先月末以来、株式市場は大きく下げる展開となっている。きっかけはバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長による議会証言と議事録公開により、量的緩和(QE3)が縮小されるという観測が広がったことだ。議長の発言は雇用情勢の回復など、緩和縮小には前提条件を付けたが、マーケットは過敏に反応した。議長としても「緩和慣れ」のマーケットに対し、どの程度動揺するのかを確かめたいという思惑があったのかしれない。世界マーケットは米金融緩和により上昇してきたという側面は否定しがたく、当面は避難訓練(緩和縮小の発言)を繰り返しながら、耐性をつけていくことになろう。

このような局面ではテーマ株やムードだけで買われた銘柄は、調整も厳しくなる。米国経済の回復が明らかとなり、世界経済の拡大傾向への確信が深まる中、世界的な競争力を有する銘柄の押し目を丹念に拾うことが安全策といえよう。今回はトヨタ<7203>とクボタ<6326>に注目してみたい。

■トヨタ
トヨタは、業績回復で2013/3期の営業利益が5年ぶりに1兆3000億円を超え、前年度の3倍以上となった。売上高営業利益率も6%台となり、独フォルクスワーゲン(VW)と並ぶ水準。円安の効果はもちろんだが、これまでの5年間で1兆円以上のコスト削減を進めた効果が大きい。地道な部品共通化や製造ラインの短縮が生きた。

市場別では、米国市場に加え、反日デモの影響でマイナスになっていた中国市場での回復が見えてきた。5月の販売台数は、デモ後で初めての実質プラス(0.3%増)に転じ、工場の稼働率も以前の水準に戻った。中国で先行する欧米勢に追いつくのは容易ではないが、近いうちに小型車「ヤリス」の新モデルを発売する計画だ。「ヤリス」は現地調達を進めることで価格を2割程度低減させており、価格競争力を高めた戦略商品だ。

対する国内販売は、アベノミクスによる景況感の上向きや、新型クラウンなどが寄与し、4月は5カ月ぶりに前年実績を上回る11万5481台(7.1%増)となっている。カー用品で他業界との連携を進め、女性向けやペット用を中心に販売強化に取り組む構えだ。

今期の設備投資は現在の水準を維持する計画だが、中長期的には東南アジアが中心となろう。すでに、4月の海外生産が46万4586台(前年同月比10.7%増)で単月として過去最高となるなど、生産の重点は海外に移っている。

株価は5月高値6760円から1000円兆幅の調整となったが、世界の自動車株の時価総額トップとなったことで、同社株は外せない銘柄となってきた。指数反発局面では真っ先に買われることになりそうだ。

■クボタ
クボタは、減少傾向が続いてきた国内の農機・エンジン部門の売り上げが底入れのきざしを見せるなどで、2013/3期は純利益が約2割増。リーマン・ショック以降の低迷を超えて成長路線に乗った。

さらに環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を踏まえ、高齢化と大規模化を進める農家の需要への対応を強める。全地球測位システム(GPS)搭載で運転席の空間を広げたトラクターや、梨やブドウの収穫時などに作業を補助するアシストスーツの開発を行い、大規模農家や農業生産法人への販売を進めている。また、昨年買収したノルウェーの作業機子会社・クバンランドの草刈り機なども投入する予定だ。2018/3期までの国内の農機・エンジン部門の売上高を昨期比で2割増やす計画。

同社の目標は、現在1.1兆円前後の売上高を、5年で2兆円に伸ばすこと。すでに売上高の半分以上は海外市場からのもの。中国市場ではモミ収穫率の高いコンバイン、米国市場では動きが軽快なトラクターなどが好評なように、現地の需要に合わせた製品展開が強みだ。大型トラクターの投入で、米国や中国など海外市場での穀物生産量増大などに対応する。大型トラクターは中小型車に比べて利幅も大きいため、業績への貢献も期待される。

農機具以外では、インドネシアやマレーシアなど新興国での自動販売機の拡販も進め、2016/3期には20億円規模の売り上げをめざす。

同社は農機具や水道用資材など「水」にこだわることで、世界の農業機械メーカー、米ディーア&カンパニー(ブランド名「ジョン・ディーア」)や米ニューホランドAg(イタリアのフィアット傘下)の追撃を図る構えだ。

株価は5月高値から大きく調整したが、75日線がサポートしており、ここは押し目買い好機といえそうだ。

(小沼正則)

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