5月末のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言以来、動揺が続いている世界の市場が、またも揺さぶられた。「震源」は中国で、直接の契機は6月24日、人民銀行(中央銀行)が「銀行は流動性の管理を一段と強化すべきだ」と異例の声明を出したこと。

これを機に、銀行株を中心に株価が急落、上海総合株価指数は6月27日、安値1950ポイントと昨年安値を割り込む大幅安となった。また深セン総合指数、香港のハンセン指数も急落、シンガポールや韓国市場も年初来安値を更新した。日本のいわゆる「中国関連銘柄」もコマツ<6301>、ファナック<6954>などを中心に大幅下落となった。株価急落に際して、人民銀は「金融市場の安定を守る」との声明を発表、火消しにかかっているが、不安定感は収まっていない。

■短期金利が急騰
それ以前、中国では、実体経済の成長鈍化が懸念されていた。フィッチ・レーティングスは、地方政府の隠れ債務の拡大や「影の銀行(シャドーバンキング)」のまん延で実体経済と金融がかい離していることを理由に、中国国債の格付けを引き下げた。これを機に、銀行間市場の翌日物金利が13%に達し、銀行の資金繰り悪化が懸念されると同時に、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)保証料率は一時、約一年ぶりの高水準となった。23日になると、大手の中国工商銀行が起こしたシステムトラブルに対し、「資金難が原因では」との観測が流れ、市場に疑心暗鬼が広がった。

こうした事態を受け、人民銀に預金準備率の引き下げなどの緩和策を求める向きもあったが、人民銀はこれに応じなかった。

■狙いは不動産バブル退治
中国政府の狙いは、これを機に課題であった不動産バブルに始末を付け、シャドーバンキングを整理することであろう。1~5月の融資総量が前年同期比で52%も増加するなど、バブルの「始末」は待ったなしだった。とくに6月末は中国の半期末で企業の資金需要が高まりやすいだけに、ドラスティックな対策を取れるタイミングと見たのだろう。

「人民日報」は「人民銀が(金利上昇を)傍観するのは一部銀行への懲罰」との解説を掲載、「新華社通信」も「中国金融で資金が不足したのでなく、資金が本来の位置にないのが問題」と論評したが、これが政府・共産党の意思である。李克強首相も、再三、通貨供給量は現状で十分との認識を示していた。

■中長期的には妥当な措置
金融システムの改革は、グローバル市場に全面的にコミットする上からも求められているし、国内の経済構造を内需型の安定成長へと改革する一環でもある。リーマン・ショック後の4兆元(約53兆円)の景気対策で膨らんだ過剰設備を解消する必要性もある。習近平新体制にとっては、新体制を強固にするための権力闘争も意識されていると思われる。

今回の手立てを取らなければ、不動産バブルが継続し、どこかで破裂する可能性もあった。今回の人民銀の措置は、中長期的には適切な方策と考えるべきだ。短期的な実体経済の悪化はあり得るだろうが、中国経済がこれで深刻な混乱に陥ると考えるのは早計だ。今回の人民銀の声明は中立的な金融政策を表明したもので、過度な引き締め策ではない。しかも、中国の外貨準備は世界最大で、対外債務の支払い能力に不安はない。

■関連銘柄はチャンスか!
金融システムに対する政府の指導力は(否定面もあるが)強く、機動的でもある。人民銀が資金供給を表明したことから、市場の大きな混乱は考えにくい。他の新興国で懸念されているような、国外への資本流出も心配する必要はない。

出口戦略言及で金融市場が世界的に動揺していた時期だけに、今般の措置も一方的な悪材料として伝えらたが、構造改革という正の側面も持っていることも忘れてはならない。危機が喧伝されたが、次第に冷静さを取り戻すだろう。関連銘柄は冷静に突っ込み安を狙い局面だろう。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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