6月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の後の会見で、バーナンキ議長は「年内に月次の資産買い入れペースを緩めることが適切と考えている。その後の指標が現在のわれわれの経済見通しに引き続き沿った内容となれば、来年上期を通じて買い入れを慎重なペースで縮小していき、年央頃に停止するだろう」とした。

米国市場はこの声明を受け急落、中南米株、豪州株、日本株とその余波が伝わった。世界的な株式市場の動揺の発端は、5月22日の同議長の議会証言にさかのぼることができる。この日、議長は、資産購入プログラムを当面維持する方針を示しながらも、仮に経済情勢の改善が続けば資産購入を縮小する可能性があることに示唆(しさ)、初めて出口戦略に言及したことで、世界の株式市場は混乱に陥った。その後、5月の雇用統計の数字が、強くもなく弱くもない数字に落ち着いたこと(ゴルディ・ロックスへの期待)で、買い安心感が広がったが、再び今回の声明で水を差された格好となった。



■景気が良くて株価が売られる不思議
失業率が改善し、景気が良くなると株式が売られるという不思議な構図は、金融相場から業績相場への移行期に起きる中間反落と位置づけられよう。株価の基本式は、

株価=利益(配当)÷(期待収益率-成長率)

であることは、論を待たない。

■中間反落の要因
中間反落の要因は、期待収益率を構成する、無リスク利子率の上昇(債券利回り上昇)と株式リスクプレミアムの上昇という、確実に株式に対するマイナス要因の増大に対し、株価へのプラス要因である成長率の不確実性にあるものと推察する(もっともそれほど大げさなものでもないのかも知れないが……)。

物事を捉えるには、長期的に見るか短期的に見るか、または多面的に見るか一面的に見るかによって、答えが全く逆になることもある。量的緩和の解除は短期的に見れば悪材料ではあろうが、中央銀行が経済の回復に自信を深めているという意味では、長期的にはプラスの材料である。実はバーナンキ議長も短期的にはマーケットを動揺させる可能性があるからこそ、何度となく前提条件(雇用の明確な改善)を付け、あたかも避難訓練を繰り返すように、マーケットを諭してきたのである。今般、再び出口戦略に言及したといっても、訓練の成果もあり、サプライズ的な下落にはならないだろう。ましてや、これがきっかけで長期的な下落になることなど、あり得ない話である。

■アベノミクスへの失望ではない!
米国、ドイツ、フランス、香港、インドネシア、インド、世界的に株価の目先の天井が5月22日前後であることから、日本株の下げ要因もアベノミクスへの不信とか、成長戦略の物足りなさとかいうものではない。要は年初以降、圧倒的なパフォーマンスを誇った日本株の利食いが、ヘッジファンドを中心に短期的に起きただけである。

株価の変動要因は短期的には需給であるが、長期的にはファンダメンタルズである。輸出企業を中心とした、この半年の日本企業の業績の回復ぶりは、だれの目にも明らかである。ここはここ何回か特集したトヨタなどの、好業績株を中心に、じっくりと仕込む好機と判断したい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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