光の線が上から下に動き書類をラインスキャンする


スキャナーの新しい形 PFUより新技術を採用したドキュメントスキャナー」でお伝えしたようにPFUが非破壊式の新しいドキュメントスキャナー「ScanSnap SV600」を発表した。

この機械がPFUの自社関連商品を紹介する展示会「PFU IT Fair 2013」の会場でお披露目された。量産前の試作機モデルになるが、実機の動作を実際に見ることができらので動作や操作感などをお伝えしよう。


スキャナーと言えば、原稿台の上にスキャンしたい対象物を置き、撮像素子(CCDやCMOS)を動かしてスキャンを行うフラットベッドタイプとADFが搭載されており、1枚1枚紙を送ってスキャンするシートフィードタイプなどがある。ドキュメントスキャナーは、後者の形が基本だ。

また読み取れるサイズは、10万円近くするハイエンド製品を除いて一般的にA4サイズ程度までとなっている。
A4以上のサイズをスキャンしたいとなるとフラットベッド型、シートフィード型、いずれも価格が一気に跳ね上がってしまう。最も安くても10万円弱と個人で導入するのに躊躇してしまう価格になる。

A4サイズまでの文書を連続してスキャンするにはPFUの「ScanSnap iX500」といったドキュメントスキャナーは便利だ。読み取り速度も高速だし、ADF搭載なので複数枚セット可能、しかも1パスで表裏がスキャンできるので読み取り時間も半分で済む。

■裁断せずにスキャンが可能な非破壊型スキャナー
このドキュメントスキャナーの代表的な使い方と言えば「自炊」だろう。この言葉の意味は、自分で炊事を行うということではなく、製本された書籍等を裁断機を利用して1ページごとに分解し、それらのページを一気にスキャンしてデジタルデータ化してPCやスマホ&タブレットで利用できるようにすることだ。個人が自分でお金を出して購入した書籍を裁断してスキャンする行為は、法律で認められているので何ら問題はない。

その一方でスキャン代行業が登場し、個人に変わり書籍の裁断やスキャンを有償で行ってくれるサービスがあった。このサービスが「複製権」の侵害に当たり違法であるとされる。こういった問題から、自炊業者への提訴などがあり、自炊代行業者の数が減るなどしてきている。

いずれにせよ、書籍をドキュメントスキャナーを使ってスキャンするためには裁断する必要があるわけだ。しかし、歴史的価値が高かったり貴重なために裁断自体ができない古書や重要事項が書かれている契約書といったモノをデジタル化しようとすると、いままでのスキャナーを使ったデジタル化は非常に難しい。そんな従来型のスキャナーではスキャンが難しい書類でもスキャンできるのが今回の製品だ。

■非接触かつ非破壊でスキャンが可能
この製品は、スキャン対象物の上部から原稿に触れることなくスキャンできる。書画カメラのように上から撮影する形式のスキャナーはあるが、この製品は、原稿を上部からラインスキャンする。カメラで画像として撮影するタイプでは、光などの影響などがあり、スキャン後の結果がシードフィードやフラットベッド型とはかなり異なる。今回の製品は、ラインスキャンなのでスキャン結果がシードフィードやフラットベッドなどに近い品質になる。

原稿に接触せずにスキャンが可能ということは、製本されたままの本でも裁断することなくスキャンできるということになるわけだ。なお実際にスキャンする際には付属の黒いシートを使い、書類のエッジを認識しやすくする必要がある。また、本なら紙が浮いてしまうことを防止するために手などで押さえる必要がある。

スキャン動作はいくつかのモードがあり、ブックスキャンモードならページめくりを自動検出するので、始めに1回ボタンを押すだけで1回あたり約3秒で順次スキャンできる。あとはページをめくっていくだけで、ページがめくられたことを自動的に認識してスキャンを連続で行ってくれる。このブックスキャン機能は全ページの電子化は必要なく、数ページだけ電子化したい場合などにも有効に使えるだろう。

紙を押さえるための指を手動で削除しているところ


本を開いてスキャンするのでスキャンしたオリジナルデータはページが盛り上がったりゆがんだ状態になるが、ページのゆがみは自動で判別し補正処理を行ってくれる。このためスキャン後の結果は一般的なスキャナと同じようなデーターとなる。指でページを押さえた場合、指もスキャンされてしまうが、写ってしまった指は、比較的簡単に削除できるようになっている。

この指の削除は現時点で1ページごとに行わなければならないなど、ソフトウェア面で改良の余地はあるものの、実際のスキャン結果は個人的には必要十分な品質と感じた。1台のPCにScanSnap iX500とSV600の2台を同時に接続して使うこともできるとのことなので、スキャンする原稿に応じてスキャナを使い分けるのも良さそうだ。

ドキュメントスキャナーの高速性にはかなわないがA3までの比較的大きな書類や裁断できない書類などが結構あるという方には活用の幅も広がりそうな一台といえるだろう。

なおこの製品の登場で、出版業界がさらに追い込まれるといった主張をしている人がいるようだ。「このスキャナーが出たことで悪いことし放題、社会的影響が大きい」といった斜め上の意見だが、なかなかユニークな発想だ。そもそも「スキャン作業が大変だから書籍を違法にスキャンする人が少ない」ということではないだろうからだ。

たとえば貴重な品があったとして「それがいままで盗むのが大変だだったから、盗まれることがなかった」というのではなく「人のモノを盗むのは違法行為だから、してはいけない」という当たり前の認識をしているからだ。もちろん、そうした認識をしていない人もいるだろうが、そうした意見(盗むのが楽なら、みんなで盗み放題)が主流ではないだろう。

同じように自分に所有権がない書籍を丸ごとスキャンするのは「違法である」と理解している人は、この製品を使っていても違法行為は行わないだろう。逆にこの製品が出る前から、悪いことをしていた人は、すでに行っていると考えるほうが自然だ。

何より自己所有の書籍を裁断する必要がなくなったというのは、書籍を愛し、それを将来的に残したいという意思で自炊をしてきたユーザーにとっても朗報だ。本当に大事にしている書籍を紙の状態とデジタル化した状態の両方で保存しておけるというのは、非常にうれしい話であって、出版不況を憂う必要はまったくないだろう。そういった意味で今後もPFUには製品開発を頑張っていただきたい。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

ScanSnap SV600
PFU

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富士通 ScanSnap SV600 FI-SV600
富士通 ScanSnap SV600 FI-SV600 [Personal Computers]