米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が金融緩和縮小、いわゆる「出口」に言及したことで世界のマーケットが混乱している。とりわけ年初以降、圧倒的なパフォーマンスを誇った東京市場は、ヘッジファンドの売り攻勢に大きく値を崩す展開となっている。

6月11日の日銀金融政策決定会合の「ゼロ回答」、安倍首相の「成長戦略」(日本再興戦略)も期待が大きかった外国人投資家には受けが悪く、日本売りへの口実となっている。引き続きボラティリティーの高いマーケットだが、この異常な事態は終盤戦だろう。先週も述べたように、競争力の強い銘柄の押し目を丹念に拾う好機でもある。今回は、デンソー<6902>とユニ・チャーム<8113>を取り上げたい。

■デンソー
デンソーは、2013年3月期からの中期計画を策定し、実施し始めたばかり。2016年3月期までを目標に「持続的成長に向けた事業拡大へのチャレンジ」などを掲げ、売上高4兆円(2013年3月期は3兆5800億円)をめざす。

同社がトヨタ自動車<7203>系であることは言うまでもないが、エンジンを始動させるスターターを独BMWの中国工場に納入することが内定しているなど、国外他社との取引も増えている。デンソーにとっても、販路多角化によるリスク分散というメリットがある。

国内自動車各社は東南アジアや北米での販売が伸びているが、デンソーもインドや北米に部品工場を新増設して対応を急いでいる。2014年3月期の設備投資は前年より約300億円多い2600億円を計画。うち約半分を海外に投じ、グローバル生産体制を構築する計画。国内での投資では、環境技術分野での新製品の量産体制を整える。

新製品では、自動車のバックカメラの汚れを、運転席からの操作で洗浄する「バックカメラウォッシャー」を発売。トヨタ以外での採用も働きかけていく。7月には、クラウドと連携する車両診断サービスソフト「DST-クラウド」を発売、車両メンテナンスの適正化・効率化に貢献する。

デンソーの2013年3月期純利益は前期の約2倍に伸びるなど、中期計画の出だしは好調。円安要因だけでない、確かな競争力に裏付けられた同社の健闘に注目したい。

株価は5月高値後の調整局面となっているが、4,000円割れには買いも入り、この辺が底値となる可能性は高い。チャンス到来と判断したい。

■ユニ・チャーム
ユニ・チャームは現在、2014年3月期までの第8次中期経営計画の終盤。現状を「10年後(2021年)の躍進に向けた足場固めの期間」と位置付け、新興国での参入拡大と先進国市場の活性化をめざしている。

同社は生理用品、子供用紙おむつでの国内トップシェアを生かし、海外、とくにアジアでの実績づくりが着実に進んでいる。営業益で最高益更新が続いているが、今期も更新するのは確実な情勢だ。

2013年3月期には海外売上高が全体の5割を超えた。とくに、新興国の代表格・インドネシアでの紙おむつのシェアで約60%を握る。同国にはプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)も進出を加速させているが、ジャワ島に第3工場を建設して地方での市場確保を進める。

中国でも、製品を販売する都市は1000を超え、年3割ペースの増収。課題は、競争激化と内陸部での市場開拓のコストによる、中国事業での利益率の低下。成長を維持するための方策として、中国以外での投資を強める。2014年3月期には500億円程度を同日計画で、インドで生理用品を製造する第2工場の建設に着手するほか、アラブ首長国連邦(UAE)などの中東地域でも投資を行い、増産効果を狙う。

一方、国内では高齢化に伴い介護用おむつやペット用品が成長。ここでの実績は、世界でも生きてくることは確実。併せて、政府の新政策を活用して知的財産権戦略を強化する。これに基づく新製品が、赤ちゃんの骨格に合わせたカーブを描く紙おむつ「ムーニーエアフィット」だ。

株価は5月高値6,650円示現後、大幅な調整となっているが、5,000円前後は割安感も台頭するところ。突っ込みを狙ってみたい。

(小沼正則)

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