「アベノミクス」の効果か、日銀短観などを見ても明らかな通り、景気の先行きは明るく、市場の期待も大きい。ただ、企業にとっては、政策要因に頼るだけでなく、自らの経営努力で体力強化や市場開拓に努めることが不可欠である。この角度から、真っ先に史上最高値を奪回してきた富士重工業<7270>について、今後の株価の展望も含め考えてみたい。

■ブランド力が改善
富士重工の第一の「強み」は、米国におけるブランド力の改善だ。2007年に欧州高級車をモデルに改善策を始動させ、人材もポルシェでの経験者を起用。従来は「マニア向け」とされてきたイメージを覆し、「中高所得・アウトドア派」をターゲットとする販促活動でクールなイメージを定着させた。

この結果、米情報誌「コンシューマーリポート」5月号では、小型SUV(多目的スポーツ車)部門の首位に富士重の「フォレスター」が選ばれた。理由は、以前から定評があった走りの良さに加え、居住空間の広さや大きな窓が高い評価を得たこと。富士重としては初のトップ獲得で、同月の販売台数は単月として過去最高の4万台に迫った。こうしたブランド力向上のための努力は、2005年に米GM傘下から離れ、トヨタ自動車<7203>と提携したことも大きく影響していると思われる。

■利益率が向上
ブランド力上昇は売上高営業利益率の向上にも結びついており、この指標では国内企業のトップレベル。10%前後の独BMWにも迫る。今期営業利益も、1800億円の予想から上方修正されそうな勢いだ。バランスシートも改善、有利子負債が1年間で338億円減り、手元資金は822億円も増えている。自己資本比率も、2016/3期をメドに4割突破をめざしてきたが、2014/3期に達成する見込みとなった。

むろん、この地位に安住はしない。生産効率のさらなる向上が、第二の「強み」と言えるだろう。「フォレスター」を生産する群馬県太田市の拠点に最新鋭ロボットを導入することで、1台あたりの生産時間を1割近く短縮、76秒にした。また、小型車「インプレッサ」などを生産する本工場(群馬県太田市)の能力を約2万台増強し、年間18万台に引き上げる計画だ。

■北米依存が逆に好業績の背景に
この勢いで、富士重は年間の生産台数でも過去最高の75万台超えとなる可能性が大きい。新発売のハイブリッド車「スバルXVハイブリッド」も、発売後2週間で目標販売台数の10倍以上の5500台以上を受注する大人気ぶりだ。

こうした努力は海外投資家の注目も集めている。中国政府系投資ファンドが、富士重の上位株主に顔を出したのはその好例といえるだろう。

富士重の課題は、営業利益の過半を北米市場に依存していること。輸出比率が7割以上と高く、為替変動の影響を受けやすいということである。その意味で、米国での成功をテコにアジア・新興国でブランド力を高めること、生産面でも海外展開を強化することなど、今後の展開にも期待がかかるところだ。

しかし、今最もホットな話題は米国景気回復と円安であり、この両面から強力なフォローの風を受ける同社株は、この相場の主役中の主役である。1985年のプラザ合意以降の主役の野村(現野村ホールディングス<8604>)、バブル相場の主役の新日鉄(現新日鉄住金<5401>)、ITバブルの主役のソフトバンク<9984>と、いずれの時代も主役を張った銘柄は歴史的な大相場となっている。今までの株価はいったいなんだったのかと思うような急騰劇だが、同社株の天井はさらに高そうだ。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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