TOKAIコミュニケーションズの「エネレポ」は、家庭で消費している電力を視覚化してわかりやすくするサービスだ。こうしたサービスの導入にいま一歩踏み切れないという人のために、前回は『電気が見えるって、どんな感じ?エネレポのマイページ体験ツアー』を紹介した。同ツアーを利用すれば、誰でも手軽に消費電力の見える化をバーチャル体験できたことと思う。

折しも連日の猛暑で、エアコンが欠かせない状況となっている現在。また3.11以降節電が叫ばれているなか、実際に使った電気が見られる「エネレポ」に節電の対応策として興味を持ち始めた人も増えてきたのではないだろうか。

これまで本連載では、同サービスの概要や設置方法、そしてバーチャル体験を紹介してきたが、どのような経緯でエネレポが開発されたのかが気になる人もいるだろう。そこで今回は、「エネレポ」の開発に携わった人々にお集まりいただいて、開発までの経緯や苦労話など、同サービスに対する熱い思いをダイレクトに聞いてみた。

■お客様に喜んでもらえるサービスを提供したい - 山田 氏
最初に消費電力見える化サービス「エネレポ」の開発に至った経緯を、同プロジェクトの責任者であるTOKAIコミュニケーションズ コミュニケーションサービス本部 開発推進部山田氏にうかがった。

『我々が所属する部門はインターネットプロバイダーがメイン事業となりますが、お客様に喜んでもらえる新しいサービスを常に考えています。その中で3.11の災害があり、計画停電などで電力が注目を集めました。企画会議にて「電力を見せるサービスを作れば、お客様に喜んでもらえるのではないか」という話題となり、一度チャレンジしてみようということになりました。』と、山田氏は開発のキッカケを語ってくれた。
開発の経緯を語るTOKAIコミュニケーションズ 山田 氏


「エネレポ」の試験サービスが開始されたのは2011年11月。当時、TOKAIコミュニケーションズが運営するインターネットサービスプロバイダ「TOKAIネットワーククラブ(TNC)」のユーザー向けにトライアルサービスとして立ち上げた。ユーザー数は100名弱のスタートだったという。

現在、電気の見える化サービスとしては、TOKAIコミュニケーションズの「エネレポ」以外に、NTT東日本の「フレッツ・ミルエネ」や、NTT西日本の「フレッツ・エコめがね」などの複数サービスが存在する。さらに消費電力を計測するだけであれば、家電製品のプラグを差すだけでその消費電力がわかる「ワットチェッカー」が家電量販店などで販売されている。

「エネレポ」と他社サービスとの違いは、いったいどこにあるのだろうか。

『「エネレポ」の独自性と言われると、TOKAIコミュニケーションズだからできるものはなくて苦労しているところです。正式サービスを2012年7月より提供開始し、一般的な電力見える化サービスは実現できました。今後、さらにお客様に喜んでもらえる見せ方について検討を進め、弊社だから提供できる分析であったり、他のサービスとの連携という特長や差別化を実現していくのがテーマですね。』と、山田氏は苦笑しながら話してくれた。

消費電力を見える化するサービスには、計測結果を1.宅内の表示端末に保存するもの(ローカル管理タイプ)と、2.インターネット上のサーバに保存するもの(サーバ管理タイプ)の2種類がある。TOKAIコミュニケーションズはインターネットサービスプロバイダを提供していることもあり、後者を選択したそうだ。

家庭の消費電力をサーバで管理するというのは、他社でも提供しているサービスであるだけに差別化が難しい。収集したデータをユーザーが分析できるようにランキングを付けたりするのも、他社のサービスとあまり違いはないという。

機能的な面であまり大差がないので、独自性を出すというのが目下の大きな課題というのだ。スマートフォンの流行に合わせて、お客様にむけて家庭の節電アクションを提案できるスマートフォン向けのアプリも今後提供を検討しているという。


■電力を下げるアプローチがしたい - 杉本 氏
電力の見える化が世の中に浸透していない中で、消費電力見える化サービス「エネレポ」を開始するには、いろいろと苦労があったという。その辺について、TOKAIコミュニケーションズ コミュニケーションサービス本部 開発推進部 杉本氏にうかがってみた。

「どんな広告を打てばよいのか、どんな機能を積めばサービスの売りとなるのか。電力見える化サービスはトライアルサービスから始まりましたが、どうしたらお客様からお金をいただける正式サービスになるのか、それらを考えるのが大変でした。」と、杉本氏は開発者ならではの苦悩を語る。
開発の苦労話を語るTOKAIコミュニケーションズ 杉本 氏


