発行するが、貨幣は政府が発行することに注意されたい。「日銀当座預金」とは、金融機関が日銀内にもつ口座にある残高である。
日銀が「量的・質的緩和」を行う際、金融機関から国債などを買い取り、その代金を当該金融機関の日銀当座預金口座に振り込む。金融緩和とは、直接的には日銀当座預金を増やすことで、ベースマネーを増やすのである。
■設備投資など融資増加を狙う
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ところで、各国の中央銀行が緩和政策でベースマネーを増やしている目的は何か。むろん、日銀当座預金を増やすこと自身が目的ではない。実は、各金融機関は日銀当座預金高を超えた部分の預金を企業などへの融資にあてる。このため、日銀当座預金残高が多ければ、銀行からの設備投資などに向けた貸出が増える。金融緩和で日銀当座預金を増やすことの狙いは、このプロセスを通して、経済活動を活発にすることである。
■お金が日銀内に滞留する?
ところが、そう簡単にいかないのが経済の難しさだ。2008年のリーマン・ショック以降、各国とも金融緩和でマネタリーベースは急拡大しているのだが、「実際の経済活動で流通している資金の総量」はそれほどには増加していない。
実際の経済活動で流通している資金の総量は「マネーストック」と呼ばれ、簡単に言えば「金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量」だ。預金をどの程度まで含めるかなどの基準により、「M1」「M2」「M3」などいくつかの指標がある。ベースマネーは、マネーストックの一部ともいえる。
要するに、現在までのところ、日銀が緩和政策を行っても、実際の経済活動はそれほどには活性化してはいない。日銀当座預金の金額だけが増加し、実際の経済活動ではさほど使われていないのである。それどころか、金融機関は日銀当座預金の資金を使って株式などの金融資産の売買を行い、これが世界的な資産価格の高騰を招いている。マネタリーベース実体経済では使われず、投機マネーに化けているというわけだ。
とはいえ、直近の株価の変調もあり、金融緩和の効果を見定めるのはまだ早いかもしれない。マネタリーベースもマネーストックも日銀のサイトで見ることができるので、その推移から、経済活動の具合を類推してみると面白い。
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