■はじめに
前回、前々回でiBookstoreで販売するためのiTunes Connectアカウントの取得と設定について手順を紹介しました。前々回公開後早々にEINを申請した方は、そろそろ郵送されて来る頃でしょう。

EINが取得できればiTunes Connectアカウントの準備もできるので、次は販売するための電子書籍コンテンツを用意することになります。既に述べてきた通り、現在iBookstoreに日本語コンテンツを入稿できるのはEPUB形式だけです。

今回はEPUB形式に関する基本的な概念と、EPUBファイル制作サービス「でんでんコンバーター」を紹介します。


■EPUB形式の概要
EPUB形式は非常に簡単に言うと、以下のファイルをZIP形式でパッケージして1ファイルにまとめたものです。

1)書籍本編を構成するファイル群
2)書籍情報を定義するためのファイル


■「書籍本編を構成するファイル群」について
書籍本編を構成するファイル群の主体となるものは本文(=コンテンツ本編)を記述したHTMLファイルです。HTMLファイルはご存知の通りWebページを作成するための形式です。

Webページでは本文の他に、バナー、メニュー等のナビゲーション、ヘッダー、ロゴ、フッターなど、様々な要素が含まれていますが、EPUBのHTMLは本文だけが含まれます。

書籍の本文は1つのHTMLファイルに全て記述することもできますが、分量が多くなるとHTMLファイルのデータ容量も大きくなるので、リーダーアプリの動作に問題を与える可能性も増えていきます。

問題の代表例としては、表示に時間がかかる、フォントや文字サイズの変更時にも時間がかかる、アプリが異常終了する、といったものが挙げられます。

このようなトラブルを防ぐためにHTMLファイルは分割して作成するのが一般的です。例えば章ごとに1つのHTMLファイルにする、といった具合です。

文章の他に挿絵やイラストを配置することもできます。その場合、画像データを用意します。EPUBで利用できる画像データ形式は、GIF/JPEG/PNG/SVGです。

コンテンツの見た目の調整にはCSS(カスケーディング・スタイル・シート)が使えます。
このように、HTMLファイルの他、画像ファイルやCSSファイルなども「書籍本編を構成するファイル群」に含まれます。

■「書籍情報を定義するためのファイル」について
書籍情報を定義するためのファイルは、EPUB規格で決められた独自の形式で「.opf」という拡張子を持ちます。opfファイルの中身は、EPUB規格で定められたXMLタグを使って書籍に関する様々な情報を定義したXMLデータです。

定義する情報は、書籍タイトル、著者名、言語、更新日、概要、権利表記などの書誌情報のようなものや、EPUBファイルに内に含まれる各ファイル(代表的なものは前述の「書籍本編を構成するファイル群」)の一覧、HTMLファイルの表示順、といったものです。

opfファイルは通常のテキストエディターで作成することができますが、EPUB規格を理解する必要があるので、0から自分で作成するのは難しいでしょう。

このように、EPUBを作成するための主要なファイルは、HTMLやXMLといったWeb系の技術を利用したり、EPUB独自のルールを採用していたりするので、少々ハードルが高くなっています。

本来ならHTMLやCSSなどの技術的な知識や、EPUB規格に関する一定の知識は身につけておいた方がベターではあることは間違いありません。ですが、今回は「EPUBを作成する」という結果を優先し、Webサービスの力を借りてハードルの高さを克服していきます。

で、今回利用するのが冒頭で紹介した「でんでんコンバーター」です。

■「でんでんコンバーター」について
でんでんコンバーターは、「ろす」のハンドルネームで活動されている高瀬拓史氏が開発され、現在はベータ版として公開されています()。


最も基本的な使い方は、電子書籍化したい文章を記述したテキストファイルを用意し、でんでんコンバーターにアップロードしてEPUBに返還する、というものです。

ファイル内のテキストに目印をつけることで、見出し(6段階)、段落、箇条書き、ハイパーリンク、画像の埋め込みなどの指定を行えます。

でんでんコンバーターはこの目印を解釈して、HTMLに置き換えてくれます。でんでんコンバーターで利用する、この目印の記法を「でんでんマークダウン」と呼びます。でんでんマークダウンについては、基本的なところを少し紹介します。

■でんでんコンバーターを使ってみる
まず試しに、本連載の第三回目のテキストファイルを一部利用して、でんでんコンバーターを利用してEPUBファイルに変換してみましょう。