これらの考察の結果、現在の月間レポートや、CSV形式によるデータのダウンロード機能などが開発された。

開発者としての苦労もあった。杉本氏はもともと文系の出身で電気に関する知識に自信は全くなかったそうだ。そんな同氏が「エネレポ」のプロジェクトに抜擢され、電気についての基礎を一から勉強するところから始めたというから驚きだ。
現在の「エネレポ」の改良すべき点についてうかがってみると、

「現在のエネレポでは、お客様の消費電力が確認できることが主要機能になっています。今後は、収集した電力情報をうまく分析して、ご利用いただいているお客様へご自宅の電力消費量を下げるアイデアをフィードバッグできればいいなと考えています。またご利用中のお客様情報を統合して、県単位やエリア単位で節電した電力量を競う対抗戦のような楽しく節電ができる企画も実現したいですね。」と語ってくれた。


実は、「エネレポ」というサービスは、昨年7月に静岡県よりサービスを開始したばかり。関東エリアへの展開は、本年1月からとなり、都道府県ごとのユーザー数はまだまだ少ないという状況だ。

同氏によると、「エネレポ」は長く使ってこそ価値がある設計になっているという。同サービスを使って節電できることを、ユーザーがきちんと認識できるサービスを目指しているそうだ。


■季節ごとの適切な節電アドバイス - 鈴木 氏
「エネレポ」のWEBサイトまわりの開発を担当したのがTOKAIコミュニケーションズ コミュニケーションサービス本部 開発推進部 鈴木 氏だ。鈴木氏は、「エネレポ」は、是非主婦層にも使ってもらいたいとのこと。当初男性スタッフだけで開発をスタートさせた消費電力の見える化サービスであったが、実際に消費電力を確認する「エネレポ」のマイページには可愛らしさや親しみやすさの必要性も高まり、鈴木氏に白羽の矢が立った。

「どう見せたら、お客様がもっとわかりやすくなって、使いやすくなるのかなど、表示ひとつひとつにもお客様目線に常に意識しています。」と、鈴木氏は「エネレポ」のマイページについて話してくれた。現在のようにポップで親しみやすい画面になったのは、同氏が開発に加わったおかげといえる。
TOKAIコミュニケーションズ 鈴木 氏


鈴木氏も杉本氏と同様に、電気についての基礎知識を勉強するところから始めたそうだ。

そんな「エネレポ」のマイページはパソコンだけでなく、スマートフォンからも見ることができる。
スマートフォンから見た「エネレポ」のマイページ


スマートフォンで見られるようにするために苦労した点をうかがってみると、
「当初のマイページは、もともとパソコン表示を想定した画面構成でした。その為、そのままスマートフォンで見ると、どうしても画面表示が小さく、レイアウトも下に長くなり、操作も大変でした。スマートフォン表示では、見たいグラフだけを呼び出すボタンを付け足すなど操作性やパソコン表示にない直感性を高めることを意識して、画面レイアウトを工夫しました。」との答えが返ってきた。
スマートフォン版のマイページでは、確認したいグラフを呼び出すボタンを追加した。


現在の「エネレポ」のマイページには、女性ならではのきめ細かい配慮が見られる。具体的には、ユーザーに節電対策として役立ててもらうためのアドバイスをひと言メモのようなかたちで表示している。

「エネレポメモには、冷蔵庫の中には物を詰めすぎないのが良いですよとか、テレビは画面を少し暗めにすると省エネになりますよ等、身近な家電の節電のアドバイスを表示しています。エネレポが電力が見えるだけでなくて、お客様の節電をサポートすることできればいいなと思います。」とのこと。

エネレポメモにはいくつものパターンが用意されており、季節ごとに適切なアドバイスが得られるというのだ。

現在のところ、エネレポのマイページではユーザーにサービス異常を通知するメッセージである「電力が計測できていないので、状態を確認してください」や「設定ができてないので、設定をやり直してください」などを表示しているのだが、将来的には「エネレポ」を導入した家庭の消費電力に合わせたアドバイスの表示についても検討していきたいという。

「私はもともとコールセンターで仕事をしていまして、当時からお客様のご期待にはできるだけお応えしたいと考えておりました。現在は、コールセンターへお問い合わせいただくお客様のご要望や意見を集約して、できるものから随時サービスに反映させています。」とのこと。

実は、1か月の電力データをCSVでダウンロードできる機能は、お客様の要望を反映させたものだという。


ある調査によると、節電意識がある人は9割ほどいるが、実際に節電している人は半分くらいしかいないという。確かに現代社会では、電気を使わなければ、快適に暮らしていけないだろう。

しかし、電気をこまめに消すとか、消費電力の低い家電に変え買えたりするとか、コンセントからコードを抜くとか、節電の方法はいくらでもある。我慢して節電するのではなく、今までと同じ生活をしながらどうやって節電すればよいのか、節電を手助けするサービスとして、「エネレポ」を活用してみては如何だろうか。

電力見える化サービス「エネレポ」

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