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ブラジルでの大規模な反政府行動に続くように、エジプトでは事実上の軍事クーデターが発生、新興国の政局への注目が集まっている。
ブラジルやエジプトの問題については、稿を改めて述べたいが、まずは直近の話題である中国問題について述べてみたい。
■世界経済の「救世主」のはずが…
2008年のリーマン・ショックで、米国をはじめとする先進国経済はいずれも大きく後退した。直後、中国は4兆元(当時のレートで約53兆円)におよぶ景気対策を発表した。内容は、直前に起きた四川大地震からの復興対策を含むものだったが、先進国はいずれも財政的余裕が乏しかったため、世界から大歓迎を受けた。
だが、よいことばかりではない。財政投入による公共事業をあてにして盛んに製品を増産したものの、需要はそれほどでもなかった上に、欧州経済の危機(ソブリン危機)も起き、製品はたちまち過剰となってしまった。その兆候が出始めたのが、昨年夏ぐらいから。代表格は鉄鋼で、宝山鋼鉄(設立当初の模様は山崎豊子の小説「大地の子」に描かれている)は上海の製鉄所を閉鎖してまで生産調整に動かざるを得なくなった。
4兆元の対策で「世界の救世主」のごとくいわれた中国だが、過剰生産で世界的な製品価格の下落、すなわちデフレ要因になってしまったのである。自動車などの価格も下落し始めた。
だが、中国人民銀行(中央銀行)が景気対策として金融緩和を行ったため、不景気なのに不動産価格が上昇するという傾向が顕著になった。明らかにバブルである。
■地方政府の財源は「土地転がし」
もう一つの問題は、中国の地方政府の財政事情である。中国では税収はほとんど中央政府が吸い上げてしまう。地方政府の財源は何かというと、早い話が「土地転がし」である。
中国は現在でも建て前上は社会主義なので、土地はすべて国有である。地方政府は、この「使用権」を転売することで資金を得、それを元手にインフラ整備などを行っている。さらに、地方政府は投資家から資金を集める方法として、富裕層に一種の不動産投資信託を販売し、そこで得た資金で開発を行ってきた。こうしたシャドーバンク(影の銀行)の貸出は、2011年の1~9月で2兆元を超え、全資金調達額の2割以上に達する規模になっている。さながら「無から有をつくる」もので、まさにバブルの温床である。中央政府は、こうした不透明な資金調達システムを退治しようとしている。
■バブル退治の狙い
理由はいくつか考えられる。一つは、先の不動産バブルと併せ、中国政府にとっていずれは解決を迫られる問題であることだ。バブルを放置すれば、破裂して大惨事となることはリーマン・ショックを見れば明らか。米国などよりも政府の統制が効きやすい中国としては、今のうちにバブル退治をしてしまおうという意図だ。
第二に、権力闘争だ。中国の植林事業が共産主義青年団(中国共産党の青年組織、胡錦濤前国家主席はここの出身)派閥の利権になっているように、シャドーバンクの多くは上海派(江沢民元国家主席の派閥)の利権である。発足したばかりの習近平体制は上海派の影響が強いのだが、習近平主席自身としては、独自の権力基盤を強めるために上海派をけん制する必要に迫られたと思われる。
だが、世界第2位の経済大国となった中国の経済政策の変化は、世界に大きな影響を与えざるを得ない。次回もこの続きで述べてみたい。
(編集部)
※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。
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2008年のリーマン・ショックで、米国をはじめとする先進国経済はいずれも大きく後退した。直後、中国は4兆元(当時のレートで約53兆円)におよぶ景気対策を発表した。内容は、直前に起きた四川大地震からの復興対策を含むものだったが、先進国はいずれも財政的余裕が乏しかったため、世界から大歓迎を受けた。
だが、よいことばかりではない。財政投入による公共事業をあてにして盛んに製品を増産したものの、需要はそれほどでもなかった上に、欧州経済の危機(ソブリン危機)も起き、製品はたちまち過剰となってしまった。その兆候が出始めたのが、昨年夏ぐらいから。代表格は鉄鋼で、宝山鋼鉄(設立当初の模様は山崎豊子の小説「大地の子」に描かれている)は上海の製鉄所を閉鎖してまで生産調整に動かざるを得なくなった。
4兆元の対策で「世界の救世主」のごとくいわれた中国だが、過剰生産で世界的な製品価格の下落、すなわちデフレ要因になってしまったのである。自動車などの価格も下落し始めた。
だが、中国人民銀行(中央銀行)が景気対策として金融緩和を行ったため、不景気なのに不動産価格が上昇するという傾向が顕著になった。明らかにバブルである。
■地方政府の財源は「土地転がし」
もう一つの問題は、中国の地方政府の財政事情である。中国では税収はほとんど中央政府が吸い上げてしまう。地方政府の財源は何かというと、早い話が「土地転がし」である。
中国は現在でも建て前上は社会主義なので、土地はすべて国有である。地方政府は、この「使用権」を転売することで資金を得、それを元手にインフラ整備などを行っている。さらに、地方政府は投資家から資金を集める方法として、富裕層に一種の不動産投資信託を販売し、そこで得た資金で開発を行ってきた。こうしたシャドーバンク(影の銀行)の貸出は、2011年の1~9月で2兆元を超え、全資金調達額の2割以上に達する規模になっている。さながら「無から有をつくる」もので、まさにバブルの温床である。中央政府は、こうした不透明な資金調達システムを退治しようとしている。
■バブル退治の狙い
理由はいくつか考えられる。一つは、先の不動産バブルと併せ、中国政府にとっていずれは解決を迫られる問題であることだ。バブルを放置すれば、破裂して大惨事となることはリーマン・ショックを見れば明らか。米国などよりも政府の統制が効きやすい中国としては、今のうちにバブル退治をしてしまおうという意図だ。
第二に、権力闘争だ。中国の植林事業が共産主義青年団(中国共産党の青年組織、胡錦濤前国家主席はここの出身)派閥の利権になっているように、シャドーバンクの多くは上海派(江沢民元国家主席の派閥)の利権である。発足したばかりの習近平体制は上海派の影響が強いのだが、習近平主席自身としては、独自の権力基盤を強めるために上海派をけん制する必要に迫られたと思われる。
だが、世界第2位の経済大国となった中国の経済政策の変化は、世界に大きな影響を与えざるを得ない。次回もこの続きで述べてみたい。
(編集部)
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