次のテキストをテキストファイルとして保存します。
ファイル名は「text01.txt」、エンコードはUTF-8にしてください。

ここから-------------------------------------------------------------------------------
■はじめに
まず電子書籍に関わることで、新しいお知らせがあります。つい先日開催されたWWDC 2013では、2013年秋にリリース予定のMac OS X Mavericks(OS X Mountain Lionの後継版)に、Mac用のiBooks(電子書籍リーダーアプリ)が搭載されることが発表されました。

これにより現在iPadやiPhone、iPod TouchといったiOS端末でしか利用できないAppleの電子書籍サービスがPCであるMacでも利用できることになります。利用環境の広さではKindleには及びませんが、今後の展開に大いに期待したいところです。

さて前回はAppleの電子書籍ストア「iBookstore」での電子書籍配信について、その手順の紹介からスタートしました。前回と重複しますが、再確認の意味も込めてもう一度説明します。iBookstoreでの電子書籍の販売について大まかな流れは以下のプロセスとなります。

A.販売用アカウントの作成・設定
B.電子書籍コンテンツ(EPUBファイル)の作成
C.電子書籍コンテンツの配信手続き

前回は「A.販売用アカウントの作成・設定」でアカウント作成の部分を細かく紹介しました。今回はアカウント作成後の設定部分について説明します。

■契約に関する設定
iTunes Connectアカウントを取得すると、コンテンツ管理サイトiTunes Connectにサインインできるようになります。iTunes Connectでは、契約・税・銀行口座などの設定を行う必要があります。

各設定を行うにはiTunes Connectトップの[Contracts, Tax, and Banking]をクリックします。

まず契約に関する設定を行います。
①[Add New Legal Entity]ボタンで契約者の情報を追加します。契約者の情報は氏名と住所です。
②作成した契約者を[Legal Entity]に指定します。
③[Request]ボタンをクリックします。
同意確認の画面に切り替わるので、同意すれば契約に関する手続きは終了です。

これで問い合わせ情報([Contact Info])、口座情報([Bank Info])、税情報([Tax Info])を設定できるようになります。
ここまで-------------------------------------------------------------------------------

ブラウザででんでんコンバーターを開き、作成したtext01.txtを選択します。[タイトル]と[作成者]を入力して[変換]ボタンをクリックします。


すると、EPUBファイルが生成され自動的にダウンロードされます。これで、最低限のEPUBファイルが作成できました。

■EPUBファイルを表示する
EPUBファイルを表示するには、EPUB用のリーダーアプリが必要になります。iOS用であればAppleのiBooksが有名です。パソコンで確認するのであれば、Google Chromeの機能拡張として配布されている「Readium」がオススメです。

Readiumを入手するには、Google Chromeで「http://s.shr.lc/14Xgzzl」(短縮URL)にアクセスしてください。Readiumをインストールしたら新しいタブからReadiumのアイコンをクリックして起動します。


起動するとライブラリ画面が表示されますが、初期状態では空になっています。EPUBファイルを追加するには右上にあるEPUB追加ボタンをクリックします。


[ローカルファイルから]のセクションにある[ファイル選択]ボタンをクリックして、でんでんコンバーターで作成したEPUBファイルを開きます。


EPUBファイルがReadiumで開かれます。最初に目次ページが表示されますが、この目次ページはでんでんコンバーターの目次生成機能で作成されたものです。


でんでんコンバーターの目次は本来、でんでんマークダウンで本文に設定された見出しに基づいて生成されます。ですが、このテキストファイルには見出しの指定を入れていないので、「スタートページ」という項目が代替的に作成されています。

Readium自体の操作方法の詳細には触れませんが、ページ遷移、ライブラリ画面に切り替える、各種設定を行うなど、ある程度直感的に操作できると思います。色々操作を試してみて下さい。

次回はでんでんマークダウンを利用して、見出し、段落、ページ分割などいくつか設定を追加していく予定です。

でんでんマークダウンについてはシンタックスページに解説があるので、こちらを見て先行して試していただくことができます。

本記事で紹介した内容は後日変更される可能性もありますので、実際にご利用になる際にはでんでんコンバーターで提供されている公式の情報をご確認ください。でんでんコンバーターの更新情報などは「でんでん開発ブログ」で公開されています。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi


ITライフハック
ITライフハック Twitter
ITライフハック Facebook


EPUB 3 スタンダード・デザインガイド
EPUB 3 スタンダード・デザインガイド [単行本(ソフトカバー)]